中央ゼミナールの出版物について

中央ゼミナ?ルでは、編入や大学院に関するさまざまな書籍を出版している。私はそのすべてについて、企画から完成までかかわってきたわけだが、本を出版するまでにはさまざまな苦労がある。また、これらの本には今までの受験指導ノウハウから受験を考える人にこんなことを伝えたいといったメッセ?ジも込められている。


心理学を学びたい人のための大学・大学院の歩き方
 たとえば、 「心理学を学びたい人のための大学・大学院の歩き方」、これは企画はしたものの引き受けてくれる出版社がなかなか見つからず、あやうくぽしゃるところだった。
「心理学に特化した本では需要が少なく売れない」という意見が当時大勢を占めたのである。「臨床心理士資格試験の受験者がこの程度の人数しかいないんだから売れない」というのが根拠であり、「臨床心理士資格の受験までたどりつくのが大変なだけで、受験を希望する人はたくさんいる」というこちらの主張は、数字に表れていないということでなかなか理解してもらえなかった。  
もともと 「心理学を学びたい人のための大学・大学院の歩き方」を企画したのは、臨床心理士になりたいと中ゼミを訪れる人の数が年々増えていること、しかもその中に、「自分が一生の仕事として取り組んでいくことについて大学院で専門的に学ぶ」というよりは、「資格がほしいから進学したい」という人達がかなりみられたことにある。その姿勢に疑問を感じ、大学院へ行くとはどういうことなのか、もう一度考えてほしいと思ったのがきっかけである。本来、予備校であれば、「こうすれば受かる」とか、「進学したらこういうメリットがある」とだけ書いた方がよいのだろう。しかし、私たちは受験者に対して誠実でありたいと思っている。したがって、中央ゼミナ?ルでの入学相談でも、臨床心理士の指定大学院受験の難しさや、臨床心理士になったからといって必ずしも定職に就けるわけではないことをお話ししている。相手が社会人であれば「社会人入試は易しい」という社会科学系大学院の常識は、こと臨床心理では通用しないこともはっきりと伝える(教育評論家と称している人の中にも勘違いしている人がいるようだ)。また、カウンセラ?には向き不向きがあることも、時には話に出る。あの本を作りながら、心理学論文担当の先生と「この本を読んで受験をやめる人がいるかもしれないね」「それでもいいんじゃない」などと言い合ったのを思い出す。  
さて、最後は、付き合いの長い東京図書で引き受けてくれたわけだが、結局、企画が通るまで半年かかったことになる。実際に予備校という現場にいる者と、出版社の距離をしみじみと感じさせられた。しかし、いざ出版してみると、学習参考書としては珍しく売れ行きがよかったとみえ、昨年末には資料を改訂して第2版を出版することができた。他の出版社が「うちから出しておけばよかった…」とぼやいているという話も聞いた。さらには、英語や専門科目の勉強法をとりあげた 「合格ナビ!心理系大学院・大学編入攻略」 という本まで出してしまうという景気の良さである。もちろん今度は反対意見も出なかった。
  以前、「エグゼクティヴ」という雑誌が主催した社会人向けの大学・大学院ガイダンスに参加したことがある。この時、予備校のブ?スは人がほとんど近寄らないような隅の方で、各大学のブ?スからも距離が置かれて非常にさびしいものだったが(これでもお金を出して参加するのである)、入り口近くのエグゼクティヴの相談コ?ナ?には、 「心理学を学びたい人のための大学・大学院の歩き方」がなんと山積みされていて驚いた。「人が作った本で商売している…」と思ったりもした(冗談である)。翌年からはこのガイダンスには参加していないので、その後のことはわからない。
だれも教えてくれなかった大学編入」  
これは、唯一、私が著者になっている本である。年度版の 「編入・転部ガイド」 も、文章部分はもちろん私が書いているが、著者は中央ゼミナ?ルとなっている。この本を私の名前で出したのは、私が今までに出会って印象に残った学生のエピソ?ドを中心に書いたからである。  
私は、十数年に及ぶ編入志望者や社会人学生との関わりの中で、さまざまな学生と出会ってきた。様々な境遇、年齢の方がいた。短大生がわずか半年間の間に精神的に大人になっていく姿を見守ってきたし、アルバイトをしながらがんばる大学生もいた。社会人学生にはこちらが頭を下げたくなるような立派な人もたくさんいて、いろいろと勉強させてもらった。いつか、この人達のことを文章にしたいとずっと思っていた。そして完成したのが 「誰も教えてくれなかった大学編入」 なのである。この本で、今のままでよいのか悩んでいる多くの人に、時には悩み苦しみながらも編入を目指して努力し、自分の人生を切り開いていったもと中ゼミ生の姿を伝えたかったのである。  
もうこの本を出してから数年が経った。売れ行きはそこそこで、なかなか改訂版を出せないのが残念だったが、やっと秋に内容を充実させた改訂版を出すことが決まった。中ゼミOBのがんばりを皆さんに紹介できることを、心から嬉しく思っている。
 
社会人・学生の看護・医療・福祉―キャリアを生かす資格・進学
  中ゼミには看護婦経験者が学生として入学することが多い。大きな理由は多くの看護婦さんが高い向学心を持っており、社会人入試を受験するために当部の社会人入試コ?スに入学してくれることである。社会人入試コ?スを設置した年に初めて入学してくれた学生の中にも看護婦さんがいて、彼女とはその後もずっと、付き合いが続いている。受験生当時、「夕べは複数の患者が亡くなって…」と言いながら夜勤明けで目を真っ赤にしながら授業に出ていた彼女の姿が今でも目に焼き付いている。彼女たちとの出会い、特にその真摯な姿勢は、周囲の学生にとっても、そして私にとっても、非常に刺激的であるし、私が看護や医療の世界へ進もうという受験生に関心を持つきっかけとなった。それが、中ゼミにおける看護医療系受験コ?ス(現:社会人・学生のための看護・医療・薬学コ?ス)の設置というかたちになったのである。
 同時に、ここ5,6年、社会人が看護・医療のスペシャリストを目指して中ゼミを訪れるようになった。ほとんどの方が人との関わりの中で仕事をしたい、社会に貢献したいと希望しているが、中には「リストラされたので、一生勤めることの出来る資格がほしい」という方もいる。看護・医療・福祉では、チ?ムプレイやコミュニケ?ション能力を要求されることから面接の印象も非常に大切である。「適性」の有無ということを全く考えずに看護を希望する方を見ていて、もっと目的を持った受験をしてほしいと考えさせられることもある。さらに、看護医療系の一般入試の難しさも勉強から離れた社会人や学士にとって大きな障害である。資格志向の強まりから現役生の間でも看護医療系の一般入試が難化している時代である。最近増えてきた社会人入試や学士入学について、もっと知識を持ってほしいと考えるようになった。以上が、この本を作った動機である。
 特に自信を持っているのは、社会人入試などのデ?タの充実、志望理由書の書き方や面接対策に触れていること、それに看護医療系の学校からアンケ?トを掲載しているところである。看護医療系に関するガイドブックは数多く出ているが、社会人や学生に特化した本はこれだけだと自負している。学校側が社会人や学士に求めていることは何か、年齢的にはどのくらいが上限なのか、知っておきたい情報が詰まっている(と思う)。
  その他の本と今後の企画  
 以上に加え、編入に関しては 「編入・転部ガイド」「全国主要大学編入学試験案内〈2006年度版〉」「大学編入・転部試験問題集」 を、大学院についてはおもに社会科学系大学院を取り上げた 「大学院完全攻略」 、 「社会科学系大学院英語問題と解答」 、 「人文科学系英語問題と解答―大学院入試問題集」 を出版している。
 さらに、中ゼミの講師の先生方による 「ライブ解説!社会科学系大学院への英語」「大学1・2年生のためのすぐわかる物理」も付け加えておきたい。後者は「前田の物理」で有名な前田先生が中ゼミでの編入志望者指導のノウハウを活かして書き下ろしたものである。ちなみに先生は、今、 NHKの大河ドラマで取り上げられている加賀前田藩の直系の子孫であり、現在のご当主のいとこにあたるお殿様。中ゼミの講師はバラエティに富んでいるのだ。
 さて、今後だが、実は現在も何冊か新しい本を企画しており、秋から春に向けて出版準備中! 乞うご期待! というところ。いずれも情報の多さと目的意識の明確化という中ゼミらしさが満載された、魅力のあるものになる予定(はず)である。