諦めず、足掻いてください

私が編入という制度を知ったのは、おそらく1年の秋ぐらいだったかと思う。大学受験に失敗し、不本意ながら電車に揺られていた時期のことだ。

法学部に入学した私は、そのころにはすでに法律に対して失望し、興味が失せ始めていた。電車の心地よい振動とともに私の頭に浮かんでくるものは、退学とかそういったことだった。その鬱屈した気持ちが、編入へのモチベーターとなった。

今の大学を辞めたい、それまで漠然と考えていたものが形になりつつあった。それに至る要因には、上に述べたような法学部への興味がなくなったことのほかに、周りの人物との折り合い、通学時間の長さなどもある。そういったものが、私の心に降り積もり、耐え切れなくなったのである。

しかし、退学してその後は…。そういった茫洋とした将来に不安を感じていたのも事実である。だからこそ、編入を選んだ。とはいえ、在籍していた大学を休学しての受験だったため後がないというのには変わりがなかったが。

経済学に興味を持っていたことから、経済学部を受験することにした。経済学に興味をもったきっかけについて話す必要はないだろう。まあ、友人が経済学部だったからとかその程度のことである。逆に云えば、その程度の興味でも受験を突破できるくらいには経済学は取っ付きやすいのである。

私は大学を休学して、中ゼミに通っていた。他人よりは時間はある方だったが、学費等を支払うために夏までバイトしていたため、確実に合格する程度の時間があるとは感じられなかった。また私は私の時間を全て受験だけに捧げることを拒否し、趣味他にも時間を費やした。実質的な勉強時間は平均的な中ゼミ生よりも少ないかもしれない。それでも私が合格したのは、効率的に勉強したからではないかと思う。

「受験は要領」と云う。まさしくそうである。それは合格の近道があるとか、ヤマを張るとかそういうことではない。真っ当に勉強していくことである。基礎から積み上げることが、結局一番効率の良い勉強法である。アリストテレスの云う「学問に王道なし」とはそういうことだ。

私の受験は、8月にある名古屋大学情報文化学部から始まった。当初受験する予定のなかった学部であるが、9月の名古屋大学経済学部の前に一校確保しておきたかったので受験した。

本番では数学が全然出来なかったため不合格を確信したが、蓋を開けてみると合格していた。面接も乗り越え、無事一校確保することが出来た。この学部は数学に関しては傾向と思われるものがないため、注意が必要である。一方、小論文と英語は簡単であるため私のような文系学部出身の方はこちらで点数を稼ぐべきである。特に英語に関しては十分に満点を狙える難易度である。一般試験よりも簡単である。

この時期に試験を行う大学は他に広島大学経済学部、北海道大学経済学部などがある。北大は滑り止めとして受けるのには向かない大学なので、私のような目的で受験するとなると名古屋大学情報文化学部か広島大学経済学部の二択になるだろう。さて、ここで両校を比較してみると、前者は学際系であるのに対し、後者は完全な経済学系である。そのことは試験にも反映されている(過去問を参照)。それぞれメリットデメリットはあるが、どちらを受験するかは各々の好みである。

以下は私の意見である。広島大学経済学部は試験がこの時期にしては珍しく近経を出題してくる。そのため、経済学系出身の方、または独学で或る程度勉強した方は腕試しとして受けるもの良いだろう。一方、名古屋大学情報文化学部は学際系ゆえ、経済学系の問題は出題されない。あえて云えば、それまでの教養の実力差がでる試験である。自信のある方はこちらの受験を薦める。何と云っても、旧帝国大学である。ネームバリューは抜群、ここを確保することができれば、これからの試験に好影響を与えることは間違いない。(実際、名古屋大学は良い大学ですよ。キャンパスは綺麗ですし、名古屋の街も良いです。ご飯もおいしい)

その後、名古屋大学経済学部も受験した。既に情報文化学部に合格をいただいていたので、気持ち的にはずいぶんと楽な試験であった。試験問題は例年通り小論文と英語。難易度も例年とさして変わらないであろう。やや簡単かな。

この試験は時間がものすごくあるので、集中が切れやすい。私としては、大問をひとつ解くごとにお手洗いに立つのが良いと思う。一旦頭をリセットできる。そんなに頻繁に行って合否に影響しないかと危惧する方もいるだろうが、全く関係ない。

試験の手応えはかなりあり、試験中にすでに合格を確信していた。振り返れば、合格を確信した試験はここだけであった。

さて、私は当初、名古屋大学・神戸大学・大阪大学・京都大学を受験するつもりであった。しかし、神戸大学の出願に失敗し、名古屋大学から時間があいて本命を受験することになった。志望理由書などで大変だと思うが、早め早めにして余裕を持って出願して欲しい。(出願書類がそのまま返ってきたらものすごく焦ります)

失敗してしまったのは仕方ない。頭を切り替えて、10月には本番の感覚を忘れないために、京都・大阪・神戸・東北・横国など様々な大学の過去問(中ゼミに入学したときにもらえる過去問集、遠山先生が配布している計算問題はほとんどやらなかった)を解いていた。計算ミスは命取りになるので、面倒でも手を動かすべき。

11月は試験ラッシュである。大阪大学の試験は、傾向が大きく変わり試験中にものすごく焦ったことを覚えている。阪大は例年①ミクロ経済学、②マクロ経済学、③経済史、④数学(統計など)の大問4つの構成であった。しかし、今年は①のミクロ経済学がほとんど数学になっていた。割合としては全体の5割ほどが数学である。完全な理系偏重の試験と化していた。それだけではなく、③の経済史も大きく傾向が変わっていた。もちろん手応えなどあるはずもなく、失意の中新幹線に乗った。だが、何故か合格していた。阪大は筆記だけではなく、面接もあったので京大が終わってから本腰入れて対策を始めた。本番では簡単な統計学の質問に答えられず先生方に失笑されるなど、炎上した。なぜ合格したかは、今でも不明である。そのため、たとえ炎上しても理性を持って退室するまではちゃんと受け答えをするのが大事である。(その他に自分の手応えほど当てにならないものはないということを痛感した)

上洛する前日に阪大の一次の結果を知ったので、高揚した気持ちで京都大学を受験することができた。試験については、昨年を踏襲したような問題が出題された(詳しくは過去問ファイルを参照)。経済学に関しては特に云うことはないだろう。多少厳密さが求められる(特にミクロ)問題ではあったが、基本的には例年の難易度である。中ゼミの授業をきちんと理解していれば問題ないだろう。英語は、昨年出題された英作文が登場。私は去年が特別だっただけで、今年は出ないと高を括っていたので、問題を見た瞬間に絶望的な気分になったことを憶えている。私はエッセイではなく読解の方を選択した。おそらくエッセイの方が採点が厳しいような気がする。エッセイは内容も見られるため、英作文に自信のない方は読解を選択することを薦める。英文和訳で出題された文章は、経済学とは直接の関係がない文章であった。どちらかというと一般試験に近い出題である。難易度はさほど高くない。

英作文が出題されたため、試験時間に余裕はなかった。焦りながらペンを走らせていた。最後までペンを走らせたことが、結果的に合格点まで積み上げてくれたのだろう。

最後になるが、私は中ゼミに来て良かったと心から思う。それは情報が得られる、授業が受けられるといったことだけではなく、志を同じとする友人に出会えたからである。

受験は孤独な闘いである。編入はマイナーな試験であることから、なおさら。またその特性から、大学の友人にも話しにくいかと思う。中ゼミはそのような人たちの居場所でもある。

私自身、独りでは合格できたかどうかわからない。勉強だけではない。勉強に詰まったときに、一緒にカラオケなどに行きリフレッシュできる友人がいたからこそ、ここまで勉強してこられたと思う。

合格するのは簡単ではない。しかし、決して不可能なことではない。私でも合格できたのだから、努力することを惜しまないあなた方ならきっと合格に手が届くだろう。

諦めず、足掻いてください。

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