我が子より若い学生さんと

私は、中央ゼミナールの夏期単科コースを受講しました。もし、夏期単科コースを受講していなかったら私の合格は無かったと思っています。この場をお借りして、中央ゼミナールと先生に心よりお礼を申し上げます。

実は、今から15年も前のことになりますが、大学院で心理学を学びたいと思いながら諦めてしまったことがあります。昨年1月末、前職を退職、次の仕事を探す過程で履歴書を書きながら人生の来し方をふり返り、行き方を模索するうちに、私は挑戦する勇気が持てず安易な道ばかり選んでいた過去の自分に向き合わざるを得なくなりました。あの時色々理由をつけて諦めてしまったけれど、年齢的にもこの辺が限界?勇気を振り絞って受験勉強を始めようと決心したのです。まあ、挑戦してダメだったなら諦めもつくだろうと。

当初は全くの独学でした。研究分野は、中高年の心の危機と自我同一性の再構築を考えていました。受験勉強を始めてみると、大学院に入れたとしても基礎が無いのに研究が出来るのかしらという疑間もわいてきて、熟考の末目標を発達心理学で有名なお茶の水女子大学・生活科学部・人間生活学科・発達臨床心理学コース3年次編入に定めました。この時期に6月。(6月8日に中ゼミで実施された大学(編入・大学院・社会人)フェアに、お茶の水女子大学の担当者も出席していたようだったのですが、既に終わっていたので、7月13日のオーブンキャンパスに参加しました。この時、授業で便われている教科書等が実際に閲覧できるようになっていました。)

某通信添削会社から取り寄せた資料をベースに、用語の学習と過去問を解く勉強を少しずつ進めていましたが、資料を読んでも文章スタイルが難しくて理解出来ません。心理英語の論文調の難解さにも苦しめられました。用語や知識を頭に詰め込もうとしても、断片的知識を、受験に対応できる体系的なものに高めるには何年かかるのだろうと不安が募りました。すぐに行き詰ってしまいました。そこで、大学編入や大学院入試で定評のある中央ゼミナールの夏季コースに参加してみることにしたのです。中ゼミは評判通りでした。5日間の『基本マスター!』のおかげで、何をどのように勉強すればいいのか初めて勉強の方向性が見えたような気がしました。

筆記試験対策

心理学に関しては、①『心理学』(東京大学出版会)を、発達心理学に関しては、②「新時代の保育双書 実践・発達心理学」((株)みらい)を読みました。②はお茶の水女子大学の1、2年次の発達心理学の講義で使用されているテキストだとシラバスで調べました。自分で解いた解答はファイル式のノートにまとめました。用語は、エクセルで自分なりの辞書にまとめました。①と②で足りない知識は、③『心理学辞典』(有斐閣)で調べました。

お茶の水女子大学では過去3年分の問題しか公表していないので、中ゼミでコピーさせていただいた過去問13年分は本当に貴重でした。私はこれを解いていくうちに、同じような問題が何度も繰り返し切り口を変え出題されており、そこから大学側が編入生に知っておいてもらいたいと考えている事は何かという事がなんとなくわかるようになってきました。つまり、そこさえ押さえておけば試験は論述ですから、自分に引き寄せて解答を書けば何とかなるかもしれないと思えるようになってきたのです。

同大学の過去問を見ると、人の発達過程に関する出題が非常に多いです。フロイト、ピアジェ、エリクソンなどは必ず押さえておくべきでしょう。そこで、エリクソンの『自我同一性 アイデンティティとライフ・サイクル』(エリクソン)小此木啓吾編などを読もうと思ったのですが、一次試験前に時間切れで、間に合いませんでした。一次試験(10月5日)では、やはり本年度も人の発達過程について論述させる問題が出され、試験会場でなかなか思い出せず苦しむことになりました。試験が近づくにつれ、あれもやっていないこれも覚えてないと不安が募りましたが、当日は、腹をくくって臨むしかないという気分でした。

また、統計に関して毎年必ず一問くらいは出るので、YOU TUBEで一般公開されている心理統計の授業を探して視聴しました。これは非常に役立ちました。

英語に関しては、本年度からTOEICのオフィシャルスコアを提出すればよいことになりました。面接時の印象ですが、同大学は英語の能力をとても重要視している印象を受けました。

志望理由書

勉強していくうちに、中高年の心の危機と自我同一性の再構築というテーマを研究したいということが明確になっていたので、志望理由書は比較的すんなり書き上げることが出来ました。しかし書いては読み直し、また書き直すという作業を5、6回はしたと思います。

面接対策

一次試験に合格(10月16日発表)後、自分なりの想定問答集を作りました。当日(10月30日は、発達臨床心理学コースの担当講師陣ほぼ全員が面接に立ち会っていたようです。受験生は一人。面接時間は一人10分、私が受けた質問は以下の6つでした。

①志望理由書は読ませていただきましたが。もう一度自分の言葉で説明してください。

②当大学を志望した理由は何ですか。

③最近読んだ本の中で感銘を受けたものは何ですか。

④自分は臨床心理士に向いていると思いますか。

⑤もし合格したらどんな分野を研究したいと考えていますか。

⑥英語はこれまでどのように勉強してきましたか。

 

④は想定外の質問で、自分が臨床心理士に向いていると自分の口から説明することに戸惑いがあり、きちんと説明出来ませんでした。また、ふと目の前の教授陣は全員心理学者で、私の一挙手一投足を心理学的に観察しているのだと思ったとたん突然緊張が始まり、声が震えたり裏返ったりする始末。面接室を退出し扉を閉めたとたん首がガクッとくずおれるような気がしました。

合格発表(11月7日)は、大学のウェブサイトで確認しました。不合格だった時にどうやって自分を慰めよう、来年再挑戦するにしてもモチベーションを維持できるのか、そんなことを考えると合格発表予定時間の正午から一時問あまりたってもPCを開くことが出来ませんでした。実は、不合格だった場合を考えて、と言うよりほぼそうなるだろうと思い、次の就職先を決めておいたので、先方に合否の結果を報告しなければならず、やっとの思いでウェブサイトを開きました。そこに自分の受験番号を見つけた時は正直信じられない思いでした。誤って…次試験の結果のページを見てしまったのだと思ったほどです。画面をスクロールし、それが最終合格発表だと確認したとき、嬉しさと驚きで指が震え始めました。

受験勉強中ずっと、50歳を過ぎた私を大学が受け入れてくれるのか終始不安が消えませんでした。また、新しい勉強を始めても職業に結びつけることが出来るのか、正直今でも確信が持てません。勉強してもなかなか覚えられず落ち込んでいた時、学校でカンセラーとして働いている同世代の友人からこんな励ましの言葉をかけてもらったことがあります。「この歳になったからこそ大学や大学院できちんと勉強したいことがたくさんあるものだが、いざ受験しようと思うと敷居が高くてなかなか一歩踏み出すことが難しい。だから一歩踏み出したあなたには、そういう人たちの気持ちも背負って頑張ってほしい」と。くじけそうになった時私はこの言葉を思い浮かべるようにしました。私の受験は、まだ会ったことのない仲問たちの気持ちに後押しされての挑戦だったと言えるかもしれません。

今、的確なご指導を下さった中ゼミ、勉強するチャンスを下さった大学、励ましてくれた友人や家族に対する感謝の気持ちで一杯です。また、ハードルを一つクリアした達成感も味わうことが出来ました。我が子より若い学生さんたちと共に勉強する事は、自分の知力・体力を考えると大変な事だと思いますが、勉強は楽しく比較的楽観的な気持ちでいます。学部で2年、その後当初の目標通り大学院を目指します。自分のこれからの人生が私の研究テーマ「中高年の心の危機とアイデンティティの再構築」になります。

最後に合格を祝ってある友人が送ってくれた聖書の言葉を記しておきます。かなりの意訳ですが、歳を重ねた後新しいことを始めようとする時、それまでの人生で経験してきたことで何一つ無駄なことはないというような意味でしょうか。“We know that in all things Gods works for good with those who love him, those whom he has called according to his purpose” これから大学編入や大学院を目指す社会人の皆様にとっても励ましの言葉となりますように。

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