受験を楽しむ

 私にとっての編入試験は、苦しくて怖くて、一周回ってなんか楽しい刺激的な経験だった。私は大学を卒業して10年経過しており、全ての科目が1からのスタートだった。そのため、しっかりと学習計画を立て、確実に実行することに最大限努力した。ここでは、私が行った勉強法と、気持ちが落ちた時の私流の這い上がり方について述べたいと思う。
<英語の勉強方法>
 英語は「入試問題を解くこと」ではなく「志望分野の英語論文を読めること」を目標にした。必須単語(ターゲット1900)と熟語(ターゲット1000)は4月までに頭に入れた。4月以降は先生に選んでもらった問題集を3周し、日曜日は読売新聞の英語ページを訳し、授業で出された課題の復習を毎日徹底して行った。9月からは過去問、10月からは志望大学の先生方の論文を読むようにした。厳しめの計画にも思えたが、一番苦しかったのは単語を叩き込んでいた4月までで、それ以降は正直楽だった。単語がある程度頭に入った状態で授業を受けると、内容が入りやすく自信もつくので、英語に自信がない人ほど必須単語・熟語を1日も早く頭に叩き込むことをお勧めする。
 履修した授業は、佐々木先生の『理系の添削英語BS』『マーチレベル一般入試型英語演習』、伊藤先生の『英文和訳基礎徹底』、鈴木先生の『英語力アップの英文法』。英文法が曖昧だと思う人には鈴木先生の授業をお勧めしたい。分かりやすい説明に加え、大量の演習プリントで力がつく。佐々木先生の授業は長文英語のコツをたくさん教えてもらえるのでスピードや要点を見抜く力がつく。伊藤先生の授業は英語を深く楽しく学ぶことができる。複数の授業をとると課題に追われがちだが、その分再提出も含めてしっかり復習すれば確実に伸びるので、自分に必要だと思う授業を指導教員としっかり相談して決めるといいだろう。
<面接・小論文の対策>
 効果的だったのが読書である。獣医師の体験記、実験動物や家畜、人と動物の共生、最新の生命科学や命について書かれた本など、100冊以上は読んだ。書類審査や面接をする先生方は当然ながらその分野のプロなので、言葉選びや言い回しで勉強不足はすぐにばれる。1つのキーワードについて、1冊の本を読んだだけでそれっぽい発言をするのは非常に危険といえる。例えば、「動物実験」を行うことが必須だ、と述べる本もあれば、完全否定している本もある。「外来生物」に警鐘を鳴らす本もあれば、進化の過程と捉える本もある。様々な意見に目を通し、1つの問題を一度多角的にとらえることはとても重要な作業だと私は考える。様々な意見を踏まえたうえで、自分の考え方をまとめていけば、各問題に対する自分の意見に深みが出る。小論文や面接ではいかに自分の意見を伝えるかが重要になるので、専門分野に関わる主な社会問題に対しては、自分の意見を確立させるためのこうした過程を積んでおくといいと思う。これには理系小論文の長先生と、理系指導の粕谷先生にお付き合いいただいた。獣医師の社会的な役割や生命倫理の問題など、広く深く知り、考えることが出来たのでとても感謝しています。
<不安を感謝に変換し、受験を楽しむ方法を考える>
 今、これを読んでいる皆さんの中には、今まさに不安に押しつぶされそうな人もいるかもしれない。実際に私も、不安で怖くて逃げだしたくなった時が何度もあった。そんな時にいつも行っていたのは、不安な気持ちを周りの人たちへの感謝に昇華するということだ。恐らく、試験に挑む人全員に共通しているのは、「家族や周りの人の理解や応援があるからこそ試験に挑めている」ということだ。不安になったときこそ、そうした周りの人たちへの感謝を思い起こしてみてほしい。今の自分の状況がいかに幸せか気づくことが出来るだろう。おまけに、受験には必ず終わりがある。せっかくなので、限られた時間をがむしゃらに努力することを楽しんでみてほしい。
 よく「自分を信じて」という言葉があるが、私には不向きだった。どれだけやっても不安は拭えなかったので、自分ではなく「指導して下さった先生方」を信じていた。本番ぎりぎりまで足掻いていたし、試験前日は緊張しすぎて眠れなかった。それでも合格できたので、がむしゃらに、自分の納得するようにやってみてよかったと思う。受験は辛くて当然だから、それを楽しむ努力をしてみてほしい。そして、感謝を忘れず自分の納得するやり方で突き進んでほしい。そこまで必死に努力してきたことは、決して無駄にならない。人生の財産になるはずです。応援しています。

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