語学検定と編入試験

 編入試験の出願要件に各種語学検定の基準を初めて取り入れたのは、上智大学でした。それに伴い全学部共通の英語試験は廃止されました。平成10年度編入試験からスタートしましたから、もう、7年も前のことです。
 当時を振り返ると、上智に行きたかったのに受験すらできなかった…、つまり、門前払いされた中ゼミ生が多くいて、学生とともに非常に残念な思いを味わったことを思い出します。出願資格が変わると聞いてはいましたが、中ゼミが正式に情報をつかんだのは、試験要項が確定してからのことですから、年度途中でした。
 その結果はどうだったのかというと、平成9年度は上智大学全学部の合計*でジャスト400名だった受験者が、平成10年度には117名になり、前年度比マイナス70.8%と激減したんです。*上智は欠員募集のため、実施のない学科あり
 一方、合格者数は、平成9年度が合計39名で単純倍率が9.8倍、平成10年度が27名で4.3倍ですから、受験資格をクリアできれば、むしろチャンスは広がったわけですね。


 これにより、中ゼミ生の上智大学合格者数も、それまでの平均が年に10名前後だったのに半数程度になりました。平成9年度受験までは、毎年、上智大学全学部共通英語の対策講座を設置して、何とか学力を引き上げて合格者を出していました。しかし、平成10年度受験では、どうしても上智に行きたいという学生が急遽独学で語学検定に取り組んだわけですから、よい結果を出すのは、容易ではなかったということになりますね。
 それでは最近の上智大学の編入試験合格状況はどうかというと、平成15年度が131名受験で48名合格(別途試験実施の比較文化学部除く)、単純倍率は2.7倍です。受験者数は平成10年度当時よりも増えていますが、これはあらかじめ語学検定の対策を立てることができるわけですから当然と言えます。しかし、平成9年度の400名には遠く及びません。
 もちろん、その当時、編入試験受験の中心だった短大生が大幅に減少していることも受験者減の大きな理由だとは思いますが、4大生の中で編入試験受験者が増えて、早稲田大学第二文学部の受験者数が当時よりも増加していることを考えると、語学検定基準の壁はまだまだ高いと言えそうですね。一方合格者数は増えていますから、基準さえパスすれば、合格の可能性はより高くなっていると言えそうです。
上智大学の英検基準(2004年度)
準1級以上  文学部英文・ドイツ文・社会・教育
         法学部各学科/経済学部各学科
         外国語学部英語・ドイツ語・イスパニア語
  ※その他の学科は2級以上
さて、今回、この古い話を蒸し返したのは、このところ、編入試験の出願資格に語学検定の基準を設ける大学学部が、目立ってきたためです。まず、早稲田の社会科学部。ここは以前は学士のみを対象としていましたが、短大生や4大在学者を対象に別途3年次編入を開始し、受験資格に外国語検定の出願基準を設置しました。ただし、受験者数は、平成13年度から15年度まで、毎年10名台、学士の受験者が50名を越えていることを考えると、非常に少ないですね。これも受験資格がネックになっているためと考えることができるでしょう。
 さらに、今年は早稲田大学商学部、神戸大学経営学部も、出願資格に語学検定基準を設けることになっています。英文学科や英語学科ではなく、商・経営系の出願資格で変更が見られるのはちょっとおもしろいところですが、それはそれ。これにより中ゼミでは受験者の減少を予想しています。
 それではなぜ、受験者が減るのでしょうか。
 中央ゼミナ?ルでは、今年は語学検定の対策として、通年の授業に「TOEFL・TOEIC対策」を設けました。それでも、どこまで中ゼミ生が語学検定の準備に時間をかけられるのか、これは疑問です。
 基本的に編入試験の英語と語学検定の英語は、出題内容も対策も異なります。編入の英語は一般教養レベルあるいは専門に関連した長文の読解が中心です。一方で語学検定では、語学によるコミュニケーション能力などの実用性が重視され、「聞く・話す・読む・書く」の4技能についてそれぞれ試験されることになります。同じ英語とはいえ、勉強する内容が違うわけですね。
 それに編入の勉強は英語だけではありません。専門科目、小論文、面接・志望理由書対策と取り組むことはたくさんあり、かつ、多くの方が大学や短大に行きながら、あるいは社会人として仕事を抱えながらの受験です。並行して語学検定の対策まで行うのは、もともと英語のコミュニケーション能力をある程度持っている、あるいは英語学科や英文科を受験する、などの場合を除いては、負担があまりに大きくなるわけです。
 上智や早稲田を受験できないのは残念ですが、今後、増えていくことが予想されるとは言え、語学検定が受験資格になっている大学はまだまだわずかです。
まずは確実に編入することを考えるのが人情でしょう。
 ただし、どうしても上智に行きたい、早稲田に行きたいという方は別ですね。
受験大学を絞ってその対策として語学検定に取り組むべきですし、基準さえクリアできれば、逆にチャンスかもしれません。
 それから、もし、これをご覧の方が次年度に編入試験を受験する予定であれば、今年は語学検定に取り組んで結果を出しておきましょう。出題傾向・形式が異なるとはいえ、英語であることには変わりありません。英語に触れておくという意味からもお勧めします。
 でも、これ以上、語学検定の基準を設ける大学が増えるのはちょっと迷惑。
努力すれば結果を得られるのが編入のよいところなのに…。英語を話す、聞く力は、長文読解とは違って、そう簡単には向上しないですものね。私なんかどうもそういうセンスがなくって…。学生時代、英会話の時間は苦痛そのものでした。とこれは余計な独り言でした。