勉強の範囲

一口に「法学」と言っても、そこには憲法、民法、刑法といった具体的な法があり、さらに、憲法なら人権保障と統治機構、民法なら総則、物権、債権総論、債権各論、親族、相続、そして刑法なら総論と各論などの分野があります。範囲も広くて、それぞれの内容も難しそうな法学のどこを勉強すればよいでしょうか?

編入試験は司法試験ではありません。したがって、編入試験で求められる範囲と程度は、司法試験と比較して限定されます。3年次編入であれば、法学部2年生までに勉強する内容から主に出題されるので、勉強の範囲と程度を絞ることができます。

編入試験が短期勝負であることを考えれば、優先順位を意識して学習計画を立てることが必須です。「過ぎたるは及ばざるが如し」。むやみやたらに突き進むのではなく、まずは、敵を知ることから始めましょう。

ちなみに、具体的範囲としては、法学概論(基礎法学の一部)、人権保障、民法総則、犯罪の成立要件などです。すべてではありませんが、これらについて戦略的な学習計画を立てるとよいですよ。


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自分に合った対策こそ最良の対策

10月、11月が試験日のピークとなる編入試験では、効率的な対策が重要となります。編入を考える多くの方が、新年度になる時期に編入対策を開始することから、短期間の対策で合格レベルの学力を身につける必要があるからです。むしろ1年以上の準備をして本番に臨む人の方が少数派です。このことから、早めに編入対策に取り掛かれるだけでも様々な点で有利に働くでしょう。

そして、短期間で合格レベルの学力を身につけるためには、効率的に学習する必要があります。では、「効率的学習」とは、何についてどのように学習することなのでしょうか?「効率」は、費やす労力と身につく学力との比率と考えることができます。つまり、「効率的学習」とは、「がんばった分だけ、またそれ以上に、合格に近づく学習」ということです。

これを実現するためには、編入試験で頻出のテーマに絞って、繰り返し学習することが重要です。全範囲を網羅的に学習することと対照的な方法です。たしかに、すべての範囲を漏れなく学習し、その内容が身につけられるのであれば、それに越したことはありません。しかし、これは現実的ではありません。先に述べたように対策に割ける時間は限られていますし、そもそも私たちはスーパーマンではありません。もし、自分は他の人とは違ってスーパーマンだと言うのなら、そもそも編入試験を受験することにはならなかったでしょう。

まず、現状を踏まえて戦略を考えましょう。何も考えず「がむしゃら」に勉強しても、徒労に終わることでしょう。編入試験を突破した先輩方は、例外なく「戦略」を考えていました。スーパーマンではないからこそ、頻出のテーマや汎用性のある知識の学習に労力を集中して、それを繰り返し実行していくことで確実な知識、応用する力を身につけるのです。

法政治系編入試験では、どのようなテーマが出題されているか、そのために何を知らなければならないか、それはどのようにすれば身につくのか・・・勉強を始めるにあたって、考えておくことは多々あります。人によって今の学力が異なっているのだから、当然これら問いへの答えも異なってくるはずです。今の自分と編入試験を冷静に分析できるかどうか。ここから編入対策は始まっています。


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2年次編入と3年次編入、どっちがいい?

大学編入に2年次編入と3年次編入があることはご存じのことと思います。編入を考えたとき、2年次編入の方がいいのか、3年次編入の方がいいのか、迷ったことはないでしょうか?「いいのでしょうか?」というのは漠然とした問いかけですよね。でも、「いいのかどうか」は何に基準をおくのかで大きく変わってきます。

最近、入学相談をしていると2年次編入を志望する方は増加傾向にあるように思います。そこで、今回はあえて2年次編入の落とし穴について書きたいと思います。

みなさんの中には2年次編入にデメリットがあるのか不思議に思われる方もいるかもしれません。たしかに、編入後の時間的余裕ということであれば、2年次で編入した方が卒業までに3年間の時間的余裕があります。それにともなって、学業以外のことにも時間を割きやすくなるでしょう。しかも、大学入学後すぐに大学を変えることができます。現状をすぐにでも変えたい人には、これは大きなメリットです。

ただ、2年次編入を実施している大学は多くはないので、受験できる学校は限定的です。それにともない、志望者が集中し、倍率が上がる傾向があります。北海道大学法学部、信州大学経法学部、法政大学法学部の各2年次編入試験は多くの方が受験します。

また、3年次に比べて、試験の専門性が高くない分、対策しやすいようにも思われますが、対策の焦点を絞りにくく、目標を定めにくいということもあります。例えば、3年次編入対策として、憲法の知識が必要ならば憲法の入門書を読めばいいですが、2年次編入対策として、課題文を踏まえた自説展開力を高めようと思っても、何をしたらいいのかはっきりしないでしょう。

さらに、2年次編入の場合、在籍校でほとんど専門的な勉強をしないまま受験となるので、志望理由書は書きづらくなるかもしれません。法学部1年生であれば、「2年生になれば専門科目も多く履修できるから、今の大学でもいいんじゃない?」問われたら、また、他学部の1年生であれば、「法学を勉強したかったら、なんで最初から法学部を受験しなかったの?」と問われたら、どのように答えますか?大学に入学して、わずか半年後に編入試験を受けるわけですから、今の大学に入学した理由は問われることになるでしょう。

「不本意な結果だったので、編入したいです」は、よくよく考えれば編入先にも失礼な話です。なぜなら、編入先の大学に魅かれたからではなく、在籍校が嫌いだから選択したと言っているともとれるからです。「あいつ嫌いだから、あなたに乗り換える」と言われて嬉しいですか?

話が脱線してしまいました。ざっくり言ってしまえば、編入後の生活、編入先の大学に重きをおくなら2年次編入の方が、準備期間や編入対策を考えるのなら3年次編入の方がいいのかもしれません。ただ、以上の話は一般論です。みなさんに当てはまるとは限りません。さらに個別的な話はご相談ください。


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法学は暗記も必要。でもそれだけではありません。

今回は編入に向けての勉強法です。われわれ講師目線の対策については、過去記事を見ていただければと思います。ただ、受験生・学生目線で対策について知ることも、それが自らの体験に基づくものであることから有用でしょう。今後も合格者に体験談を語っていただく機会には、こちらでアナウンスたします。

さて、法学は勉強すればするほど、暗記では済まないことに気づきます。法学の勉強と言えば、ともすれば、条文はもとより、法概念について暗記するものと誤解されがちです。法学の対策と言って、これらを記憶することと勘違いしている方もいるかもしれません。確かに、法学の勉強で記憶する作業は必要です。ただし、これは英単語を覚えるとか、数学の公式を覚えるとかと同じで、問題に答えるためには必要なことです。

しかし、英単語を暗記しておけば、英文を訳し内容が理解できるわけではないこと、公式を覚えておけば、計算の答えが出せるわけではないこともまた真なりです。問題と知識(記憶したこと)を適切に関連づけられない限り、問題に答えを与えることはできません。論述試験は、クイズではないからです。記憶したことを想起(思い出すこと)すれば答えられるわけではないのです

問題文を解釈した上で、そこでは何が求められているか理解し、それに応えるためには何についてどのように考えて論じなければいけないのか整理できなくてはいけません。そこには、記憶と想起だけではなく、理解、解釈、想起、再現などの要素も必要になります。要は、記憶することは問題に答えるための必要条件ですが、十分条件ではないということです

では、記憶と想起以外の要素はどのように鍛えることができるでしょうか?記憶と想起は自分一人でできますが、理解、解釈は、他人からの評価が必要になります。なぜなら、理解、解釈の正しさ(妥当性)が重要だからです。つまり、知識の運用能力です。編入試験が論述形式なのも、また、編入対策として答案練習をするもの、知識の運用能力が評価対象となるからです。この能力が高ければ高いほど、未知の問題に対しても答えを出すことができるでしょう。

事実に条文をそのままあてはめれば答えが出てくるほど、世の中は「単純」ではありません。事実を解釈し、法学的理解の下で法を解釈し、法的帰結を導き出すのです。それは記憶と想起では済まない作業です。このように、法学の学習においても暗記だけでは済まない要素があるのです。


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編入を考えるのなら、今から勉強しましょう。

編入試験は短期勝負ということを繰り返し書いています。では、いつから勉強を始めるのがいいでしょうか?受験対策は、「現時点での自分の学力」と「志望校が求める学力」との差を埋める作業だと言えます。そうであるなら、現時点の学力次第で、合格までに必要な期間は変わってくるでしょう。他方で、志望校の難易度によっても、必要な期間は変わります。

要は、自分の学力と志望校が求める学力との「差」が大きければ大きいほど、それを埋めるためには多くの時間が必要となるのです。しかし、編入試験は人生の通過点に過ぎません。生涯をかけて行なうライフワークではないのですから、「差」の大きさに関わらず、あと7~8か月後には受験に臨みます。つまり、「差」を埋めるために費やせる時間には限りがあるということです。

編入試験を受験するということは、程度の差はあれ、現在の学校よりも上位の大学(難しい大学)に入学しようとすることでしょう。そこで「合格」という結果を残すためには、自分の学力を上げることと、妥当な志望校を設定することが必要です。今の自分を過大評価しすぎるのも、過小評価しすぎるのも、また、志望校で夢を見すぎるのも、見なさすぎるのも、「望む結果」ではないでしょう。

まずは、これから埋めなければいけない「差」がどの程度か見積もってみてはどうでしょうか?おそらく、今日からでも勉強を始めた方がよいことに気づくはずです。「思い立ったが吉日」、次は学習計画を考えましょう。

「志望校が求める学力」や「埋めなければいけない差」について、個別の情報を知りたい方は、是非ともご相談ください(無料)。その後の学習計画についてもアドバイスを差し上げられると思いますよ。お気軽にお問い合わせください。


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編入対策の要は優先順位をつけることです

編入に向けて対策をする上で、何に最も注意しなければいけないでしょうか?

—―私は優先順位と答えています。

編入対策は短期勝負です。多くの受験生は、この時期から対策を始めて、早ければ9月に受験します(もっと早く実施されるところもあります。例えば群馬大学情報学部です。法学も勉強できる大学ですよ)。この点で、準備を始めてから本番までの期間がとても短いと言えるでしょう。

そうであるからこそ、「無駄」は省くべきなのです。たしかに、勉強する上で徒労はつきものだし、「無駄」だと思ったことが役に立つことは多々あります。むしろ人生を豊かにする「教養」とは、そのようなものかもしれません。

しかし、編入試験の「対策」を考えるのであれば、「何のための勉強なのか」自覚的になるべきです。英単語を覚えるのも、文法を勉強するのも、編入試験のためということです。法学や政治学の用語の定義を覚えるのも、答案構成を練習するのも、編入試験のためです。英語でコミュニケーションをとるためでも、『ハリーポッター』を原文で読むためでもありません。司法試験を受験するためでも、公務員になるためでもありません。編入試験のためです。

勉強の仕方も内容も、目的によって大きく異なります。なので、目的に合った勉強が必要なのです。しかも、短期勝負の編入試験です。目的を実現するために必要なことすべてを実行する時間的余裕はありません。そうであるなら、これまでに勉強してきたこと、これから勉強することの「優先順位」を考えて、優先度の高いことから実行していくことが必要でしょう。優先順位を考えずに、勉強すること自体が自己目的化すると、労多くして功少なしとなります。

何が必要で何を優先させなければいけないのか、自己目的化することのない編入対策をお考えの方は、お気軽にご相談ください。


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※過去の投稿を整理しました。あわせてご覧ください。

編入試験って何?③

前回は編入試験には専門性があるという話をしました。専門性があるものを受験するわけですから、まずは何を専門とするか、どの学部に編入したいかを定めた方がよいということも言いました。今回は、法学部ないしは法学・政治学を学べる学部への編入を考えた際に、どのような試験を受けるのかということについて書きたいと思います。

何が試験科目となるかは、大学によって異なります。英語の試験の有無、専門試験の傾向、志望理由書の提出の必要性と面接が課されるか否かなど、大学ごとに募集要項で示されます。まずは、英語試験についてですが、①英語試験が課されない、②英語試験に代わりに民間英語試験のスコア提出、③英語試験の受験というパターンに分かれます。法政治系編入の大学数では、ざっくりまとめると、①<②<③なので、英語試験を受けるつもりであれば受験できる大学も増えます。また、民間英語試験を受験してスコアを揃えておくと、さらに受験できる大学の幅は広がります。

専門試験については、傾向として、自説展開型知識吐出型に分かれること、そしてそれぞれの対策については以前に書きました。この二つに明確に分かれるわけではないので、両方の問題に対応できるようにすると受験大学の幅は広がるでしょう。対策なしに合格することは困難な試験です。対策をした大学を受験することで合格を目指します。また、試験傾向が変わることも多々あるので、どのような問題が出されても対応できるようにしておくのが基本でしょう

これらに加え面接が課される大学もあります。京都大学、大阪大学、北海道大学、神戸大学といった難関校は面接は課されませんが、他の多くの大学では面接があります。多くの場合、出願時に提出した志望理由書に基づいて面接が行われます。また、面接が課されなくても志望理由書の提出が必要な場合もあります。したがって、面接を意識した志望理由書の準備が必要となります。逆に、志望理由書の提出が求められることなく、面接試験が課される場合もあります。その場合であっても、志望理由をまとめたものを準備して、面接対策をしていきます。

このように編入試験では、英語試験と論文試験、志望理由書と面接などから合否が決まります。したがって、これらの準備をすることが編入試験対策となるのです。一般論ですが、様々なパターンに対応する準備をすればするほど、受験大学の幅も広がります。他方で、受験対策の負担は重くなるでしょう。編入試験では、初めは広く対策をしながら、志望校とともに、対策も徐々に絞っていくのが得策だと思います


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編入試験 英語対策③

前回は英語試験対策として、基本的な文法や単語の習得の重要性を書きました。今回は英語試験対策における専門性について書いてみたいと思います。

法政治系の編入試験で課される英語試験では、以前に書いたように長文和訳やその読解問題が多くの大学で出題されます。そして、その文章は新聞や雑誌、専門書からのものが多用されます。法政治系の編入試験なので、引用される文章は法学や政治学に関連した内容が多いと言えます。もちろん、社会科学全般に関するもの、全く分野違いの内容で純粋に英語力を測定するものなどもあります。

しかし、総じて難関校になればなるほど専門性もあがります。ただし、誤解してはいけないのが、専門性がある英文が必ずしも単語や文法が難解であるわけではないということです。つまり、基本的な文法や単語で専門的な内容が語られている場合が多いということです。この点でも、英語の基本が重要であることが分かります。

では、専門性のある英語長文はどのように対策すればよいでしょうか?まずは、繰り返しになりますが、英語の実力をあげていくことが必要です。これまでに使ってきた単語帳や文法書、問題集などを漏れなくマスターしている程度まで反復し、何周も行うことです。これは、予備校やオンライン指導を受けることなく、今からでも独習できることです。逆に言えば、この独習なしに英語力は向上しません。予備校やオンライン指導の受講で自然と向上するものではありません。日頃からの地道な復習が英語力の向上には必要です。この点で、「雑な勉強」しかできない人は受験向きではありません。

さらに、編入試験では専門性のある英語を訳し読解する必要があります。そのためには、専門用語(technical term)の知識や内容の背景的知識がある方が圧倒的に優利です。例えば”checks and balance”、”tyranny of the majority”、”the rule of law”などの専門用語には定訳があります。「抑制と均衡」、「多数の専制」、「法の支配」です。どれも法学や政治学では、一定の意味を持った術語として用いられています。したがって、術語として訳せるだけではなく、それがどのような文脈で用いられるものか、その語が含意している内容(背景的知識)を理解していることも必要です。権力分立の下、三権が相互に牽制しつつも権力的な均衡を保つことで、国家の暴走を抑止するという目的を指して「抑制と均衡」という言葉は使用されます。多数決原理の弊害を指す「多数の専制」は、民主主義と少数者保護との関係で使用されるし、「法の支配」と法治主義の相違点の理解は、違憲審査制の意義に大きく関係しています。

これらは、法学や政治学に関連する語彙を記憶するとともに、その概念や背景を理解することで身につけることができます。そのためには、法学や政治学に関連する単語を覚えること(編入向けの市販されている教材を探すのは難しいですが)、日本語で法学や政治学の重要概念を理解し、日常的に新聞などで社会の仕組みや実情を理解しておくとよいでしょう。日本語で理解できないものが、英語で理解できるようになるわけではありませんから。

このように、基本となる英語力の上に専門知識が加わることで、専門性のある英語長文に対応できるようになります。編入試験対策として予備校を利用するメリットのひとつが、これらのことをまとめて行えるということでしょう。


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編入試験 英語対策②

前回は英語試験対策として、スケジュール感の重要性を書きました。今回は英語試験対策の続きとして、「基本」の重要性について書いてみたいと思います。

編入試験に限らず、英語学習では「基本」が重要であることが強調されます。ここで言う「基本」とは、文法に従って英語を読解し、日本語に訳出できることです。そのため、文法や単語の知識が「基本」にとっては重要となります。英語の受験勉強と言えば、単語を記憶し、文法を理解し、問題演習を反復するのもそのためでしょう。しかし、ここで注意しなければいけないのは、英語でコミュニケーションをとることができるようになることでも、綺麗な日本語に翻訳できることでもないということです。

編入試験も同様です。つまり、英文を文法に従って日本語に訳出できることが重要です。いわゆる直訳、逐語訳ができるという状態です。編入試験の英語試験で測定されるのは、多くの場合、英語を読んで内容を理解する力です。この力を身につけることの意義、また、この力と英語によるコミュニケーションとの関連性は、ここでは置いておきましょう。良し悪しを抜きにして、英語試験対策は、英語で文章を読んで理解する力を伸ばすことです。

前回も触れましたが、法政治系の編入試験では、長文の全訳、部分訳、その読解を求める問題が主流です。題材としては、新聞や雑誌の記事、専門書の一節など、試験のために書かれたものではなく、その内容に関心のある読者に向けて書かれたものが多用されます。したがって、難解な単語や例外的な文法などの知識ではなく、大学までに勉強してきた知識で事足ります。

次の文章は名古屋大学の編入試験の一節です。

“A huge expanse of flat land that Napoleonic France, imperial Germany, and Nazi Germany all crossed to strike at Russia itself, Ukraine serves as a buffer state of enormous strategic importance to Russia. No Russian leader would tolerate a military alliance that was Moscow’s mortal enemy until recently moving into Ukraine.”

訳出できるでしょうか?今から7年以上前の問題ですが、現在のウクライナ情勢を暗示しているような文章です。話を戻すと、理解してもらいたいことは、難しい単語や難解な文法は使用されていないということです。たしかに、構文が取りづらいということはあるかもしれませんが、これまでの学習で身についているはずの単語や文法で訳出できるということです。

長文であっても、一文、一文の積み重ねによって構成されます。そして、その一文も「基本的な単語や文法」から作られています。したがって、編入試験を念頭に英語試験対策として行う必要があるは、中学校から大学受験までに勉強した単語や文法を完全にマスターすることです。つまり、これまでの英語学習を総復習するということです。

これまで学習してきた内容を、どの程度マスターできているかは人によって異なります。そうであれば、英語試験対策として、まずは自分がどの程度の力があるのか、手元にあるこれまでに使ってきた単語帳や文法書、問題集などを使って復習してみることをお勧めします。「基本」が無い状態で過去問を解いたところで得られるものは少ないでしょう。


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編入試験 論述対策(まとめ)

論述試験対策として、問題を自説展開型知識吐出型とに分けて説明しました。では、どのような大学が、どのような形で編入試験を実施しているでしょうか?

自説展開型の出題が多いのが、難関校では大阪大学名古屋大学(一次試験)北海道大学(2年次)など、広島大学などの中堅国公立大学です。このような大学では、課題文を読んだ後に、その内容の理解を測る問題とともに、それ関する自説(あなたの考え方)を展開させる問題が出題されます。したがって、課題文を読解する力、テーマに関して自説を展開する力が問われます。この点で、直接、知識をまとめて論述するというものではありません。ただし、課題文には法学、政治学に関するもの、広く社会科学全般に関するものが用いられるので、法学や政治学に関する知識があった方が正しく深く課題文を読解することができます。

他方で、知識吐出型の出題が多いのが、難関校では北海道大学(3年次)神戸大学(法学概論)筑波大学など、法政大学同志社大学などの私立大学です。このような大学では、法学や政治学の特定の事項について、その意義や定義、背景や内容の説明やそこから導き出されることの論述が求められます。したがって、法学や政治学の知識、その知識に基づいて導き出されることを正確に再現し、論述する力が問われます。この点で、知識がなければ合格はおぼつかないことになります。

以前も書きましたが、もちろん、このような分類は絶対的なものではありません。自説を展開するには知識が必要ですし、知識を再現してまとめるにしても、問題文を理解し、解釈し、解答として構成する力が必要となります。したがって、志望校によって程度の差はありますが、自説展開型と知識吐出型の両方の対策が必要でしょう

これまで3回にわたって編入試験における論述試験対策について書いてきました。読まれた方の中には、「とてもじゃないが書いてあることの全部は勉強できない」と思う人もいるでしょう。たしかにその通りです。特に編入試験は短期決戦です。また、編入試験の合否は、論述試験だけではなく、志望理由書や面接などの書類、外国語(英語)などと合わせて決まることはご存じのことと思います。もちろん、大学によってこれらのうちのどれが課されるのか、どの程度のウエイトで評価されるのかは異なります。そうであるからこそ、必要な対策のうちの何を優先して勉強するのかが大切になります

論述試験対策に限らず、編入試験では優先順位が大切です。時間や能力などが限られた下で、いかに合格に必要な学力に到達するか、常に優先順位を考えながら勉強していく必要があります。すべてを完全に勉強することが難しいのであれば、何をどの程度まで勉強すればよいのかを考えながら、学習計画を立てましょう。それに加えて、どんなに対策を知っていても、より重要なのはそれを実行することです。方法論はあくまで方法に過ぎず、目的を達成するためには、それを実行する必要があります。泳げるようになりたければ、泳ぎ方を知っているだけでは不十分です。むしろ、実際に繰り返し泳いでみることが必要です。


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