編入対策の要は優先順位をつけることです

編入に向けて対策をする上で、何に最も注意しなければいけないでしょうか?

—―私は優先順位と答えています。

編入対策は短期勝負です。多くの受験生は、この時期から対策を始めて、早ければ9月に受験します(もっと早く実施されるところもあります。例えば群馬大学情報学部です。法学も勉強できる大学ですよ)。この点で、準備を始めてから本番までの期間がとても短いと言えるでしょう。

そうであるからこそ、「無駄」は省くべきなのです。たしかに、勉強する上で徒労はつきものだし、「無駄」だと思ったことが役に立つことは多々あります。むしろ人生を豊かにする「教養」とは、そのようなものかもしれません。

しかし、編入試験の「対策」を考えるのであれば、「何のための勉強なのか」自覚的になるべきです。英単語を覚えるのも、文法を勉強するのも、編入試験のためということです。法学や政治学の用語の定義を覚えるのも、答案構成を練習するのも、編入試験のためです。英語でコミュニケーションをとるためでも、『ハリーポッター』を原文で読むためでもありません。司法試験を受験するためでも、公務員になるためでもありません。編入試験のためです。

勉強の仕方も内容も、目的によって大きく異なります。なので、目的に合った勉強が必要なのです。しかも、短期勝負の編入試験です。目的を実現するために必要なことすべてを実行する時間的余裕はありません。そうであるなら、これまでに勉強してきたこと、これから勉強することの「優先順位」を考えて、優先度の高いことから実行していくことが必要でしょう。優先順位を考えずに、勉強すること自体が自己目的化すると、労多くして功少なしとなります。

何が必要で何を優先させなければいけないのか、自己目的化することのない編入対策をお考えの方は、お気軽にご相談ください。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

※過去の投稿を整理しました。あわせてご覧ください。

編入試験って何?③

前回は編入試験には専門性があるという話をしました。専門性があるものを受験するわけですから、まずは何を専門とするか、どの学部に編入したいかを定めた方がよいということも言いました。今回は、法学部ないしは法学・政治学を学べる学部への編入を考えた際に、どのような試験を受けるのかということについて書きたいと思います。

何が試験科目となるかは、大学によって異なります。英語の試験の有無、専門試験の傾向、志望理由書の提出の必要性と面接が課されるか否かなど、大学ごとに募集要項で示されます。まずは、英語試験についてですが、①英語試験が課されない、②英語試験に代わりに民間英語試験のスコア提出、③英語試験の受験というパターンに分かれます。法政治系編入の大学数では、ざっくりまとめると、①<②<③なので、英語試験を受けるつもりであれば受験できる大学も増えます。また、民間英語試験を受験してスコアを揃えておくと、さらに受験できる大学の幅は広がります。

専門試験については、傾向として、自説展開型知識吐出型に分かれること、そしてそれぞれの対策については以前に書きました。この二つに明確に分かれるわけではないので、両方の問題に対応できるようにすると受験大学の幅は広がるでしょう。対策なしに合格することは困難な試験です。対策をした大学を受験することで合格を目指します。また、試験傾向が変わることも多々あるので、どのような問題が出されても対応できるようにしておくのが基本でしょう

これらに加え面接が課される大学もあります。京都大学、大阪大学、北海道大学、神戸大学といった難関校は面接は課されませんが、他の多くの大学では面接があります。多くの場合、出願時に提出した志望理由書に基づいて面接が行われます。また、面接が課されなくても志望理由書の提出が必要な場合もあります。したがって、面接を意識した志望理由書の準備が必要となります。逆に、志望理由書の提出が求められることなく、面接試験が課される場合もあります。その場合であっても、志望理由をまとめたものを準備して、面接対策をしていきます。

このように編入試験では、英語試験と論文試験、志望理由書と面接などから合否が決まります。したがって、これらの準備をすることが編入試験対策となるのです。一般論ですが、様々なパターンに対応する準備をすればするほど、受験大学の幅も広がります。他方で、受験対策の負担は重くなるでしょう。編入試験では、初めは広く対策をしながら、志望校とともに、対策も徐々に絞っていくのが得策だと思います


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編入試験 英語対策③

前回は英語試験対策として、基本的な文法や単語の習得の重要性を書きました。今回は英語試験対策における専門性について書いてみたいと思います。

法政治系の編入試験で課される英語試験では、以前に書いたように長文和訳やその読解問題が多くの大学で出題されます。そして、その文章は新聞や雑誌、専門書からのものが多用されます。法政治系の編入試験なので、引用される文章は法学や政治学に関連した内容が多いと言えます。もちろん、社会科学全般に関するもの、全く分野違いの内容で純粋に英語力を測定するものなどもあります。

しかし、総じて難関校になればなるほど専門性もあがります。ただし、誤解してはいけないのが、専門性がある英文が必ずしも単語や文法が難解であるわけではないということです。つまり、基本的な文法や単語で専門的な内容が語られている場合が多いということです。この点でも、英語の基本が重要であることが分かります。

では、専門性のある英語長文はどのように対策すればよいでしょうか?まずは、繰り返しになりますが、英語の実力をあげていくことが必要です。これまでに使ってきた単語帳や文法書、問題集などを漏れなくマスターしている程度まで反復し、何周も行うことです。これは、予備校やオンライン指導を受けることなく、今からでも独習できることです。逆に言えば、この独習なしに英語力は向上しません。予備校やオンライン指導の受講で自然と向上するものではありません。日頃からの地道な復習が英語力の向上には必要です。この点で、「雑な勉強」しかできない人は受験向きではありません。

さらに、編入試験では専門性のある英語を訳し読解する必要があります。そのためには、専門用語(technical term)の知識や内容の背景的知識がある方が圧倒的に優利です。例えば”checks and balance”、”tyranny of the majority”、”the rule of law”などの専門用語には定訳があります。「抑制と均衡」、「多数の専制」、「法の支配」です。どれも法学や政治学では、一定の意味を持った術語として用いられています。したがって、術語として訳せるだけではなく、それがどのような文脈で用いられるものか、その語が含意している内容(背景的知識)を理解していることも必要です。権力分立の下、三権が相互に牽制しつつも権力的な均衡を保つことで、国家の暴走を抑止するという目的を指して「抑制と均衡」という言葉は使用されます。多数決原理の弊害を指す「多数の専制」は、民主主義と少数者保護との関係で使用されるし、「法の支配」と法治主義の相違点の理解は、違憲審査制の意義に大きく関係しています。

これらは、法学や政治学に関連する語彙を記憶するとともに、その概念や背景を理解することで身につけることができます。そのためには、法学や政治学に関連する単語を覚えること(編入向けの市販されている教材を探すのは難しいですが)、日本語で法学や政治学の重要概念を理解し、日常的に新聞などで社会の仕組みや実情を理解しておくとよいでしょう。日本語で理解できないものが、英語で理解できるようになるわけではありませんから。

このように、基本となる英語力の上に専門知識が加わることで、専門性のある英語長文に対応できるようになります。編入試験対策として予備校を利用するメリットのひとつが、これらのことをまとめて行えるということでしょう。


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編入試験 英語対策②

前回は英語試験対策として、スケジュール感の重要性を書きました。今回は英語試験対策の続きとして、「基本」の重要性について書いてみたいと思います。

編入試験に限らず、英語学習では「基本」が重要であることが強調されます。ここで言う「基本」とは、文法に従って英語を読解し、日本語に訳出できることです。そのため、文法や単語の知識が「基本」にとっては重要となります。英語の受験勉強と言えば、単語を記憶し、文法を理解し、問題演習を反復するのもそのためでしょう。しかし、ここで注意しなければいけないのは、英語でコミュニケーションをとることができるようになることでも、綺麗な日本語に翻訳できることでもないということです。

編入試験も同様です。つまり、英文を文法に従って日本語に訳出できることが重要です。いわゆる直訳、逐語訳ができるという状態です。編入試験の英語試験で測定されるのは、多くの場合、英語を読んで内容を理解する力です。この力を身につけることの意義、また、この力と英語によるコミュニケーションとの関連性は、ここでは置いておきましょう。良し悪しを抜きにして、英語試験対策は、英語で文章を読んで理解する力を伸ばすことです。

前回も触れましたが、法政治系の編入試験では、長文の全訳、部分訳、その読解を求める問題が主流です。題材としては、新聞や雑誌の記事、専門書の一節など、試験のために書かれたものではなく、その内容に関心のある読者に向けて書かれたものが多用されます。したがって、難解な単語や例外的な文法などの知識ではなく、大学までに勉強してきた知識で事足ります。

次の文章は名古屋大学の編入試験の一節です。

“A huge expanse of flat land that Napoleonic France, imperial Germany, and Nazi Germany all crossed to strike at Russia itself, Ukraine serves as a buffer state of enormous strategic importance to Russia. No Russian leader would tolerate a military alliance that was Moscow’s mortal enemy until recently moving into Ukraine.”

訳出できるでしょうか?今から7年以上前の問題ですが、現在のウクライナ情勢を暗示しているような文章です。話を戻すと、理解してもらいたいことは、難しい単語や難解な文法は使用されていないということです。たしかに、構文が取りづらいということはあるかもしれませんが、これまでの学習で身についているはずの単語や文法で訳出できるということです。

長文であっても、一文、一文の積み重ねによって構成されます。そして、その一文も「基本的な単語や文法」から作られています。したがって、編入試験を念頭に英語試験対策として行う必要があるは、中学校から大学受験までに勉強した単語や文法を完全にマスターすることです。つまり、これまでの英語学習を総復習するということです。

これまで学習してきた内容を、どの程度マスターできているかは人によって異なります。そうであれば、英語試験対策として、まずは自分がどの程度の力があるのか、手元にあるこれまでに使ってきた単語帳や文法書、問題集などを使って復習してみることをお勧めします。「基本」が無い状態で過去問を解いたところで得られるものは少ないでしょう。


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編入試験 英語対策①

今回は、編入試験における外国語試験の対策について書いてみます。外国語試験といってもほぼすべての方は英語で受験されるでしょうから、英語試験対策ということになります。

編入試験での英語試験対策を考える際に、まず意識しなければいけないのがタイムスケジュールです。どのような形式の試験が課されるにせよ、英語の力を上げていくのには時間がかかります。したがって、受験までどのぐらいの時間があって、その間にどのような状態にならなければいけないのかスケジュール感をもつことが大切です。

例えば、経済経営系の編入と比較するとまだ比較的少ないですが、法政治系でも、京都大学、神戸大学、金沢大学、上智大学、東洋大学のように、英語の試験の代わりにTOEICやTOEFLなどの英語民間試験のスコアを利用する大学が増えてきました。そのような大学を受験しようと思った場合、出願までに必要なスコアに達していなければいけません。大学によって異なりますが、出願に必要なスコアが設定されている場合もあります。高スコアに越したことはないですが、大切なのは出願までにスコアを準備しなければいけないということです。

英語民間試験を受験するためには、受験を申し込む必要があるし、受験してもすぐにスコアが手元に届くわけではありません。出願には正式なスコア書類が必要となりますが(詳細は各大学の募集要項で確認が必要です)、1か月程度の時間が必要となったりします。また、英語民間試験もコンスタントに開催されているわけでもありません。そうすると、志望校の受験日まではある程度の時間があるとしても、その出願準備はかなり早くから考えないといけなくなります

例えば9月の出願に間に合うようにスコアを揃えようと思ったとき、8月の試験を受験しても9月の出願に間に合わない可能性があります。そうだとすると、7月の受験が最後の受験となります。今は2月ですが、そうすると、あと数えるだけしか受験できないことになります。すでにスコアを持っている人はよいですが、これから取り掛かる人は、現時点でどの程度のスコアで、それをどのくらい上げていかないといけないのか、できるだけ早く把握する必要があります。労力をかけても必要なスコアに達することができなければ、それを編入試験に生かすことはできません(もちろん英語の勉強としては意味のあることですが)。

しかも、併願校がスコアを必要としない大学である場合、英語試験の対策に影響を及ぼしてしまうかもしれません。このような状態を避けるためにも、まずは今の自分の力を把握するために、直近の英語民間試験を受験することをお勧めします。もし、出願までに必要なスコアに到達できそうであれば、スコアアップの勉強を継続することは編入試験対策になります。しかし、それが難しそうなら、英語の試験が課される大学を受験するような方針にする方が良いでしょう。なぜなら、スコアアップのための勉強と英語試験対策は、英語を勉強するという点で共通していますが、全く同じではないからです。

幸い、法政治系ではスコアを利用しない大学は国公立大学、私立大学を問わず多くあります。また、スコアが振るわなくても、長文をしっかり訳出する訓練をすれば難関校を含め合格できます。実際、必ずしも難関校の合格者が高スコアをもっているわけではありません。

まずは、英語対策として、志望校は英語民間試験を利用するのか否か、いつまでに何を準備しなければいけないのか調べてみましょう。焦る必要はありません。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」です。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」