オジサンはオジサンの戦いがある

齢44歳にして、しかもうつ病の治療と並行しながら、臨床心理士指定大学院の受験を目指す。この、誰が聞いても「それは無謀だ」と答えるであろうチャレンジを心に決めたのは2008年6月、試験の本番まであと9ケ月しか無い、という時期であった。
一見、圧倒的に不利な条件の中でのスタートであったが、私にはそれなりの勝算?はあった。即ち、勉強とその結果は、量もさること「質」によって大きく左右されるという、はるか昔、大学受験で体得し、その後の社会人生活を通しても裏打ちされた「信念」があったからだ。
およそ全ての大学院で、その試験内容は英語と心理学の論述問題だ。そこで私はまず、すっかりさびついてしまっていた(特に単語)「英語力」の修復と大学の教養で学んで以来全く触れていなかった心理学の「基礎力」の構築に取りかかることにした。
英語について幸いだったのは、院試の問題は、まずそのほとんどが読解・和訳・要約である、という点だった。複雑な文法問題も構文の工夫が求められる英作文がない、ということは、とにかく片っ端から英単語を覚え、後は大量の英語を速いスピードで読みこなす力、そして(意外にこれが重要な)和訳するにあたっての国語力を磨く、ということであった。なので私の場合、文法の勉強は特には行わなかった。その時間があるなら一行でも多くの英文を読み(それによってあらゆる構文に対応できる力が身についてくるよう)一語でも多くの単語を覚える(単語さえ分かればあとは「日本語力」でそれなりの意訳はできてしまう)べきだ、と信じていたからだ。
私はまずZ会の『長文で覚える英単語1000』を最低4回通りは読み込み、不明な単語については1回目・2回目・3回目と違う色でマーキングし、「英語そのものに慣れる」のと「一つでも多くの単語を頭に入れる」勉強を集中てし行った。続いて10月頃からは中ゼミの「ハイレベル英語」と「ヒルガードの心理学で学ぶ英語」に取り組み出した。我ながらこの作戦は的を射たものだったと思う。もし、いきなり中ゼミの添削問題やヒルガードに取り組んでいたら、間違いなく挫折してしまっていただろうからだ。単語カードは増えすぎても意味がないので、「Z会の1000語」の4回目以降から作り始め、最終的には1000枚くらいにはなっただろうか、ちょっとした空き時間にもぱらぱらとめくりながら暗記していった。
一方、心理学だが、こちらはまさに「ほぼゼロ」からのスタートであったため、まずは有斐閣アルマの『はじめて出会う心理学』を、まずは意味がわかろうがわかるまいが、とにかく1回通読し、その後、ペンでマーキングをしながら再読した。この、「1回目はとにかく進み、2回目以降でマーク×していく」というのは、結構大事なポイントである。というのも、初読者にとってはあれもこれも全てが重要に見えてしまうため、いきなりマーカーを手にすると、本全体が真っ赤になって終り、ということになってしまうからだ。
この「通読」で一定の基礎を身につけてから、ノート作りに入った。使ったのは『臨床心理士大学院テキスト』(白地に赤と黄の筆デザインの表紙)と(黄色い表紙の)『心理学』であった。いずれも良書、お勧めである。ここでポイントとして挙げたいのは「目移りはするだろうが、参考書は多くとも3冊まで。しかしその内容を深く学べ」というものである。中ゼミの添削に取り組み出したのは10月以降。英語についても言えることだが、ある程度遅くからの方が(私の場合は)切迫感が上がって、結果良かったと思う。また、名刺大の単語カードを用意し、ノート・参考書・添削から重要な概念・用語・人名を抜き出して100~200字にまとめて(この「まとめる」という作業も自分の理解を確認する上でも極めて重要である)300~400枚のカードを作り、英単語と同様に、何度もくり返しチェックしながらポイントを暗記し、命題に対する理解度を深めるようにした。
このようにして受験対策を進めたわけだが、私の場合、うつ病の治療と並行していたため、1日の勉強時間は2~3時間しかとれなかった(さすがに試験直前は増やしたが)し、うつの状態が良くなかった2008年8月はほとんど勉強らしい勉強はできていなかったと思う。
こんな私でも、国立九州大学の大学院試験の筆記テストに合格できたという実績は、たとえ不利な条件でも正しい方法論にのって効率の良い勉強をすれば難関と言われる国立大学の大学院も決して恐れることはないことを証明してくれると思う。尚、九州大学大学院の入試では、筆記合格48人を28人の最終合格者に絞る面接試験で落ちてしまい、結果、福岡大学の人文学部教育・臨床心理学科の編入試験に合格、現在は3年生として勉強しているが、ただ、大学院試験はいずれ再びチャレンジする予定である。
Never Give Up!!

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