基礎と反復と素直

私が編入学試験を受けようと思ったのは、大学に入って1ヶ月が経ったころです。友達のなにげない話の中で、旧帝大でも編入学試験が行われていることを知りました。その時、在籍大学への欲求不満があったので、編入学について自分で調べ始めました。中ゼミという予備校があることは、グーグルで検索して知りました。ほかにも「京都中央ゼミナール」( 中央ゼミナールとは無関係)という予備校もみつけて、どちらを利用しようか迷いましたが、それほどお金のかからない中ゼミにすることにしました。
 一浪の末、第4志望の在籍大学にしか受からなかったことで、私は学力に関して自信を失っていました。大学入試の失敗の原因は何かと一人でいるときは、考えていました。「これが、原因だ」と思っていたのは、高校2年のときに運動部を途中でやめたことです。というのも、高校の担任の先生が「運動部でがんばった人はいい大学にいく人が多い」という話をしていたからです。ああ、僕は志望大学には行けないのかも、と心の片隅で思い始めて、現実にも成績がだんだんと落ちていきました。浪人時代もほとんど、学力は伸びませんでした。
 このマイナス思考がなくなったのは、斎藤孝さんの『退屈力』を読んだからでした。その中にこんな内容の記述がありました。上達するコツは基礎を徹底的に反復することで、運動部でがんばり結果を出した人は、それが体に染み付いている。だから、勉強でも、上達できる。逆に、運動部での経験がない人は、基礎的なものだけを何度もやるということに不安を感じて、いろんなもので手をだしてしまう。結果、反復が疎かになって、上達もしにくい。
 私は、現役のときも浪人のときも、たくさんの問題集を無闇に解くことは失敗の原因と思って限られたものしかしていませんでした。では、反復はしていたのかと改めて考えてみました。反復は大事だというのは、中学でも高校でも言われ通したので、もう頭にしみついていました。ただ、実際していたかというと、自信がないことに気づきました。自分は結局反復をしていなかったから、入試に失敗したんだと確信しました。では、反復をし忘れないようにするにはどうしたらいいかと考え、日記をつけることにしました。具体的には、その日その日にやったテキストや問題集のページ数を記録していったのです。こうすれば、自分が反復しているかいないかはっきりさせることができると思ったのです。
 私は京都に住んでいたので、中ゼミのサポートコースを利用しました。神戸大学の入試のために必要なTOEICのスコアをだすために、学内のTOEIC講座を1年生の秋に3ヶ月だけ受講しました。2年生になってからも受講し続けなかった理由は3つあります。一つ目に、お金がかかるということ、二つ目に、論文の勉強のために時間を割きたいと思ったこと、そして、三つ目に、1年生時に受けたTOEIC講座の復習がほとんどできていなくて、また講座を受けても意味がないと思ったことがあげられます。
 TOEICの公開試験は2年生の5月と7月に受けました。結局、得点は5月の方が高く、スコアも540点と、それほど高いものではありませんでした。そこで、中ゼミの先生に相談したら、その点数でも受かっている人がいるとおっしゃってくれて、神戸大学を受けることにしました。
 私の志望学部は在籍大学と同じ、法学部だったのですが、メーリスで、「力試しに受けてみては」と勧められて、名古屋大学の情報文化学部も受けることにしました。
 論文の問題集は「法学概論」「憲法」「政治学」「法学時事論文」の四つを平行してやっていました。とくに、「法学概論」の巻末にあった定義集は、見ないで頭の中で言えるように、何度も練習しました。
 旧帝大の英語の試験は和訳です。これについては、中ゼミから送られてきた問題集を何度も解きました。最初ハイレベルの冊子を送ってもらったのですが、1回目を解くと歯が立たないように感じて、レベルを下げてもらいました。5回目の添削終了後に、ハイレベルの問題冊子に戻してもらいました。1問につき4回くらいは繰り返し解いたと思います。あと、一緒についていた和訳の問題集もほとんどの問題を4回くらい繰り返し解きました。単語帳は速読英単語必修編とTOEIC講座受講時にもらったオリジナルの単語集を使いました。赤フィルター等で隠してちゃんと意味がいえるか確かめることを一週間以内に4回、そして、その後は1カ月おきにやりました。
 名古屋大学の面接練習は、情報文化学部も法学部も4回やりました。私は、口が達者とはいえないので、何度も何度もつっかえてしまって、あせりましたが、本番では特につっかえることはありませんでした。
 大阪大学は志望理由書ではなく、小論文をあらかじめ送ります。行政改革について書き、何度か先生に添削してもらいました。ちなみに、神戸と京都の法学部については志望理由書は要りません。
 試験の結果は、まずまずという感じでした。京大は間接的にやめとけと先生方にいわれたにもかかわらず、受けました。京大の論文試験で、民主主義国家の要件に、福祉国家であることと書いたことは、決定的なミスでした。大阪大学は、決定的にこれがだめだったと思うところはありませんでしたが、不合格でした。
 神戸の失敗の一番明らかな理由は、「法学入門」(田中成明著)という中ゼミから送られてきたテキストを熟読することを忘れていたことでした。熟読していなかったために、「法学概論」試験の1問目がまったく書けませんでした。
 名古屋の失敗の原因は、正直言ってよくわかりません。というのも、面接で落ちたからです。これがいけなかったかなということはいくつかあります。ネクタイをしていかなかったこと、第二志望ゼミの担当教員の専攻を「行政法」と言ってしまったこと(正解は「行政学」)があげられます。私の面接はたぶん圧迫面接という形式でした。予想以上に圧迫感はなかったのですが、自分の言っていることを否定するようなことをやわらかく言われました。
 最後になりましたが、これから編入学の試験を受ける人には、たとえ、めんどうと思っても、先生の言うことを素直に実践し、そして、基礎を何度も繰り返すことをお勧めします。あと、私と同じように、大学受験で一浪した人には、勉強の記録日記をつけることをお勧めします。あと、余計なお世話かもしれないですが、1ヶ月おきくらいに、先生に、私はこういうテキストや問題集を使っているんですけど、これで充分ですか、など、確認の質問をしてみると、独りよがりにならなくてよいと思います。とくにサポート生の人には強くお勧めします。

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