待ちわびた春

高校3年の春、志望校に見事にふられた私は、予備校への進学を決意した。そして予備校を卒業し大学に入学した春、私は2年間をかけた編入試験への挑戦を決意した。私は教育学部志望であった。突き詰めて考えると、「ヒトはなぜ学ぶのか」を知りたくて仕方がなかった。しかし、進学したのは文学部。比較文化という学問は、何でもできるという魅力がある一方で、専門的に極めるのは難しいという学問である。
 ここで言っておきたいことは、比較文化という学問に魅力を感じていないわけではない、ということだ。実際に、編入試験2週間前になって受験を取りやめようか本当に悩んだ。在学中であった大学でも、無事に3年次からの所属ゼミが決まり、楽しくなりそうな予感がしていたのである。でもその一方で、独学での辛い勉強やプレッシャーに押しつぶされそうな自分がいた。今思えば、楽しくなるかもという予感は、不安から逃げたいという気持ちからくるものであったのかもしれない。2年間も一途に目指し続けてきた編入試験。受けずに逃げるのではなく、迷いがあるなら受かってから選べばいい。そう心が決まってからは、今まで以上に集中できた。
 私は編入資金を自分で払うという条件で、親から受験の許可をもらっていたので、中ゼミには情報提供サービスのみの受講でお世話になった。英語と専門の勉強は、独学であった。それはものすごく苦しいものだった。幸いなことに在学中の大学では、英語の授業を必修科目として履修しなければならない環境にいたので、毎日英語には触れられた。厄介だったのが専門の対策である。ひとまず他学科の教職用の講義を履修し、基礎を習った。講義で挙げられた参考文献は全て読むようにし、志望校である北大の過去問を自分なりに分析して、頻出傾向にあったちくま新書からいくつかヤマを張り、読んだ(しかしヤマは外れた笑)。余裕のある人は絶対に情報提供以上のコースを受講するべきだと思う。
 志望校は北海道大学教育学部のみ。私のやりたい勉強をする環境のある場所。私の生まれ育った北海道。しかし、このことが私を悩ませた。「北海道に帰りたいから、北大を受験するの?」「違う、ヤリタイコトのため、夢のため。」ずっと考え続けたことである。
 編入は、一般によく知られた試験ではない。情報も少ないし、狭き門である。それに挑戦する原動力って何だろう?それは、夢を目指す気持ちではないか。大学生になる、大学に通うことは、当たり前のことではないのだ。その4年間を、大切にしなくてはならないのだ。やりたい勉強をやりたいだけやれる、最後のチャンスかもしれないのだ。編入試験合格後に、在学中の大学の友達が言ってくれた言葉。「あなたがやりたいことをやれると、私も嬉しいんだ。」この言葉を、これから編入試験に臨む皆さんに贈りたい。
 私はやりたいことを思いっきりやるために、春から北大の3年生になる。でも、今の私を作ってくれたものは、高校3年生の春に挫折した私であり、予備校時代の必死だった私であり、在学中の大学で悩みながら手探りで夢を目指した私である。後悔なんて一つもない。友達や環境に恵まれ、在学中の大学での学生生活も楽しいものであったから。
 最後になってしまったが、中央ゼミナールの方々、応援してくれた全ての人に、心からお礼を申し上げたい。                         

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