編入試験合格に必要なセンスとは・・・

 6月4日に当校で実施した大学編入フェアの際に、スタッフがある大学のブースで聞いてきた話です。(校内生は校内生向け編入情報にアップ)
 「編入について何か感想はありますか」と聞いたところ、「編入は一般入試とは異なり記述式で、ある程度センスが必要な試験だから、1年受けて失敗した場合は、2年、3年と受け続けても合格は難しい。」というお話があったそうです。
 ここでいうセンスとは何でしょうか。記述式ということは記号による選択問題や穴埋め問題ではない、ということです。つまり暗記力だけでは受からないということですね。具体的には、おそらくは構想がしっかりとした説得力のある文章を書く力(文章力、表現力、語い)だと思います。あわせて付け加えるなら、文章を充実したものとする背景知識、その学科への関心の深さなども大切でしょう。
 でも、それはまさしく、中ゼミでの訓練で得られるものであって、実際はセンスのあるなしだけでは片づけられない…と思わず苦笑したのですが、その時、ふと思ったのは、確かに独学でやるとすれば、センスに負うところが大きいと言えるのではないかということでした。


 以前、法政大学が文系全学部共通で2年次編入を実施していたときのことです。試験科目は英語や第二外国語から1科目、それに論文。こちらは一般教養からの出題で人文系・社会系から各1題を選択して60分で2題を論述するというものでした。
 ある年の中ゼミ生のA君は社会学部2年次への転部(試験内容は編入と同じ)をめざす法政大学夜間部の学生で、まれにみる努力家でした。英語が苦手なため語学は中国語を選択し、最後は中ゼミにある20年分の過去問題をすべて完璧に解けるようにしました。また、論文は中ゼミ講師が授業で取り上げた課題や予想した問題を模範解答に仕上げ、これも何十枚分も暗記して受験し、見事に合格したのです。
 その彼が浮かない顔をして話すのです。「一緒に受かった連中の中に、中ゼミにも来ないで試験勉強をしている様子もなかったのに合格した人がいるんですよ。論文は特に対策を立てなかった、文章を書くことはもともと好きだし、普段から本や新聞を読んでいて、知っていることを書いたら受かったって言うんです。ボクはあんなに勉強したのに…」
 おやおやと思いました。「そういう人も中にはいるよ。それに隠れて勉強していたのかもよ。」と表面では答えつつ、内心、「でもキミは明らかに努力したから受かったんだよ。最初は全然論文になってなかったじゃない」と私は呟いていたのでした。
 ときどき、インターネットで体験記などを見ていると、「勉強しなかったけれども受かった」とか、「編入は簡単に受かる」といった書き込みがあります。中ゼミ生の体験記にもまれにあって、これから受験する学生から猛反発!が出たこともあります(中ゼミ生の場合は、全然勉強しなかったわけではなく、この程度で受かるのか…という拍子抜けの思いがあるのだと思っていますが…)。
 でも、欠員が出ている大学であれば別ですが、上位校に受かるには当然学力が必要です。勉強せずに受かるなら、こんなに楽なことはありませんが、実際は多くの方が失敗しています。ある人が「勉強しないで簡単に受かった…」から、誰もがそうだとは限らないのです。入学相談で、「短大の先輩が勉強しないで受かったって言ってたのに、そんなに勉強しなければいけないんですか」なんて不服そうに言われるたびに「おやおや、勘違いしてるな…。その先輩も悪気はないんだろうけど…。自分ができたから人にできるとは限らないのに」と心の中で呟くのです。
 この時の学力が何か…と考えたとき、センスという言葉に置き換えることができるかもしれないと思うのです。同じだけの知識を持って論文を書いても、その人の持つ文章力で説得力のあるものにもなれば、逆の場合もあります。それ以前に、受験勉強でいやいや専門知識を暗記している人と、もともとその学問が好きで日頃から本を読んで親しんでいる人、この違いであるかもしれません。後者の場合は、受験勉強をしているという意識はないのに、それがそのまま受験に役立っているわけです。それが「勉強しないのに受かった」という言葉につながるのです。
 本や新聞を読むことが好きであること、文章を書くことを苦にしないこと、これらは編入試験では欠かせない要素であり、センスと言えますね。特に独学で勉強するときには、大きな力になります。そういう方が希望するなら、ぜひ、編入試験にチャレンジすることをお勧めします(たとえ、中ゼミを利用しなくても…。でも、ちょっと宣伝が入ると、そういう人達が陥りやすいのがひとりよがり。中ゼミで添削指導を受けるって、そういう意味でも大切ですね)。
 実は、まもなく『まるわかり大学編入』の改訂版が出るのですが(ますます充実した内容になっています。楽しみにしていて下さいね)、今回はすでに編入して大学を卒業した方や大学4年で進路を決定した方からのアンケートを掲載しています。その結果で驚いたのは、大学院へ進学する率が普通の学生に比べて高いことです。元中ゼミ生だからかな…、とも思いましたが(中ゼミで勉強が好きになる方が多いため)、編入後の感想を見ると、中ゼミ生に限らず編入生は勉強に目的意識を持っている人が多いとのこと、必ずしも、中ゼミ出身者からとったアンケート結果であるためではないようです。
 学問が好きになれる人、それも編入試験合格に欠かせない、一つのセンスであると言えるのかもしれません。