編入試験 英語対策①

今回は、編入試験における外国語試験の対策について書いてみます。外国語試験といってもほぼすべての方は英語で受験されるでしょうから、英語試験対策ということになります。

編入試験での英語試験対策を考える際に、まず意識しなければいけないのがタイムスケジュールです。どのような形式の試験が課されるにせよ、英語の力を上げていくのには時間がかかります。したがって、受験までどのぐらいの時間があって、その間にどのような状態にならなければいけないのかスケジュール感をもつことが大切です。

例えば、経済経営系の編入と比較するとまだ比較的少ないですが、法政治系でも、京都大学、神戸大学、金沢大学、上智大学、東洋大学のように、英語の試験の代わりにTOEICやTOEFLなどの英語民間試験のスコアを利用する大学が増えてきました。そのような大学を受験しようと思った場合、出願までに必要なスコアに達していなければいけません。大学によって異なりますが、出願に必要なスコアが設定されている場合もあります。高スコアに越したことはないですが、大切なのは出願までにスコアを準備しなければいけないということです。

英語民間試験を受験するためには、受験を申し込む必要があるし、受験してもすぐにスコアが手元に届くわけではありません。出願には正式なスコア書類が必要となりますが(詳細は各大学の募集要項で確認が必要です)、1か月程度の時間が必要となったりします。また、英語民間試験もコンスタントに開催されているわけでもありません。そうすると、志望校の受験日まではある程度の時間があるとしても、その出願準備はかなり早くから考えないといけなくなります

例えば9月の出願に間に合うようにスコアを揃えようと思ったとき、8月の試験を受験しても9月の出願に間に合わない可能性があります。そうだとすると、7月の受験が最後の受験となります。今は2月ですが、そうすると、あと数えるだけしか受験できないことになります。すでにスコアを持っている人はよいですが、これから取り掛かる人は、現時点でどの程度のスコアで、それをどのくらい上げていかないといけないのか、できるだけ早く把握する必要があります。労力をかけても必要なスコアに達することができなければ、それを編入試験に生かすことはできません(もちろん英語の勉強としては意味のあることですが)。

しかも、併願校がスコアを必要としない大学である場合、英語試験の対策に影響を及ぼしてしまうかもしれません。このような状態を避けるためにも、まずは今の自分の力を把握するために、直近の英語民間試験を受験することをお勧めします。もし、出願までに必要なスコアに到達できそうであれば、スコアアップの勉強を継続することは編入試験対策になります。しかし、それが難しそうなら、英語の試験が課される大学を受験するような方針にする方が良いでしょう。なぜなら、スコアアップのための勉強と英語試験対策は、英語を勉強するという点で共通していますが、全く同じではないからです。

幸い、法政治系ではスコアを利用しない大学は国公立大学、私立大学を問わず多くあります。また、スコアが振るわなくても、長文をしっかり訳出する訓練をすれば難関校を含め合格できます。実際、必ずしも難関校の合格者が高スコアをもっているわけではありません。

まずは、英語対策として、志望校は英語民間試験を利用するのか否か、いつまでに何を準備しなければいけないのか調べてみましょう。焦る必要はありません。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」です。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

編入試験 論述対策(「知識吐出型」編)

今回は「知識吐出型」の論述試験対策について書いてみたいと思います。知識吐出型とは、自分の考えというよりも、問われていることに関する知識を正確に再現して説明していく問題です。したがって、法学や政治学に関する知識について、また、そこから導き出されることについて(学問的に)正確に説明する必要があります。

そのためには、当然のこととして、法学や政治学に関しての知識が必要となります。ただし、知識量や知識の正確さは、正しい答えを選択する多肢選択方式で計測されません。もちろん、神奈川大学の編入試験のような多肢選択方式の大学もありますし、金沢大学のように多肢選択方式の「法学検定」の合格が求められる大学もあります。しかし、ほとんどの大学では、論述方式で受験者の能力が計測されます。つまり、単に正確な知識があるだけでは不十分で、それを日本語の文章で伝達する力が必要となります。そこから、法学や政治学の正確な知識とそれを正確に伝達できる論述力が合格するカギになります

では、具体的にどのような知識が必要となるのでしょうか?編入試験の性格上、3年次編入であれば法学部2年生までに学習する知識が、2年次編入であれば法学部1年生で学習する知識が問われます。したがって、その範囲の知識をインプットすることが試験対策となります。

政治学では、政治権力や国家についての「政治思想や政治理論」、政党、圧力団体、マスメディアといった「政治主体や政治過程」、選挙制度、投票行動、政治意識といった「比較政治」などの知識をインプットできるとよいでしょう。他方、法学は基礎法学と法解釈学に大別されますが、法そのものを対象とする基礎法学全般、法解釈学では憲法、民法総則、刑法総論などが法学部2年次までに学習する内容になります。これらの全てを身に付けることは、短期間ではかなり困難なので、編入試験対策としては、これらのうち優先順位(出題頻度)の高いものを中心に勉強していくことになります。

さらに、これらの知識を理解して記憶するだけではなく、それらを再現し伝達できなければいけません。そのためには、これらの知識をつかって、一定のテーマで文章を書いてみる必要があります。この点が編入試験にとって特徴的な部分です。インプットだけでは論述対策は完結せず、実際に論述練習するというアウトプットが絶対的に必要になるのです。教科書を読んだり、講義を聴いたりしてインプットはできます。インプット自体も大変ですから、これで満足してしまいがちです。しかし、これだけでは試験対策にはなりません。インプットした知識を使って、一定のテーマで文章が論述できなければいけないのです。そのためには、とにかく論述練習することが大切です。この点は前回に説明した「自説展開型」にも当てはまります。

つまるところ、「知識吐出型」の論述試験対策としては、優先度の高い分野の知識のインプットとそれを使った論述練習が必要になるということです。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」