志望理由書についてその2?校内生からの質問を受けて?

 さて、今回扱うのは、志望理由書をマニュアル化することについてです。
 校内生から指摘があったのは、中ゼミの指導に従うと、皆、同じ内容になるのではないか…という、ある意味素朴な疑問でした。なるほど、不安になる人もいるかもしれません。でも、はたして本当にそうでしょうか。
 私は、毎日、5,6件の志望理由書を見ていますが、同じものは一つもありません。なぜなら、編入を考えた動機・きっかけ、入学後に研究したい内容(この二つを私は最も重視していますが)、これは本当に十人十色で、人により様々なんです。
 小論文も同じですが、志望理由書では、人は自分の中にあるもの?知識や体験、感情、問題意識?しか、書くことができません。インプットされたものしかアウトプットはできないのです。それはその人の今まで生きてきた過程の中で培われてきたもので、他の人と同じということは絶対にあり得ません。
 たとえば受験学科や研究したい対象が同じであっても、それについてたくさんの本を読んでいる人と、ほとんど読んでいない人、多くの時間を費やして深く考えてきた人と、そこまではしていない人では、志望理由書でアウトプットできるものは明らかに違ってきます。個人差は最初から存在するんですね。
 
 そして、受験者は、今、自分が持っているもので勝負するしかありません。人に書いてもらう…これは小論文などと比較されて自分で書いたものではないことがばればれです。ムリに難しいことを書く…背伸びしても面接で質問され突っ込まれて立ち往生するだけです。本などを写す…その部分だけ文体が異なっていて、これも見る人が見れば、ネタばれです。


 それでは中ゼミの添削指導では何をしているのでしょうか。
 まず、最低限必要条件(後で説明)を満たしたものに仕上げること、書いている当人では気付きにくい、漠然としたわかりにくい表現を、少なくとも学びたいことが相手に伝わるような言葉にすること、自分では気付いていなかったよい面をなるべく引き出すこと、そして最後に同じ言葉を繰り返し使っている、あるいは適さない表現があるなどを、訂正するなど文章の校正作業、これが校内生の志望理由書指導をする際に、私が心掛けていることです。さらに付け加えれば、志望大学から考えて許容範囲のものに仕上げることです。
 
 志望理由書はその人個人のものですから、完成した内容をこちらで保存することもしていません。ですから、生徒が書いたものを他の人に見せることも(専門の先生に相談する以外は)ありません。書かれた志望理由書の一つ一つが、すべてオリジナルなのです。
 唯一、似たような表現になりがちなのが、前回触れた、大学を志望する理由の部分でしょうか。
 それでは中ゼミで行っているマニュアル化って何か。実は私は今までこれをマニュアルって考えていなかったんですが、それは、志望理由書に書くべきこと、言い換えると書く必要のあることを皆さんに示すことです。具体的には4つあります。先ほどから触れていますが、
    編入を考えた動機・きっかけ
    入学後に研究(学習)したい内容
    その大学を志望する理由
    卒業後の抱負
です。4番目の「卒業後の抱負」については、もう、10数年以上も前のことですが、あまりにもしばしば面接で聞かれるため、卒業後にどうするか、ここまで念頭に置いて志望理由とは書かなければいけないんだなと痛感して、付け加えました。
 また、それらを書くにあたっては、上に並べた順番で書くことがわかりやすい 、ということも伝えています。これもマニュアルというよりは、小論文の序論、本論、結論という形式があるのと同じに考えています。相手に説明しやすい、論理的な並べ方として提示しているわけです。
 その他にも、書く際にしてはいけないこと、注意すること…をガイダンスで説明していますが、いずれも、当然、気をつけるべき必要条件にすぎません。しかも、決して「こう書かなければならない」という強制ではありません。自信があるのなら、自分で好きに書いてもよいし、中には特に指導しなくても、その気持ちが伝わるすばらしい志望理由書を書いてくる人がいる、ということも伝えています。
 これをマニュアルと呼ぶのか、うーん、ちょっと違う気がしますね。でも、受け止め方は様々でしょうし、それでよいのだと思います。少なくとも、中ゼミの指導に従った結果他の人と同じ内容になることを心配する必要がないことは、納得していただけたのでは? いかがでしょうか。