編入試験 論述対策(「自説展開型」編)

多くの大学の編入試験で論述試験が課されることはご存じだと思います。では、論述試験のために何を準備すればよいのでしょうか?論述問題を求められる「答え」で分類すると、(呼び方は色々ありますが)自説展開型と知識吐出型に大きく分けられます。

自説展開型とは、最終的に自分の考えを展開することが求められる問題です。他方、知識吐出型とは、自分の考えというよりも、問われていることに関する知識を正確に再現して説明していく問題です。もちろん、両者は明確に線引きされるものではないし、両者が求められる場合もあります。だからこそ、はっきりしているのは、自説を展開し、知識を吐き出せるように準備すれば、受験校の幅が広がるということです。今回は自説展開型の論述試験対策について書いてみます。

自説展開型の論述試験で求められる「自説(自分の考え)」とは、法学、政治学分野に関連する「時事的な出来事」に対する、あるいは、法学、政治学分野に関する「課題文」に対する自らの見解です。このような問題に答えるためには、例えば、「成年年齢の引下げ」、「コロナ対策に伴う営業制限」など「時事的な出来事」について、それがどのような事象であるか、それに対して法学や政治学の観点からどのようなことが言えるのか、その是非、可否、適否などの見解を展開できるようになることが必要です。

時事的な出来事については、新聞などから日常的に情報収集するとよいでしょう。その際、紙媒体の新聞を読むことをお勧めします。情報収集ならばネット上のニュースサイトの方が手軽で情報量も多いのでよいかもしれません。しかし、どうしても自分の興味が向くニュースだけをクリックしがちです。法学、政治学的な重要性は、自分の興味と等価ではありません。この点で、紙媒体の新聞ぐらいの情報量が適当でしょう。興味の有無に関係なく、ニュースに触れ、それを知り、法学や政治学と関連づけながら自分の考えをまとめると、自説を展開する力になるはずです。可能であれば、それを友人や知人などの他者に批評してもらいましょう。

自説を展開する(自分の考えをまとめる)ポイントは、法学や政治学と関連付けることです。法学や政治学と関連付けられなければ、「感想」と変わらなくなるからです。編入試験で「感想」は求められていません。この点で、法学や政治学に関して一定の知識が必要となります(必要とされる知識の範囲と程度については次回に書きます)。

法学や政治学の著作や論文、新聞記事などの「課題文」に対しては、どのようにしたら自説展開できるようになるでしょうか?まずは、「課題文」の内容を正確に理解できなければいけません。そのためには、その「課題文」を理解するだけの読解力と知識が必要となります。読解力のためには、新書など比較的手軽に入手できる本を読むことをお勧めします。課題文は、法学や政治学に関する内容が、「硬い表現」で書かれています。そのような文章を理解するには、そのような文章に慣れることが必要です。内容を完全に理解するというよりも、まずは慣れることが大切です。難しく感じるでしょうが、丸山真男『日本の思想』、川島武宜『日本人の法意識』、渡辺洋三『法とは何か』、碧海純一『法と社会』などは、法学や政治学に関連し、硬い表現で書かれており、課題文として出題されたりもする本です。編入試験の直前期に、これらの本を読む時間的、精神的余裕はないでしょうから、今から手にとってみるとよいでしょう。

要は、新聞や新書などの活字に触れ、それらを読み、理解に努め、考えることが自説展開型の論述試験には有用であるということです。急がば回れ。(過去問を解く有用性は否定しませんが)過去問だけを解いていても必要な力はつかないでしょう。


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