楽しみながら乗り切った半年間

はたして合格できるのか。転部や編入でやりたい勉強ができ、なりたい自分になれるのか。あえて現在のレールから道を転ずる価値はあるのか。悩まない人なんて、いないはずだ。何かを決定して進むことは、また別の可能性を放棄することでもあるから。特別有用なノウハウはないけれど、私の体験が受験する方々にいくらかでも参考になれば幸いだ。
 自分は、長らく中規模病院の事務として勤めていたが、薬剤師への転職を考え、薬科系大学への編入を志した。
 ・・・と書くと唐突に聞こえると思う。ただ、昔むかしに理系枠で大学教養部へ入り、成績順で希望の学部へ移行する際、薬学という進路を考えはしたものの移行学部の選択肢がないくらい成績は悪かった、という経緯がある。その積年のリベンジと、患者を直にケアする医療従事者でありたいという思いが志望の理由である。
 「試験まで半年しかない」「十数年前ぶりの受験は大丈夫か」「そこまでする意味があるのか」云々、不安は頭をよぎる。一方で、「集中的、効率的に取り組めば勝てる」「暗記は辛いが、今ならむしろ論理的に解を導ける」など、自分を信じられる材料も大いにあった。編入試験は概ね科目も少ないので、あとは作戦を立てて忠実に実行するのみ。
とはいうものの、薬科大の編入試験の過去問データは乏しく、基礎のおさらいから始めるにしても情報や問題がほしい。模試も受けたい。中ゼミの存在を知り、サポートの申し込みをしたのは、職場を退職する5月末だった。矢も盾もたまらず、通信サポートを受けながら独学の受験生活を開始。自分が受講したのは化学・生物・理系小論文だったが、3週間ごとの課題提出と日々の独習とでメリハリをつけながら勉強した(志望校は社会人特別選抜の枠で、英語はなし)。
 こう書いてしまうと単純だが、喜びや悲しみを分かち合う仲間などおらず(中ゼミの受験体験記集は励みになった)、スケジュールは自己管理、一喜一憂しながら自分をなだめすかしてコツコツ努力を積み重ねる日々だった。並行して自己分析も行い、「絶対受かる」という決意と信念で臨んだのが推進力になった。自己分析した内容は、もちろん志望理由書を書いたり面接の応答にも使えるが、メンタルコントロールしたり目的意識を高めるのにも有効であるので、学習の進捗管理と一緒に定期的に行うといいだろう。
 ひとつ述べるべきは、強迫感さえあった現役受験生の頃よりも純粋に学習を楽しめたということだ。乱雑に暗記で詰め込んだ頃と違い、筋道を立てて考え正答できるのは、亀の甲より年の功ということだろうか。学ぶことの楽しさを味わいながら気概で乗り切った半年間は貴重な経験だったと思うし、何歳であっても意欲さえあれば勉強はできる、と確信を深めた次第である。

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