「編入学」合格のアルゴリズム

これから僕は編入を決意し、運良く試験に合格したときまでの経験を、そのときの心情を交えて簡潔に記そうと思う。
他の人の体験記と同じような内容にならないように、あえて主観的に書いてみた。”合格のアルゴリズム”などと、たいそうタイトルをつけたが、合格するためにはこのような勉強法をすると良い、ということは書かないつもりだ。編入のための勉強法が知りたければ本屋に行くか、ネットを調べれば沢山見つかる。そのような情報を求めていたのなら、読まない方がいい。
あくまで体験談なので、そこから何を得るかは人それぞれである(何も得られないかもしれない)。ちなみにタイトルと内容はほとんど関係がない、ただ片仮名を使った方が目に留まるのではないかと思っただけだ。これから書くこともこのようなノリで書いていくつもりなので、削除されるのではないかとびくびくしながら書いている。
・何よりも先に編入の動機を考えた
これを読んでいるあなたは何のために編入をするのだろう。モノポールを研究したいため?宇宙飛行士になるため?環境問題を解決するため?僕は友達に「なんで編入したの?」と聞かれたら、「北海道に住んでみたかったから」と答えている。しかし、バイト先の上司、親、試験の面接官(あと中ゼミの先生も)には、「超伝導を研究したいため」と答えている。これはどちらも本当である。ただ、動機の重要度としては、「北海道」>>「超伝導」というところだろう。
モノポールを研究するため漢文の勉強を一生懸命するのか?宇宙飛行士になるために高校の中間テストを頑張れるか?少なくとも僕は大学受験のときにそれができなかった。できたら現役のときにすでに北大に入学できていただろう。だから僕は編入の試験勉強の合間に、北海道の大地に思いを馳せ、新しい部屋はどのようにコーディネートしようか、ということを糧に頑張っていた。
あまりにも遠くの目標を追いかけるのは疲れる。目の前に人参を吊るした方がよっぽどやる気がでる。ただ、そのような動機だと試験の際にぼろが出る可能性があるので、なるべく早くから編入の動機を”作り”、常に細部まで矛盾がないか、日頃から検閲していた。これが編入試験を受けるにあたって僕がまず始めたことである。
・勉強の環境を作った
そしてその後、編入試験合格を確実なものとするため、中ゼミに入る。最近は情報が重視される時代だが、その情報社会においても、”編入”、”中ゼミ”という単語を知っている者はごく少数だ。知らないことが即、不利益になる時代。”編入”と”中ゼミ”というものを探し出しただけでも、他の人たちよりも得をしていると考えてもいいだろう。
僕は自発的に勉強できない人間だ。テストや宿題などがあれば別だが、休みの日に勉強をしようとすると鳥肌が立って、手足が震え、頭をかきむしって大声で叫びたくなる(過剰表現)。勉強をしなければならない立場に自分を置くことが必要だった。その点で中ゼミは非常に役に立った。授業があるということは自身の怠けを消してくれ、お金もかけたのでサボろうとも思わなかった。
少し話がズレるが、僕は中ゼミの費用や試験にかかる費用は全て自分で出した。編入を決意してからもバイトは続けたし、大学の単位だって一つも落としていない。中ゼミの授業より、バイトを優先したし、大学の課題をほっぽって編入の為の勉強をしたことはない。なぜなら僕は編入に落ちたときに”編入試験を受けた為の犠牲”を出したくなかったからだ。
落ちたとしても今までどおり、むしろ受かった今、引っ越し代金などで親に迷惑をかけている程だ。しかし、落ちても大丈夫という状況で、実にさわやかな気分で勉強ができた。受験のときなどはいつも落ちたらどうしようと後ろ向きな考えで勉強していたため、勉強をしようとすると鳥肌が立って(以下略)。しかし、編入試験の勉強では”受かるために”勉強ができたので実に楽しかった。勉強が楽しいと思ったのはこのときが初めてだった。まあ、中ゼミの費用は無駄になるかもしれないが、編入試験を受けていなければ今頃自分の部屋をプラズマテレビが占領していただけだろうから未練はない。中ゼミに入ってからは大志を持った先生や、競え合える仲間に囲まれて、今までの自分では考えられない程の効率で勉強でき、見事合格することができた。
・小論文、面接。そして最後に。
試験のことについて少しだけ話そう。僕の受けた北海道大学についてだけ簡単に。北大は筆記試験は物理、英語のみである。
物理は高校の試験に毛が3本ほど生えた程度のもの、中ゼミの授業さえしっかり受けていればだいたい解ける。
英語は現役のときの受験よりも数段簡単だった。長文と英作文だけで、内容は理系のものだが理系単語は全て欄外に書いてある。僕はある程度理系単語の勉強していたので肩すかしをくらった。長文は結構長いものを出されるが、それほど難しい文ではなかった。僕は中ゼミの授業とあと参考書を一冊だけやったがそれで十分対応できるレベルだった。
一番心配だったのが小論文だった。小論文はバイトの関係で授業がとれず、通信で勉強していたがひどいものだった。今まで日本語を甘く見ていた罰だ。一回の小論文が合格点に達するのに4回も5回も書き直したほどだ。10回程のコースだが3回目ぐらいまでしか進めなかった。
理系の文章というものがこんなに難しいものだとは思わなかった。小論文に関しては図書館で借りた小論文の入門書を読み、意見と感想の違いの文章を見分けることから始めなければならなかった。だが北大は幸い小論文というよりは、志望動機を書くタイプのものだったので超伝導のことを書いて乗り切った。
面接も心配ではあったが、それほど重要視してはいなかった。先に述べたように志望動機の物語はしっかり細部まで創っていたし、塾の講師のバイトをしていたので、しゃべることには多少自信があった。本番でも多少緊張したが、まあまあ上手く答えられた。そのときは全体的にいい出来だなと思えた程だ。
面接は大学の先生方が直々に面接をする。大学の先生方は編入試験をどう捉えているのだろう。本来研究をする為に大学に入った人たちだ。
学生の試験なんて研究を邪魔するものに過ぎないだろう。大学受験の問題を作る為には過去問を全て確認して、何人もの教授、助教授が長い時間をかけてつくる。そして、採点は公平を期するため採点者が全員一緒に話し合いながら採点をする。志望者が数十人程度の編入試験にそれほどまで手をかけているとも思えない。きっと教授達はさっさと終らせたくてうずうずしているだろうと僕は考えていた。もちろん面接の先生方は慣れたものでそのような感情を全く表に出さなかった。緊張感漂いながらも、こちらの緊張を解いてくれようと面白い質問をしてくれる先生。あまり質問はしないが視線の厳しい先生など一流の頭脳を持った先生と対峙して割と楽しくさえあった。
面接が最後の試験だったので、残りの人が終るまで待つだけとなった。あらかじめ持ってきていた小説を読みながら、お土産をどこで買おうか考えているときだった。「受験番号◯◯の人はもう一度試験会場に行って下さい」となんと2度目のお呼びがかかってしまった。不安な気持ちで再び先生と対峙する。
2度目の試験はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図(脳内イメージ)。僕はそもそも環境学部という理系とはまったく関係のない学部に在籍していた。そのため高校の物理や中ゼミでならった筆記試験に出てくるような問題はある程度解くことができるが、公式や法則が導かれる過程といような物理の本質を聞かれてもちんぷんかんぷんだった。そこを突かれて、わかりません、わかりませんの連発である。終ったときにはすっかり自信をなくしていた。
そんなこんなでいろいろな不安はあったが、なんとか合格することができた。
編入試験は試験時の現役学部生の数や、人数が少ない為、自分よりも勉強のできる人が一人いただでもぐんと合格率が下がるような運に左右されるところもあると。だが年末ジャンボやミニロトと違うところは自分の努力で当選確率があげられることである。受からなくても今まで通りかもしれない、受かっても合格した大学が自分と合わなくて、現状より悪いことになるかもしれない。だが自分の向かいたい道を進んでいれば、少なくとも後悔することはないだろう。

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