後悔しない選択を持って!

 振り返れば去年の2月、私は中ゼミの体験記集を読むことから本格的な編入対策はスタートした。私が編入試験を志したきっかけは、浪人しても思うように成績が伸びず、志望大学である電気通信大学(以下電通大)に合格できなかったからである。
 私は附属高校に通っていて、そのまま大学へエスカレーター式で進学するつもりだったのだが、英語の基準が足りなかったため進学できなかった。AO入試なども考えたため本格的に受験勉強を始めたのは3年生の12月である。ちなみにそのとき数学のマーク模試の偏差値は25だった。点数は10点台だったことを今でもよく覚えている。
 現役のとき附属の大学に一般で出願したが、もちろん不合格。私は併願校も全滅して浪人が決まった。その時の私はポジティブで、浪人するのだからと前から気になっていた電通大に絶対に入ってやると思った。
 浪人の12月、私は志望校を諦めかけていた。思いのほかセンター試験が難しく、文系科目がてんでダメな上に理数科目の伸びが宜しくない。まさに、浪人での私立から国立への志望校変更は本末転倒だった。
 私大受験が終わった頃、私は魔法の言葉と出会った。それが「3年次編入学」だった。厄介だったセンター試験がなく、国立2次試験のように3科目で得点をとればいい。マーク試験のように大量の問題を短時間でこなすよりも、じっくりと考えて記述で答えを出す方が得意な私にとって有利だと思った。
 大学に入学してからは、とりあえず部活と勉強の両立をして思いっきり楽しんだ。塾の先生をやることで中高の勉強をやり直した。たくさんの学生に教えることで理解することと身につけることの違いを学んだ。
 大学1年の11月になると、調布祭で研究室公開が行われた。私は知能機械工学科の研究室に行き、やりたかった人工知能をやっている研究室を探した。人工知能の中でも実際にやっているテーマや重要なキーワードを知り、一人でもある程度は調べることができるようになった。
 2月になると、本格的な編入対策を始められた。中ゼミに入会したのもこの頃である。通信サポートの編入数学をみて、基礎から徹底的に学べると思った。物理や英語は自分で勉強して、どうしても行き詰まったら教授に聞きにいくことにした。
 電通大は数学・英語・物理で、それぞれ120、90、90点の計300点が満点だ。数学の配分が大きいので、とにかく優秀な受験生たちと数学で差がつかないよう確実な得点力を身につける必要があった。調べたら5人ほど電通大OBによる編入ブログがあったので、その方々の勉強方法や参考書を使ってある程度の勉強を進めてきていた。
 電通大OBによる編入ブログがあったとはいえ、中ゼミから公開されている体験記に電通大編入合格者の記載がなかった。粕谷先生から埼玉大の合格者が多いという情報を頂いたため、電通大と埼玉大の併願を決意した。中ゼミの合格体験記は国立理系合格者のものはすべて読んだし、特に筑波・千葉・埼玉大の編入体験記は有益な情報を掴んでやるというくらい集中して読み込んだ。
 通信サポートの数学を受けて、一番印象に残っているのは分数関数の不定積分だ。分数関数ばかりの問題なのに様々な要素が盛り込まれた最高の教材だと思った。最初は3時間しか手をつけられなかったが、2回目は5時間以上かけて添削による誘導を使ってじっくりと解いていった。計算と記述力の向上を実感した。
 物理や英語は塾のための予習やたまにやる大学受験の復習程度だったが、まとまった時間が取れるときには「セミナー物理」の熱力学を隅から隅までやって、『物理学演習(鈴木勝著)』をやった。過去問を解いてみて、わからなかったら『基礎物理学演習(後藤著)』で類題を探した。
 大学2年生の5月、埼玉大の編入サークルの方とお会いした。先輩方はとても親切で、過去問の解答例を頂いた上に編入におけるアドバイスや面接のことを教えていただいた。先輩曰く、数学は満点近く取れないと合格しないらしい。計算ミスがあったとしても、小問2問程度でないと厳しいことを知った。なので、微分方程式だけは「基礎解析学コース微分方程式」1冊を2週間かけてこなして完璧にした。
 5月末になると編入試験での頻出分野を一通り終え、編入の基礎学力は身についてきたので、志望理由書をまとめたり、面接練習をした。春休みほど勉強時間は取れていなかったが、面接対策や面接での口頭試問できかれる専門知識を養う勉強ができたので、2日目の面接で落ちる心配はほとんどなくなった。
 試験前日、私は12時間勉強していた。6時間数学の過去問・類題演習にあてて、残りの3時間はそれぞれ英作文・要約対策と物理過去問・類題演習にあてた。途中で運動したくなったので、30分程度快走したらすっきりした。0時までには寝て当日はスケジュール通りに過ごせるようタイムテーブルのようなものを手書きで作った。
 試験1日目、到着が早すぎて会場があいていなかった。そこでばったり会った人と緊張をほぐすために会話した。後にその人と私は合格し、その人は東工大の編入試験に合格することになるとは思わなかった。
 数学は8割とれた実感があった。線形代数は難しいがある程度は得点できたし、微分積分は江川先生の問題をきちんとやっていたので得点できた。複素解析は選択を迷ったが、私は線形代数の方が得点できそうに思えた。
 物理は4割程度しか取れなかった。過去問の傾向を追いすぎていたためか、まさか力学で減衰振動のような問題が出ると思わなかったし、熱力学で逆カルノーサイクルと別サイクルをあわせたものが出るとは思わなかった。さらには、電磁気学でローレンツ力はまだしも化学的な問題が出るとは思わなかった。
 英語の得点率はなんとも言えないが、英作文は素晴らしく書けたし、読解も必要なことをかけたと思う。まさか要約から和訳になるとは思わなかったが求められることは同じようだ。専門用語が出なくて本当に助かった。
 試験2日目、面接や専門試験のできは可か不可と聞かれたら可といった結果に抑えられ、大失敗することはなかった。幅広い勉強をしていたので、なんとかいつも通りの成果を出せたが、制御を選択して伝達関数が求められなかったのに後悔はあるが、複素数を数学だけで乗り切れたのは救いだったかもしれない。なお、熱力学はほぼ完答できた。
 結果がでてから思ったが、面接や専門試験は最低限できれば差がつかない気がする。それよりも筆記試験でいかにして取れるかが大切だと思った。筆記ができなければ落ちることを覚悟した方がいいと考えられる。私は発表直前は電通大に関しては不合格だと思っていたのだが、合格を知って筆記で差がついたのだろうと思った。電通大の試験が終わったあと、1週間後には埼玉大の試験がある。大学の講義はもちろんあるので、電通大の試験前5日ほど休んだ分の遅れを取り戻しつつ、編入対策(内職)を進めていた。試験対策は1ヶ月半前には終わらせていたので、あとは計算練習だけだった。
 埼玉大は数学が筆記試験だ。数学だけだからこそ。高得点が必要であり、合格者いわく満点近く取らないと合格しないというので1ヶ月半前にはすでに過去問の解答作りは終わらせていて、過去問でほぼ満点近くの点数が取れるようになっていた。
 不安があったのは微分方程式での計算ミスだ。微分演算子の利用は公式がいくつかあるが、それで計算ミスがでないよう微分方程式の本1冊を2周やりこんだので、直前まで同じ問題を解くだけだった。微分積分は電通大前にずっとやってきていたので、逆三角の微分と積分をもう一度やり直しただけだ。線形代数は3×3の対角化をミスしないよう練習しただけだった。
 埼玉大の試験日、3番目に会場に到着した。スペースがあったので。そこで予定通り江川先生のすぐわかる問題集でチェックしていた問題をやり直した。計算ミスがない江川先生の問題集は本番には強みになった。周りには勉強する人としない人がいたが、豊橋技科大と試験日が被っていたため、高専生の一部層は技科大に行ったのかもしれない。それでも機械工は30人受験生がいて合格者は5人だった。
 試験内容は①微積分学②線形代数・ベクトル解析導入部分③微分方程式と、②の出題傾向が変更された。本番では③の同次形を計算ミスしたが、それ以外は完答できた。用紙がA4より一回り大きなサイズだったが、計算過程を書いていたら下まで埋まって驚いた。来年の受験生には線積分・面積分には注意してもらいたい。
 試験が終わってもう9ヶ月以上経つ。今、編入試験を受けて合格した満足感とこれからの不安感を持っている。合格したとはいえ、編入試験を受けた後悔もある。編入試験を受ける決意は生半可ではつとまらない。半端なくらいならやめることを勧めるだろう。自分にとって編入が正しい選択なのか私にはわからない。
 この体験記を読んでいる方はどうしても合格したいという決意を持って勉強している方だと信じている。だからこそ、後悔しない選択を持ってそれを曲げずに進んで欲しい。この体験記に載せた細かな情報も有効に活用してくれれば幸いである。

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