新たに大学編入のホントについて独り言を始めます。

予備校で大学編入の指導や情報収集を始めて、はや18年。当初は大学入試課に問い合わせると「編入って何ですか」なんて逆に聞かれることもあり、世間の編入に対する認知度は本当に低かったですね。今の大学生にはピンとこないでしょうが、まだ、インターネットもない頃です。当時は中ゼミに来る編入志望の学生のほとんどは、友達から、兄弟から、知人から、短大で、他の予備校で聞いた…と口コミでの入学でした。それ以後の18年間は、編入という制度を少しでも多くの人に知ってもらいたいという一心で続けてきたように思います。なぜなら、編入試験って本当に素晴らしい制度だと実感しているからです。それがどうしてかっていうことは、順にお話ししていきましょう。念願だった中ゼミ編集のガイドブックが初めて世に出たのは、私が編入・転部コ?スを担当してから数年後のことでした。
 今では、『まるわかり大学編入』(オクムラ書店)、『全国主要大学編入学試験案内』(一ツ橋書店)、それに唯一私の名前で出版した『誰も教えてくれなかった大学編入』(東京図書)と、ガイドブックだけでも3冊、それに英語や論文の勉強方法など、多くの本を出版しています。編入試験について書籍を通して皆さんに知っていただきたいという思いは実現したことになります。そして、うれしいことに中ゼミ生の編入・転部合格大学数は、ここ7年で3700を越え、私が担当してからの18年間では少なく見積もっても8000を上回るという結果が出ています。本当に多くの方が中ゼミで編入試験を通して自分の人生を変えてきた・・・これは私にとっても喜びです。
 思いおこすと本当にいろいろな出来事、さまざまな出会いがありました。そして、編入試験のわかりにくさに「うっそ?」とか、「信じられない」とか言いながら四苦八苦する中で得てきた情報量とノウハウは、おそらく日本中でも私を越える人は(多分…おそらく…まさか)いないだろうと、密かにほくそ笑んでいるわけです。
 そんな編入試験の不思議なあれこれについて、部長の独り言と題してブツブツととぎれとぎれに、中ゼミのホームページ上に掲載してきたのですが、ブログにしたことをきっかけに、もっと真面目に連載したいと今は思っています。新たな気持で取り組むにあたり、以前に書いたことと内容が重複することもあるかと思いますが、お許しあれ。時間とともに状況は変化しますし、今の新しい自分でブツブツ言わせてくださいね。
 それでは、無理をすると続かないので(次回アップが半年も先になってしまう…)続きは次回に。 

うれしくもつらい季節

 今日は出勤したら生徒からのメモが…。国立大学合格の報告です。Kさん、おめでとう!あなたなら合格できるって確信してたよ。でも、発表が終わったのに連絡がないから、内心ハラハラ、まさか…なんて、やきもきしてました。編入試験ってわからないから。
 「面接は中ゼミの模擬面接で行ったことと全く同じでした」
 そういってもらえると本当にうれしい。この前、合格報告に来たAさんは、「面接で練習したことはとても覚えきれなかったから本音で答えたけれど受かりました。へへへ」なんて感じで。
 それはよほど欠員が多かったか、テストの出来がよかったからだよ! 何といっても国立なんだから! なんて、心の中で思わず叫んだ私でした! 合格してくれたのはうれしかったけれどホントに冷や汗もの…。
 Kさん、感謝してくれてこちらこそありがとう。でも、受かったのはあなたの力、私はそれを少しだけ引き出すことができたかもしれない?けれど。 大学でがんばってよい教師になってね。あなたならきっとなれるよ。
 ここに来て、次々と試験結果の発表が続いていて、うれしい報告がたくさん来ています。
一番心配だった短大生のMさん。本当によく頑張って最後の最後でよい結果を出しました。合格の連絡を下さったお母様の「家族みんなで喜んでいます!」というはずむような声が、私にとって何よりもうれしいプレゼントでした。
 でも、中には結果の連絡がなくてとても心配な学生、小論文で力を発揮できずに結果の出なかった学生もいます。この時期は本当に胸がドキドキ。私もみんなと一緒に受験しているつもりだよ。中ゼミで待っていることを忘れないでね。

伝統の早稲田二文がなくなる…

 一文との統合が公表されて以来、どうなるのかと固唾を飲んでいた早稲田大学第二文学部の去就ですが、3年次編入試験の実施は今年度(平成18年度)までと、ホームページで発表されました。一般入試の募集が今年度まであるため、てっきり編入試験はあと2年、実施されると思っていましたから、ショックでした。
 中ゼミで編入指導を担当してから17年を数えますが、この間、二文を第一志望にする学生がいない年はありませんでした。確かに夜間部、されど早稲田…。早稲田大学で大学生や短大生が受験できたのは、長年、第二文学部だけでした。今でこそ、社会科学部や商学部も受験できますが、合格数の少なさと来たら…、未だに積極的に受け入れているとは言えません。でも、二文は毎年多くの合格者を出していました。今まで二文編入で笑った人、泣いた人、いろいろな顔が思い出されます。
 Bさんは大学2年生、それも決して恥ずかしいような大学ではなかったのに、どうしても早稲田に行きたいと、二文と社会科学部両方受験してともに合格し、二文に編入しました。中ゼミに来た当初は、早稲田に行きたいあまりにいつもピリピリ。なぜ、そんなにつらい思いをしてまで早稲田に行きたいのか、今の大学ではどうしていけないのか、正直言って私にはわかりませんでした。でも、合格したときに初めて見せた満面の笑顔に、もやもやも晴れる思いでした。早稲田にはそれだけ魅力があるのでしょう。
 一方で1次試験に受かりながら涙をのんだ人もいます。面接で「○○先生の本を読んでぜひ、早稲田で勉強したいと思って」と言ったら、面接官に「○○君は忙しいからね。キミの面倒なんかみていられないよ」と言われて不合格になったCさん。だから、特定の先生の名前はあげないようにって言ったのに…。先生方は一人ひとりがお山の大将、仲が悪いかもしれないんだから。といっても、後の祭り、翌年上智に受かったけれども、彼女にとってつらい体験でした。
 数々の受験生の思いを残して、編入試験伝統の早稲田二文がなくなる。ちょっと淋しいニュースでした。

外部の方のインタビューに答えて

 先日、G+(ジータス)というケーブルテレビ局のインタビューを受けました。プロ野球読売巨人軍のゲームを放送しているところです。ケーブルテレビは以前にも取材を受けましたが、その時は記者さんが一人で来てインタビューしながらカメラを回してましたから、全然緊張もせずペラペラしゃべりまくり。しかも、実際に放送されたことも某講師から聞くまで知らなかったという始末。
 でも今回はカメラクルー2名含む4名で見えたため、かなり緊張しました。テーマは団塊世代の進学について。これから団塊世代が一挙に定年退職を迎えます。その後の過ごし方として、大学・大学院進学を選択した場合の留意事項などについて、お話ししました。自分の人生を豊かにするための選択肢としての進学、大学名や就職のことを考えずに自分が本当に関心を持っていることを学びたい、これからの人生設計の核になる部分を作りたい…、ステキですね。自分がそういう年齢になったときに、そういう余裕があるかどうかため息です(オッと余計な独り言)。
 昔とは異なり、今、大学院に行く方は、多くがキャリアチェンジやキャリアアップが目的です。たとえばロースクール・臨床心理士指定大学院・MBAなど。団塊世代が大学院に行くときは、そのような傾向に一石投じることになるのではないかと、楽しみです。たとえば宗教について勉強したいとか、文化人類学に興味があるとか。また、ボランティアを念頭に社会福祉や国際関係を勉強する方、以前から好きだった文学や歴史をやりたいという方など、バラエティに富んだものとなるではないでしょうか。
 さて、テレビ撮影の数日後、今度はyomiuri weekly の取材を受けました。テーマは社会人女性と大学院進学。今、どうして大学院なのか、大学院を目指す女性には何か特徴があるのか…などについて、お話ししました。興味があったらご一読を。11/27日号です。
 記者の方と話しながら思ったのですが、同じキャリアチェンジでも男性と女性ではやはり違うなと。男性は社会的ステータスをあげることが大きな目的になっているような気がします。特にロースクールやMBAなどに興味を持つ方が多いですね。でも、女性の場合は、まず自分がどう生きるかを考えて、その延長線上に大学院進学があるのではないでしょうか。ですから臨床心理士指定大学院の志望者が多いのではないかと思っています。
 どう違うのかと言われると難しいのですが、女性の場合は、周囲の目もさることながら自分が納得できる自分になりたいのではないでしょうか。自分とはどういう人間なのかという自己探求が根本にあるようにも思います。男性の目は、社会における自分の評価を高めたいと外に向いており、女性の目は自分自身を深めて自分が評価できる自分になりたいと、内に向いているように思えるのです。
 ところでケーブルテレビの放送はとうとう自分では見ず終いでした。テレビに出るようなご面相ではありませんし自分では見たくもない、目の毒と言われないかと心配です。いわば自己封印してるわけで、嫌なことから目をそむけている感じ。人生を豊かにするためにもうちょっと自己探求すべきかな?
 他の予備校は、そういうときは、ホームページで宣伝している! とスタッフに叱られて、ここでひっそりと、ぶつぶつつぶやいてみました。

中央ゼミナールの出版物について

中央ゼミナ?ルでは、編入や大学院に関するさまざまな書籍を出版している。私はそのすべてについて、企画から完成までかかわってきたわけだが、本を出版するまでにはさまざまな苦労がある。また、これらの本には今までの受験指導ノウハウから受験を考える人にこんなことを伝えたいといったメッセ?ジも込められている。


心理学を学びたい人のための大学・大学院の歩き方
 たとえば、 「心理学を学びたい人のための大学・大学院の歩き方」、これは企画はしたものの引き受けてくれる出版社がなかなか見つからず、あやうくぽしゃるところだった。
「心理学に特化した本では需要が少なく売れない」という意見が当時大勢を占めたのである。「臨床心理士資格試験の受験者がこの程度の人数しかいないんだから売れない」というのが根拠であり、「臨床心理士資格の受験までたどりつくのが大変なだけで、受験を希望する人はたくさんいる」というこちらの主張は、数字に表れていないということでなかなか理解してもらえなかった。  
もともと 「心理学を学びたい人のための大学・大学院の歩き方」を企画したのは、臨床心理士になりたいと中ゼミを訪れる人の数が年々増えていること、しかもその中に、「自分が一生の仕事として取り組んでいくことについて大学院で専門的に学ぶ」というよりは、「資格がほしいから進学したい」という人達がかなりみられたことにある。その姿勢に疑問を感じ、大学院へ行くとはどういうことなのか、もう一度考えてほしいと思ったのがきっかけである。本来、予備校であれば、「こうすれば受かる」とか、「進学したらこういうメリットがある」とだけ書いた方がよいのだろう。しかし、私たちは受験者に対して誠実でありたいと思っている。したがって、中央ゼミナ?ルでの入学相談でも、臨床心理士の指定大学院受験の難しさや、臨床心理士になったからといって必ずしも定職に就けるわけではないことをお話ししている。相手が社会人であれば「社会人入試は易しい」という社会科学系大学院の常識は、こと臨床心理では通用しないこともはっきりと伝える(教育評論家と称している人の中にも勘違いしている人がいるようだ)。また、カウンセラ?には向き不向きがあることも、時には話に出る。あの本を作りながら、心理学論文担当の先生と「この本を読んで受験をやめる人がいるかもしれないね」「それでもいいんじゃない」などと言い合ったのを思い出す。  
さて、最後は、付き合いの長い東京図書で引き受けてくれたわけだが、結局、企画が通るまで半年かかったことになる。実際に予備校という現場にいる者と、出版社の距離をしみじみと感じさせられた。しかし、いざ出版してみると、学習参考書としては珍しく売れ行きがよかったとみえ、昨年末には資料を改訂して第2版を出版することができた。他の出版社が「うちから出しておけばよかった…」とぼやいているという話も聞いた。さらには、英語や専門科目の勉強法をとりあげた 「合格ナビ!心理系大学院・大学編入攻略」 という本まで出してしまうという景気の良さである。もちろん今度は反対意見も出なかった。
  以前、「エグゼクティヴ」という雑誌が主催した社会人向けの大学・大学院ガイダンスに参加したことがある。この時、予備校のブ?スは人がほとんど近寄らないような隅の方で、各大学のブ?スからも距離が置かれて非常にさびしいものだったが(これでもお金を出して参加するのである)、入り口近くのエグゼクティヴの相談コ?ナ?には、 「心理学を学びたい人のための大学・大学院の歩き方」がなんと山積みされていて驚いた。「人が作った本で商売している…」と思ったりもした(冗談である)。翌年からはこのガイダンスには参加していないので、その後のことはわからない。
だれも教えてくれなかった大学編入」  
これは、唯一、私が著者になっている本である。年度版の 「編入・転部ガイド」 も、文章部分はもちろん私が書いているが、著者は中央ゼミナ?ルとなっている。この本を私の名前で出したのは、私が今までに出会って印象に残った学生のエピソ?ドを中心に書いたからである。  
私は、十数年に及ぶ編入志望者や社会人学生との関わりの中で、さまざまな学生と出会ってきた。様々な境遇、年齢の方がいた。短大生がわずか半年間の間に精神的に大人になっていく姿を見守ってきたし、アルバイトをしながらがんばる大学生もいた。社会人学生にはこちらが頭を下げたくなるような立派な人もたくさんいて、いろいろと勉強させてもらった。いつか、この人達のことを文章にしたいとずっと思っていた。そして完成したのが 「誰も教えてくれなかった大学編入」 なのである。この本で、今のままでよいのか悩んでいる多くの人に、時には悩み苦しみながらも編入を目指して努力し、自分の人生を切り開いていったもと中ゼミ生の姿を伝えたかったのである。  
もうこの本を出してから数年が経った。売れ行きはそこそこで、なかなか改訂版を出せないのが残念だったが、やっと秋に内容を充実させた改訂版を出すことが決まった。中ゼミOBのがんばりを皆さんに紹介できることを、心から嬉しく思っている。
 
社会人・学生の看護・医療・福祉―キャリアを生かす資格・進学
  中ゼミには看護婦経験者が学生として入学することが多い。大きな理由は多くの看護婦さんが高い向学心を持っており、社会人入試を受験するために当部の社会人入試コ?スに入学してくれることである。社会人入試コ?スを設置した年に初めて入学してくれた学生の中にも看護婦さんがいて、彼女とはその後もずっと、付き合いが続いている。受験生当時、「夕べは複数の患者が亡くなって…」と言いながら夜勤明けで目を真っ赤にしながら授業に出ていた彼女の姿が今でも目に焼き付いている。彼女たちとの出会い、特にその真摯な姿勢は、周囲の学生にとっても、そして私にとっても、非常に刺激的であるし、私が看護や医療の世界へ進もうという受験生に関心を持つきっかけとなった。それが、中ゼミにおける看護医療系受験コ?ス(現:社会人・学生のための看護・医療・薬学コ?ス)の設置というかたちになったのである。
 同時に、ここ5,6年、社会人が看護・医療のスペシャリストを目指して中ゼミを訪れるようになった。ほとんどの方が人との関わりの中で仕事をしたい、社会に貢献したいと希望しているが、中には「リストラされたので、一生勤めることの出来る資格がほしい」という方もいる。看護・医療・福祉では、チ?ムプレイやコミュニケ?ション能力を要求されることから面接の印象も非常に大切である。「適性」の有無ということを全く考えずに看護を希望する方を見ていて、もっと目的を持った受験をしてほしいと考えさせられることもある。さらに、看護医療系の一般入試の難しさも勉強から離れた社会人や学士にとって大きな障害である。資格志向の強まりから現役生の間でも看護医療系の一般入試が難化している時代である。最近増えてきた社会人入試や学士入学について、もっと知識を持ってほしいと考えるようになった。以上が、この本を作った動機である。
 特に自信を持っているのは、社会人入試などのデ?タの充実、志望理由書の書き方や面接対策に触れていること、それに看護医療系の学校からアンケ?トを掲載しているところである。看護医療系に関するガイドブックは数多く出ているが、社会人や学生に特化した本はこれだけだと自負している。学校側が社会人や学士に求めていることは何か、年齢的にはどのくらいが上限なのか、知っておきたい情報が詰まっている(と思う)。
  その他の本と今後の企画  
 以上に加え、編入に関しては 「編入・転部ガイド」「全国主要大学編入学試験案内〈2006年度版〉」「大学編入・転部試験問題集」 を、大学院についてはおもに社会科学系大学院を取り上げた 「大学院完全攻略」 、 「社会科学系大学院英語問題と解答」 、 「人文科学系英語問題と解答―大学院入試問題集」 を出版している。
 さらに、中ゼミの講師の先生方による 「ライブ解説!社会科学系大学院への英語」「大学1・2年生のためのすぐわかる物理」も付け加えておきたい。後者は「前田の物理」で有名な前田先生が中ゼミでの編入志望者指導のノウハウを活かして書き下ろしたものである。ちなみに先生は、今、 NHKの大河ドラマで取り上げられている加賀前田藩の直系の子孫であり、現在のご当主のいとこにあたるお殿様。中ゼミの講師はバラエティに富んでいるのだ。
 さて、今後だが、実は現在も何冊か新しい本を企画しており、秋から春に向けて出版準備中! 乞うご期待! というところ。いずれも情報の多さと目的意識の明確化という中ゼミらしさが満載された、魅力のあるものになる予定(はず)である。

編入試験合格に必要なセンスとは・・・

 6月4日に当校で実施した大学編入フェアの際に、スタッフがある大学のブースで聞いてきた話です。(校内生は校内生向け編入情報にアップ)
 「編入について何か感想はありますか」と聞いたところ、「編入は一般入試とは異なり記述式で、ある程度センスが必要な試験だから、1年受けて失敗した場合は、2年、3年と受け続けても合格は難しい。」というお話があったそうです。
 ここでいうセンスとは何でしょうか。記述式ということは記号による選択問題や穴埋め問題ではない、ということです。つまり暗記力だけでは受からないということですね。具体的には、おそらくは構想がしっかりとした説得力のある文章を書く力(文章力、表現力、語い)だと思います。あわせて付け加えるなら、文章を充実したものとする背景知識、その学科への関心の深さなども大切でしょう。
 でも、それはまさしく、中ゼミでの訓練で得られるものであって、実際はセンスのあるなしだけでは片づけられない…と思わず苦笑したのですが、その時、ふと思ったのは、確かに独学でやるとすれば、センスに負うところが大きいと言えるのではないかということでした。


 以前、法政大学が文系全学部共通で2年次編入を実施していたときのことです。試験科目は英語や第二外国語から1科目、それに論文。こちらは一般教養からの出題で人文系・社会系から各1題を選択して60分で2題を論述するというものでした。
 ある年の中ゼミ生のA君は社会学部2年次への転部(試験内容は編入と同じ)をめざす法政大学夜間部の学生で、まれにみる努力家でした。英語が苦手なため語学は中国語を選択し、最後は中ゼミにある20年分の過去問題をすべて完璧に解けるようにしました。また、論文は中ゼミ講師が授業で取り上げた課題や予想した問題を模範解答に仕上げ、これも何十枚分も暗記して受験し、見事に合格したのです。
 その彼が浮かない顔をして話すのです。「一緒に受かった連中の中に、中ゼミにも来ないで試験勉強をしている様子もなかったのに合格した人がいるんですよ。論文は特に対策を立てなかった、文章を書くことはもともと好きだし、普段から本や新聞を読んでいて、知っていることを書いたら受かったって言うんです。ボクはあんなに勉強したのに…」
 おやおやと思いました。「そういう人も中にはいるよ。それに隠れて勉強していたのかもよ。」と表面では答えつつ、内心、「でもキミは明らかに努力したから受かったんだよ。最初は全然論文になってなかったじゃない」と私は呟いていたのでした。
 ときどき、インターネットで体験記などを見ていると、「勉強しなかったけれども受かった」とか、「編入は簡単に受かる」といった書き込みがあります。中ゼミ生の体験記にもまれにあって、これから受験する学生から猛反発!が出たこともあります(中ゼミ生の場合は、全然勉強しなかったわけではなく、この程度で受かるのか…という拍子抜けの思いがあるのだと思っていますが…)。
 でも、欠員が出ている大学であれば別ですが、上位校に受かるには当然学力が必要です。勉強せずに受かるなら、こんなに楽なことはありませんが、実際は多くの方が失敗しています。ある人が「勉強しないで簡単に受かった…」から、誰もがそうだとは限らないのです。入学相談で、「短大の先輩が勉強しないで受かったって言ってたのに、そんなに勉強しなければいけないんですか」なんて不服そうに言われるたびに「おやおや、勘違いしてるな…。その先輩も悪気はないんだろうけど…。自分ができたから人にできるとは限らないのに」と心の中で呟くのです。
 この時の学力が何か…と考えたとき、センスという言葉に置き換えることができるかもしれないと思うのです。同じだけの知識を持って論文を書いても、その人の持つ文章力で説得力のあるものにもなれば、逆の場合もあります。それ以前に、受験勉強でいやいや専門知識を暗記している人と、もともとその学問が好きで日頃から本を読んで親しんでいる人、この違いであるかもしれません。後者の場合は、受験勉強をしているという意識はないのに、それがそのまま受験に役立っているわけです。それが「勉強しないのに受かった」という言葉につながるのです。
 本や新聞を読むことが好きであること、文章を書くことを苦にしないこと、これらは編入試験では欠かせない要素であり、センスと言えますね。特に独学で勉強するときには、大きな力になります。そういう方が希望するなら、ぜひ、編入試験にチャレンジすることをお勧めします(たとえ、中ゼミを利用しなくても…。でも、ちょっと宣伝が入ると、そういう人達が陥りやすいのがひとりよがり。中ゼミで添削指導を受けるって、そういう意味でも大切ですね)。
 実は、まもなく『まるわかり大学編入』の改訂版が出るのですが(ますます充実した内容になっています。楽しみにしていて下さいね)、今回はすでに編入して大学を卒業した方や大学4年で進路を決定した方からのアンケートを掲載しています。その結果で驚いたのは、大学院へ進学する率が普通の学生に比べて高いことです。元中ゼミ生だからかな…、とも思いましたが(中ゼミで勉強が好きになる方が多いため)、編入後の感想を見ると、中ゼミ生に限らず編入生は勉強に目的意識を持っている人が多いとのこと、必ずしも、中ゼミ出身者からとったアンケート結果であるためではないようです。
 学問が好きになれる人、それも編入試験合格に欠かせない、一つのセンスであると言えるのかもしれません。

編入試験の試験要項って本当にわかりにくい?大学中退者と大学在学者?

 質問掲示板などで予告したとおり編入後の大学生活についてぶつぶつと書いていたのですが、気になることがあったので、今回の独り言は臨時増刊という感じです。編入後の大学生活についても間もなくアップできますので、少々お待ち下さい。
 ということで独り言を始めましょう。
 このところ、質問掲示板に、「大学を中退したけれども編入試験を受験できますか」などの質問が見受けられます。これが試験要項を見ても、意外にはっきりしません。
 たとえば、掲示板の回答にも取り上げましたが、埼玉大学経済学部の平成17年度要項には、「他の大学に在学する者で、修業年限4年以上の大学で62単位以上を修得し、かつ2年次を修了した者及び平成17年3月までに同要件を満たす見込みの者」とあります。
 これを読むとまるで中退者は受験資格がないみたいです。でもちょっと待って下さい。長年編入指導をしていますが、2年次まで修了して一定の単位を取得している中退者が、編入試験を受けられなかったという話は、今まで聞いたことがありません。
 そこで大学に問い合わせたところ、受験できるとのことでした。安心してください。さらに昨年度の要項の表現がやや不適切だったので平成18年度は訂正する予定とのことなんです。おそらく、問い合わせが複数来たのでしょうね。
 このように、編入試験の要項は曖昧なことが多いのです。中ゼミでは毎年『まるわかり大学編入』を編集するために全国の国公私立大学すべての編入試験要項に目を通しますが、ベテランの編集者でも読み間違えてしまうことがあります(買って下さった方ごめんなさい!)。


 たとえば、鹿児島大学法文学部、ここについては『まるわかり』のデータ欄に記載ミスがあります。編入年次が3年次であるにもかかわらず、受験資格欄では大学1年修了(見込み)に○がついているんです。たまたまこれを見たときは、「3年次編入が1年修了で受験できるわけないじゃん」とドキッとし、「なんでだろう」と思って試験要項を見てみたのですが、すると次のようにありました。
「他の大学の学生で、1年以上在学し、50単位以上修得した者または平成17年3月までに修得見込みの者」
 この一文を見て担当者は1年修了見込みで受験できると考えたのでしょう。でも、要項をよく見ると、下の方に※以下が記載されています。いわく
「他大学での在学期間が2年に満たない者、修得した単位が50単位に満たない者、短期大学もしくは高等専門学校を卒業していない者(中略)については、入学を許可しない。」
 ここまで読んで、やはり2年修了見込みでないと受験できないことがはっきりします。大学に問い合わせたところ、「今、大学2年ということは大学1年以上在学なのだから間違いではありません」との回答でしたが、この場合、「大学2年以上在学見込みの者」と書く大学が一般的ですから、ちょっと…やっぱり…う?ん、間違いやすいですね。(すみません。間違えたことの言い訳でした) 
 このように編入試験の要項には判断に困るものが案外多いんです。ちょっとでも疑問に思ったら、大学に問い合わせてみるべきです。
 ここで中退した方の件について説明しておきます。(大学在学者についてもこの後で記述がありますから、続けて読んでくださいね。)
 先ほども書きましたが、長年、編入指導をしてきて、大学中退者(2年次修了で62単位以上取得している場合)が受験できなかった、つまり在学中でなければ受験できないというケースは、まだ、聞いたことがないんです。そういう大学がもしあるなら、私も知りたいところです。以前、専修大学文学部が短大生のみを対象に2年次編入を実施していたときに(今は他の受験資格者も受験可)、受験資格に既卒者不可(つまり短大2年生のみ可)とあって、「何でこんな規定があるんだろう」と不思議に思っていたことがありました。もちろん、今ではそのような規定はなくなりましたが…。そのくらいでしょうか。
 それでは中退者は何も問題ないのかというと、こういうケースがあります。
 まず、取得単位数です。これは何単位取得という規定をクリアしていればよいので問題ないでしょう。気をつけたいのは中退の年次です。大学によっては3年間いても特定の単位を取得してないと2年次修了の扱いにならないことがあります。特に理系に多いですね。たとえばある大学に4年間いて65単位以上履修したが、1年次の必修単位を取得できないために2年次に進級できず、結局1年修了時に中退という扱いになっている、というケースがあり得ます。この場合は、編入先の大学によっては2年次修了という資格を満たしていないと判断されて受験できないことがあります。もちろん受験できる大学もありますので、事前に各大学に問い合わせる必要がありますね。
 このように、大学中退者については試験要項だけでは受験できるかどうかわかりにくいことがありますが、まず、大学に問い合わせてみることです。多くの場合は問題なく受験できるでしょう。
 4年制大学に関して言えば、中退者よりも在学者の方が受験が難しいケースが多いです。たとえば、例外ではありますが、「すでに中退していること」(北海道大学農学部・埼玉大学教育学部・鹿児島大学理学部)という大学もあります。また、多いのは在籍大学の受験許可を必要とするところです。たとえば、国立大学では下記のようなところが挙げられます。
 北海道大学教育学部・理学部、東北大学経済学部、茨城大学人文学部・教育学部・農学部、横浜国立大学工学部、新潟大学法学部・工学部、名古屋工業大学工学部、神戸大学文学部、奈良女子大学文学部・理学部・生活環境学部、岡山大学文学部、山口大学経済学部・農学部、徳島大学工学部、愛媛大学法文学部・農学部・工学部・理学部
 
 これはどうしてでしょうか。
 大学2年生が編入する場合は、今いる大学を退学することになります。退学者が出ればその大学は授業料収入が減ることになりますから、大学としてはあまりうれしくはありません。中には他大学への編入を学則で禁止するところもあります。受け入れる側の大学としてはトラブルを避けたいところですね。そこで、受験資格として中退していることと規定したり、在籍大学の受験許可が必要とすることがあるものと思われます。中退者の方が編入試験を受験しやすい理由もそこにあります。
 それに、同系統からの編入だと面接で「なぜ、今も○○学科へいるのにわざわざ同じ学科に編入するのか」と聞かれて、きちんと説明できないと落とされることがありますが、退学していればそのために落ちることは少なくともなくなります。
 それにしても大学の試験要項には泣かされます。私もいい加減試験要項は読み慣れているつもりですが、それでも今だに何回読んでも判断できずに大学に直接問い合わせる…なんていうことが珍しくありません。編入試験対策のプロである私が言うのですから、皆さんが読んでわからなくても全然不思議ではありません。繰り返しになりますが、一人で悩まずに大学に直接問い合わせて確認することです。
 さて、それ以外に大学在学者が気をつけなければいけない規定について挙げておきましょう。
 一般的には「2年次修了(見込み)で○○単位以上取得(見込み)」という規定が多いのですが、時には次のような大学があります。
 「2年次修了見込みで出願時に○○単位取得済みであること」です。これは落とし穴ですね。ほとんどの場合は見込みでよいためにうっかりしがちです。
 たとえば京都大学経済学部がそうです。要項にはこうあります。
 「日本に於ける修業年限4年以上の大学において第2年次以上に在学し、出願時に48単位以上を修得済の者」
 この場合は出願時、つまり大学2年の11月にはすでに48単位取得してなければなりません。大学1年次に48単位取得できる人は限られますから、受験できないケースも当然出てきます。こうなると有利なのはセメスター制の大学にいる人ですね。2年の前期で資格を満たすことが可能です。何だか少々不公平な気もしますが…。
 さて、この要項もうっかりすると中退者は受けられないと言っているようですね。
 実は大学側が何と回答するのか電話して聞いてみたのですが、向こうも即答はできませんでした。電話の向こうで複数の人ががやがやと元気な関西弁で「受けられるんじゃない?」とか話しているのは聞こえてくるのですが、結局回答は「大丈夫だと思うけれども確認するから明日まで待ってほしい」でした。大学側の編入試験に関する認知度はこんなものなんです。これは別にこの大学だから…ということでは決してありません。どこの大学でもあり得ることです。
 そして翌日の回答は…もちろん「受験できます。ただし48単位必要です」でした。
 編入試験要項の不思議、少しおわかりいただけたでしょうか。中ゼミではわかりにくい要項の大学にはしつこく電話をしています。そうすれば、翌年から改善してくれるところもあるかもしれません。もっともムキになって今まで通りの表現にこだわる大学もないとは言えないかも…とこれは失言でした。
 興味のない方には、やたら長い文章で、おそらく読んでもらえなかったでしょう。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。

志望理由書についてその2?校内生からの質問を受けて?

 さて、今回扱うのは、志望理由書をマニュアル化することについてです。
 校内生から指摘があったのは、中ゼミの指導に従うと、皆、同じ内容になるのではないか…という、ある意味素朴な疑問でした。なるほど、不安になる人もいるかもしれません。でも、はたして本当にそうでしょうか。
 私は、毎日、5,6件の志望理由書を見ていますが、同じものは一つもありません。なぜなら、編入を考えた動機・きっかけ、入学後に研究したい内容(この二つを私は最も重視していますが)、これは本当に十人十色で、人により様々なんです。
 小論文も同じですが、志望理由書では、人は自分の中にあるもの?知識や体験、感情、問題意識?しか、書くことができません。インプットされたものしかアウトプットはできないのです。それはその人の今まで生きてきた過程の中で培われてきたもので、他の人と同じということは絶対にあり得ません。
 たとえば受験学科や研究したい対象が同じであっても、それについてたくさんの本を読んでいる人と、ほとんど読んでいない人、多くの時間を費やして深く考えてきた人と、そこまではしていない人では、志望理由書でアウトプットできるものは明らかに違ってきます。個人差は最初から存在するんですね。
 
 そして、受験者は、今、自分が持っているもので勝負するしかありません。人に書いてもらう…これは小論文などと比較されて自分で書いたものではないことがばればれです。ムリに難しいことを書く…背伸びしても面接で質問され突っ込まれて立ち往生するだけです。本などを写す…その部分だけ文体が異なっていて、これも見る人が見れば、ネタばれです。


 それでは中ゼミの添削指導では何をしているのでしょうか。
 まず、最低限必要条件(後で説明)を満たしたものに仕上げること、書いている当人では気付きにくい、漠然としたわかりにくい表現を、少なくとも学びたいことが相手に伝わるような言葉にすること、自分では気付いていなかったよい面をなるべく引き出すこと、そして最後に同じ言葉を繰り返し使っている、あるいは適さない表現があるなどを、訂正するなど文章の校正作業、これが校内生の志望理由書指導をする際に、私が心掛けていることです。さらに付け加えれば、志望大学から考えて許容範囲のものに仕上げることです。
 
 志望理由書はその人個人のものですから、完成した内容をこちらで保存することもしていません。ですから、生徒が書いたものを他の人に見せることも(専門の先生に相談する以外は)ありません。書かれた志望理由書の一つ一つが、すべてオリジナルなのです。
 唯一、似たような表現になりがちなのが、前回触れた、大学を志望する理由の部分でしょうか。
 それでは中ゼミで行っているマニュアル化って何か。実は私は今までこれをマニュアルって考えていなかったんですが、それは、志望理由書に書くべきこと、言い換えると書く必要のあることを皆さんに示すことです。具体的には4つあります。先ほどから触れていますが、
    編入を考えた動機・きっかけ
    入学後に研究(学習)したい内容
    その大学を志望する理由
    卒業後の抱負
です。4番目の「卒業後の抱負」については、もう、10数年以上も前のことですが、あまりにもしばしば面接で聞かれるため、卒業後にどうするか、ここまで念頭に置いて志望理由とは書かなければいけないんだなと痛感して、付け加えました。
 また、それらを書くにあたっては、上に並べた順番で書くことがわかりやすい 、ということも伝えています。これもマニュアルというよりは、小論文の序論、本論、結論という形式があるのと同じに考えています。相手に説明しやすい、論理的な並べ方として提示しているわけです。
 その他にも、書く際にしてはいけないこと、注意すること…をガイダンスで説明していますが、いずれも、当然、気をつけるべき必要条件にすぎません。しかも、決して「こう書かなければならない」という強制ではありません。自信があるのなら、自分で好きに書いてもよいし、中には特に指導しなくても、その気持ちが伝わるすばらしい志望理由書を書いてくる人がいる、ということも伝えています。
 これをマニュアルと呼ぶのか、うーん、ちょっと違う気がしますね。でも、受け止め方は様々でしょうし、それでよいのだと思います。少なくとも、中ゼミの指導に従った結果他の人と同じ内容になることを心配する必要がないことは、納得していただけたのでは? いかがでしょうか。

志望理由書についてその1?校内生からの質問を受けて?

 いよいよ、志望理由書作成の時期になりましたね。言い換えれば試験が近づいてきたということ、緊張も高まってドキドキしていませんか。中ゼミにも連日多くの学生が、指導を受けに来ています。面談室を覗くとスタッフも学生も本当に真剣そのものです。
 でも、中には
   「明日、締めきりなんです!今すぐ見てください!」
   「どうしても2000字が埋まらないんです。何を書いたらいいんでしょうか?」
   「この大学を志望する理由がみつかりません。どうしましょう?」
 おやおや、いつかどこかでみたような…とういうか、実は毎年見る光景ですね。追い込まれる前になるべく早く来てほしいのですが…。でも、たいがいは、できる限り協力して、許された時間の範囲ですが、ベストを尽くして何とか間に合わせます(もちろん、もっと時間をかけたいのはやまやまですが)。それでよいのか…と問われたとしたら、「よい悪いではなく、学生が合格するために、できる限りのことをするのが私の仕事」と答えるでしょうね。


 さて、志望理由書については、質問掲示板で随分取り上げられていますが、その中で、校内生からいくつか気になる指摘を頂きました。
 その一つが、『全国一律フォーマットの怪』というタイトルで書かれているスタッフコラムの内容が、中ゼミでの志望理由書の指導とは異なるのではないか…という指摘です。内容を検討して誤解のないように先生に手を加えていただくつもりでしたが、少々大げさな言い方である上に非常に辛口ではあっても、一概に間違ったことを書いているわけではないので、現状ではそのまま掲載してあります。
 具体的には大学を志望する理由に「カリキュラムが豊富で環境が整っているから」とか、「多岐に渡ったカリキュラムが魅力的だから」とか、書く学生があまりに多すぎる。それでは、「自分の価値を伝える手だてにはなっていないのではないか」というのがコラムの内容でした。
 それでは、大学のカリキュラム上の特徴に触れることがいけないのでしょうか。
 もともと、志望理由書でその大学の特色を取り上げて書くのは、現役生(高校生)の推薦入試などでよく使う手法です。まだ、大学での勉強内容はわからないわけですから、よほど個性的な理由がない限りは、どうしても、それを書かざるを得ないわけですね。結果的に志望理由=その大学を志望する理由となる傾向が見られます。かつ、それを書くのに利用するのは、受験生全員、同じ資料(ホームページ、大学のパンフレット)です。どうしても似たり寄ったりの内容になりがちです。これが、全国一律フォーマットの原因ではないでしょうか。
 ところが編入の場合は、研究したいことがその大学でできる、その大学であれば専門的に学べる、だから受験する、という学習や研究上の理由を、求められます。また、これがもともと文部科学省が編入制度を推進してきた本来の目的でもあるんです。
 したがって、その大学を志望する理由としては、自分が研究したい内容に、その大学が適している、だから受験する…ということが伝わる内容で書くことがベストですし、大学側が望む受験者像に一致しているとも言えるでしょう。現役生の推薦入試とは少々異なるわけですね。
 でも、現実問題としては、それでは書けないこともたくさんあります。研究したいことがどこの大学でもできることだったり、逆に、なかなか専門の先生がいないためにそのものずばりの大学が見つからないこともあります。また、受験の目的が必ずしも特定分野に対する学習意欲だけではなく、その大学自体に魅力を感じているためということも当然あるでしょう。それに、確実に受かるためには複数大学の受験も必要ですし、その中には必ずしも学習環境が整っているとは言えない大学があっても不思議ではありません。
 受験生にすれば、受けるからには滑り止めでも受かりたい、当然ですね。そして受かるためには、その大学を志望する理由を明確にしなければなりません。このような場合には、その大学の特徴に触れてもかまわない、というよりも、それ以外に書きようがない、というのが実際です。それに、事前にカリキュラムをきちんと検討して、面接できちんと説明できるようにしておけば、面接を参考程度とする多くの大学は納得してくれます。
 ですから、「その大学を志望する理由」に関する中ゼミの指導としては、
  ? 自分の研究テーマと結びつけて書く
  ? ?で書くことが難しい場合は、その大学のカリキュラムの特徴などを取り上げる
ということになるわけです。
 実際に中ゼミ生がどちらで多く書いているかと言われると、う?ん、私が見ている学生では半々かな。あまり自信はないけれど…。なぜかというと、実は私が重きを置いているのは、編入の動機、入学後の研究テーマの部分であり、その大学を志望した理由は、それほど意識していないんです。大学に対する情報の発信源が同じ(ホームページや大学案内)である以上、ある程度似たり寄ったりの内容になるのはやむを得ないし、あの先生がいるから、この先生がいるから、などと書くのはリスクが伴います。気を遣うのは、この点についてうるさい大学の時だけです。それも志望理由書で書けることは行数が限られますから、具体的な対策はその後に行う面接指導であらためて扱っています。
 中ゼミには、学生が勉強に対して高い学習意欲を持って、編入試験にチャレンジすることを期待する、ほんとに真面目な学習スタッフが大勢います。でも、同時に受験のプロとして学生を合格させることに力を注がなければなりません。コラムを書いてくれた先生も当然それはわかっています。コラム中の「大学を褒め称えることは間違っていないにしても…」の文面からもわかるように、?で書くことを頭から否定しているわけではありません。でも、あえて厳しいことを書いたのは、?で書く学生があまりに多すぎる、これから志望理由書を書く学生には、できるだけ?で書いてほしい、という気持ちの表れでしょう。
 校内生はとにかく志望理由書を持って指導を受けに来ること、そうすれば、スタッフの熱い気持ちもわかっていただけると思います。サポート生もどんどん送って下さい。添削指導を受けられない校外生の方にはちょっと気の毒ですが、このサイトの中に、志望理由書を書くヒントはいろいろとあります。活用してください。
 長くなったのでいったんここでストップしますが、このテーマは次回以降も取り上げていきたいと思います。 

語学検定と編入試験

 編入試験の出願要件に各種語学検定の基準を初めて取り入れたのは、上智大学でした。それに伴い全学部共通の英語試験は廃止されました。平成10年度編入試験からスタートしましたから、もう、7年も前のことです。
 当時を振り返ると、上智に行きたかったのに受験すらできなかった…、つまり、門前払いされた中ゼミ生が多くいて、学生とともに非常に残念な思いを味わったことを思い出します。出願資格が変わると聞いてはいましたが、中ゼミが正式に情報をつかんだのは、試験要項が確定してからのことですから、年度途中でした。
 その結果はどうだったのかというと、平成9年度は上智大学全学部の合計*でジャスト400名だった受験者が、平成10年度には117名になり、前年度比マイナス70.8%と激減したんです。*上智は欠員募集のため、実施のない学科あり
 一方、合格者数は、平成9年度が合計39名で単純倍率が9.8倍、平成10年度が27名で4.3倍ですから、受験資格をクリアできれば、むしろチャンスは広がったわけですね。


 これにより、中ゼミ生の上智大学合格者数も、それまでの平均が年に10名前後だったのに半数程度になりました。平成9年度受験までは、毎年、上智大学全学部共通英語の対策講座を設置して、何とか学力を引き上げて合格者を出していました。しかし、平成10年度受験では、どうしても上智に行きたいという学生が急遽独学で語学検定に取り組んだわけですから、よい結果を出すのは、容易ではなかったということになりますね。
 それでは最近の上智大学の編入試験合格状況はどうかというと、平成15年度が131名受験で48名合格(別途試験実施の比較文化学部除く)、単純倍率は2.7倍です。受験者数は平成10年度当時よりも増えていますが、これはあらかじめ語学検定の対策を立てることができるわけですから当然と言えます。しかし、平成9年度の400名には遠く及びません。
 もちろん、その当時、編入試験受験の中心だった短大生が大幅に減少していることも受験者減の大きな理由だとは思いますが、4大生の中で編入試験受験者が増えて、早稲田大学第二文学部の受験者数が当時よりも増加していることを考えると、語学検定基準の壁はまだまだ高いと言えそうですね。一方合格者数は増えていますから、基準さえパスすれば、合格の可能性はより高くなっていると言えそうです。
上智大学の英検基準(2004年度)
準1級以上  文学部英文・ドイツ文・社会・教育
         法学部各学科/経済学部各学科
         外国語学部英語・ドイツ語・イスパニア語
  ※その他の学科は2級以上
さて、今回、この古い話を蒸し返したのは、このところ、編入試験の出願資格に語学検定の基準を設ける大学学部が、目立ってきたためです。まず、早稲田の社会科学部。ここは以前は学士のみを対象としていましたが、短大生や4大在学者を対象に別途3年次編入を開始し、受験資格に外国語検定の出願基準を設置しました。ただし、受験者数は、平成13年度から15年度まで、毎年10名台、学士の受験者が50名を越えていることを考えると、非常に少ないですね。これも受験資格がネックになっているためと考えることができるでしょう。
 さらに、今年は早稲田大学商学部、神戸大学経営学部も、出願資格に語学検定基準を設けることになっています。英文学科や英語学科ではなく、商・経営系の出願資格で変更が見られるのはちょっとおもしろいところですが、それはそれ。これにより中ゼミでは受験者の減少を予想しています。
 それではなぜ、受験者が減るのでしょうか。
 中央ゼミナ?ルでは、今年は語学検定の対策として、通年の授業に「TOEFL・TOEIC対策」を設けました。それでも、どこまで中ゼミ生が語学検定の準備に時間をかけられるのか、これは疑問です。
 基本的に編入試験の英語と語学検定の英語は、出題内容も対策も異なります。編入の英語は一般教養レベルあるいは専門に関連した長文の読解が中心です。一方で語学検定では、語学によるコミュニケーション能力などの実用性が重視され、「聞く・話す・読む・書く」の4技能についてそれぞれ試験されることになります。同じ英語とはいえ、勉強する内容が違うわけですね。
 それに編入の勉強は英語だけではありません。専門科目、小論文、面接・志望理由書対策と取り組むことはたくさんあり、かつ、多くの方が大学や短大に行きながら、あるいは社会人として仕事を抱えながらの受験です。並行して語学検定の対策まで行うのは、もともと英語のコミュニケーション能力をある程度持っている、あるいは英語学科や英文科を受験する、などの場合を除いては、負担があまりに大きくなるわけです。
 上智や早稲田を受験できないのは残念ですが、今後、増えていくことが予想されるとは言え、語学検定が受験資格になっている大学はまだまだわずかです。
まずは確実に編入することを考えるのが人情でしょう。
 ただし、どうしても上智に行きたい、早稲田に行きたいという方は別ですね。
受験大学を絞ってその対策として語学検定に取り組むべきですし、基準さえクリアできれば、逆にチャンスかもしれません。
 それから、もし、これをご覧の方が次年度に編入試験を受験する予定であれば、今年は語学検定に取り組んで結果を出しておきましょう。出題傾向・形式が異なるとはいえ、英語であることには変わりありません。英語に触れておくという意味からもお勧めします。
 でも、これ以上、語学検定の基準を設ける大学が増えるのはちょっと迷惑。
努力すれば結果を得られるのが編入のよいところなのに…。英語を話す、聞く力は、長文読解とは違って、そう簡単には向上しないですものね。私なんかどうもそういうセンスがなくって…。学生時代、英会話の時間は苦痛そのものでした。とこれは余計な独り言でした。