編入試験の試験要項って本当にわかりにくい?大学中退者と大学在学者?

 質問掲示板などで予告したとおり編入後の大学生活についてぶつぶつと書いていたのですが、気になることがあったので、今回の独り言は臨時増刊という感じです。編入後の大学生活についても間もなくアップできますので、少々お待ち下さい。
 ということで独り言を始めましょう。
 このところ、質問掲示板に、「大学を中退したけれども編入試験を受験できますか」などの質問が見受けられます。これが試験要項を見ても、意外にはっきりしません。
 たとえば、掲示板の回答にも取り上げましたが、埼玉大学経済学部の平成17年度要項には、「他の大学に在学する者で、修業年限4年以上の大学で62単位以上を修得し、かつ2年次を修了した者及び平成17年3月までに同要件を満たす見込みの者」とあります。
 これを読むとまるで中退者は受験資格がないみたいです。でもちょっと待って下さい。長年編入指導をしていますが、2年次まで修了して一定の単位を取得している中退者が、編入試験を受けられなかったという話は、今まで聞いたことがありません。
 そこで大学に問い合わせたところ、受験できるとのことでした。安心してください。さらに昨年度の要項の表現がやや不適切だったので平成18年度は訂正する予定とのことなんです。おそらく、問い合わせが複数来たのでしょうね。
 このように、編入試験の要項は曖昧なことが多いのです。中ゼミでは毎年『まるわかり大学編入』を編集するために全国の国公私立大学すべての編入試験要項に目を通しますが、ベテランの編集者でも読み間違えてしまうことがあります(買って下さった方ごめんなさい!)。


 たとえば、鹿児島大学法文学部、ここについては『まるわかり』のデータ欄に記載ミスがあります。編入年次が3年次であるにもかかわらず、受験資格欄では大学1年修了(見込み)に○がついているんです。たまたまこれを見たときは、「3年次編入が1年修了で受験できるわけないじゃん」とドキッとし、「なんでだろう」と思って試験要項を見てみたのですが、すると次のようにありました。
「他の大学の学生で、1年以上在学し、50単位以上修得した者または平成17年3月までに修得見込みの者」
 この一文を見て担当者は1年修了見込みで受験できると考えたのでしょう。でも、要項をよく見ると、下の方に※以下が記載されています。いわく
「他大学での在学期間が2年に満たない者、修得した単位が50単位に満たない者、短期大学もしくは高等専門学校を卒業していない者(中略)については、入学を許可しない。」
 ここまで読んで、やはり2年修了見込みでないと受験できないことがはっきりします。大学に問い合わせたところ、「今、大学2年ということは大学1年以上在学なのだから間違いではありません」との回答でしたが、この場合、「大学2年以上在学見込みの者」と書く大学が一般的ですから、ちょっと…やっぱり…う?ん、間違いやすいですね。(すみません。間違えたことの言い訳でした) 
 このように編入試験の要項には判断に困るものが案外多いんです。ちょっとでも疑問に思ったら、大学に問い合わせてみるべきです。
 ここで中退した方の件について説明しておきます。(大学在学者についてもこの後で記述がありますから、続けて読んでくださいね。)
 先ほども書きましたが、長年、編入指導をしてきて、大学中退者(2年次修了で62単位以上取得している場合)が受験できなかった、つまり在学中でなければ受験できないというケースは、まだ、聞いたことがないんです。そういう大学がもしあるなら、私も知りたいところです。以前、専修大学文学部が短大生のみを対象に2年次編入を実施していたときに(今は他の受験資格者も受験可)、受験資格に既卒者不可(つまり短大2年生のみ可)とあって、「何でこんな規定があるんだろう」と不思議に思っていたことがありました。もちろん、今ではそのような規定はなくなりましたが…。そのくらいでしょうか。
 それでは中退者は何も問題ないのかというと、こういうケースがあります。
 まず、取得単位数です。これは何単位取得という規定をクリアしていればよいので問題ないでしょう。気をつけたいのは中退の年次です。大学によっては3年間いても特定の単位を取得してないと2年次修了の扱いにならないことがあります。特に理系に多いですね。たとえばある大学に4年間いて65単位以上履修したが、1年次の必修単位を取得できないために2年次に進級できず、結局1年修了時に中退という扱いになっている、というケースがあり得ます。この場合は、編入先の大学によっては2年次修了という資格を満たしていないと判断されて受験できないことがあります。もちろん受験できる大学もありますので、事前に各大学に問い合わせる必要がありますね。
 このように、大学中退者については試験要項だけでは受験できるかどうかわかりにくいことがありますが、まず、大学に問い合わせてみることです。多くの場合は問題なく受験できるでしょう。
 4年制大学に関して言えば、中退者よりも在学者の方が受験が難しいケースが多いです。たとえば、例外ではありますが、「すでに中退していること」(北海道大学農学部・埼玉大学教育学部・鹿児島大学理学部)という大学もあります。また、多いのは在籍大学の受験許可を必要とするところです。たとえば、国立大学では下記のようなところが挙げられます。
 北海道大学教育学部・理学部、東北大学経済学部、茨城大学人文学部・教育学部・農学部、横浜国立大学工学部、新潟大学法学部・工学部、名古屋工業大学工学部、神戸大学文学部、奈良女子大学文学部・理学部・生活環境学部、岡山大学文学部、山口大学経済学部・農学部、徳島大学工学部、愛媛大学法文学部・農学部・工学部・理学部
 
 これはどうしてでしょうか。
 大学2年生が編入する場合は、今いる大学を退学することになります。退学者が出ればその大学は授業料収入が減ることになりますから、大学としてはあまりうれしくはありません。中には他大学への編入を学則で禁止するところもあります。受け入れる側の大学としてはトラブルを避けたいところですね。そこで、受験資格として中退していることと規定したり、在籍大学の受験許可が必要とすることがあるものと思われます。中退者の方が編入試験を受験しやすい理由もそこにあります。
 それに、同系統からの編入だと面接で「なぜ、今も○○学科へいるのにわざわざ同じ学科に編入するのか」と聞かれて、きちんと説明できないと落とされることがありますが、退学していればそのために落ちることは少なくともなくなります。
 それにしても大学の試験要項には泣かされます。私もいい加減試験要項は読み慣れているつもりですが、それでも今だに何回読んでも判断できずに大学に直接問い合わせる…なんていうことが珍しくありません。編入試験対策のプロである私が言うのですから、皆さんが読んでわからなくても全然不思議ではありません。繰り返しになりますが、一人で悩まずに大学に直接問い合わせて確認することです。
 さて、それ以外に大学在学者が気をつけなければいけない規定について挙げておきましょう。
 一般的には「2年次修了(見込み)で○○単位以上取得(見込み)」という規定が多いのですが、時には次のような大学があります。
 「2年次修了見込みで出願時に○○単位取得済みであること」です。これは落とし穴ですね。ほとんどの場合は見込みでよいためにうっかりしがちです。
 たとえば京都大学経済学部がそうです。要項にはこうあります。
 「日本に於ける修業年限4年以上の大学において第2年次以上に在学し、出願時に48単位以上を修得済の者」
 この場合は出願時、つまり大学2年の11月にはすでに48単位取得してなければなりません。大学1年次に48単位取得できる人は限られますから、受験できないケースも当然出てきます。こうなると有利なのはセメスター制の大学にいる人ですね。2年の前期で資格を満たすことが可能です。何だか少々不公平な気もしますが…。
 さて、この要項もうっかりすると中退者は受けられないと言っているようですね。
 実は大学側が何と回答するのか電話して聞いてみたのですが、向こうも即答はできませんでした。電話の向こうで複数の人ががやがやと元気な関西弁で「受けられるんじゃない?」とか話しているのは聞こえてくるのですが、結局回答は「大丈夫だと思うけれども確認するから明日まで待ってほしい」でした。大学側の編入試験に関する認知度はこんなものなんです。これは別にこの大学だから…ということでは決してありません。どこの大学でもあり得ることです。
 そして翌日の回答は…もちろん「受験できます。ただし48単位必要です」でした。
 編入試験要項の不思議、少しおわかりいただけたでしょうか。中ゼミではわかりにくい要項の大学にはしつこく電話をしています。そうすれば、翌年から改善してくれるところもあるかもしれません。もっともムキになって今まで通りの表現にこだわる大学もないとは言えないかも…とこれは失言でした。
 興味のない方には、やたら長い文章で、おそらく読んでもらえなかったでしょう。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。