1.御礼
この度、かねてより志望していた京都大学経済学部・神戸大学経営学部に合格しました。(名古屋大学経済学部、横浜国立大学経済学部には不合格)この合格は、春より実用的で熱心な授業を行い、また温かい目で常に気にかけて下さった、坂東先生・中原先生を初めとする中央ゼミナールの講師の方々のお陰です。私の「人生」を高みに至らせて頂いたことに、心より御礼申し上げます。
2.イントロダクション
さて、この文章の位置づけは「受験体験記」ですが、そこから感じ取って欲しいことは「アドバイス」です。
しかしどのような「アドバイス」かと言えば、それはとても特殊なものになると思います。というのも、私がいわゆる「典型的な中ゼミ生」とは異なるバックグラウンドを持っているからです。
数々の合格体験記を読むと、その内容に感動すると共に、「この人はもともとどのくらい勉強ができた人なのだろう?」という疑問を持つことがあると思います。実際、その人がどういった状況にあったかを想像せずにアドバイスを受けると、自分に合わないといったことも起きてしまいます。そのようなミスマッチを防ぐために、私は自分のバックグラウンドを明らかにしようと思います。それは、少し特殊なものですが、その違いを理解したうえでアドバイスを吸収すれば、有効活用できるのではないかと考えるためです。
私は帰国子女で、英語を武器に慶應の付属高校に入学し、エスカレーター式に大学に進学しました。しかしそこで英語関連の団体の会長に就任し、全国を飛び回っているうちに、大学の単位取得がおざなりになってしまい、結果、2009年3月に同大学を退学となりました。一時期は就職活動を行い、短期間企業で働いたこともありましたが、「やはり経営関連の大学を卒業したい」と考え、4月より中央ゼミナールに通い、8月より放送大学に入学し受験に足りない単位を補って取得しながら、編入試験を志すこととなりました。しかし私は、9月に友人と共にNPОを立ち上げたために、それ以降はほとんど授業に出ることができず、中央ゼミナールのテキストを用いて独学で試験に臨むこととなりました。いわば、途中から通信の学生となったようなものです。
さて、そんな「不真面目」な私が、なぜ編入試験の難関である京都大学や神戸大学に合格することができたのでしょうか。それは、編入試験が、必ずしも画一的ではなく、また、皆さんが期待するほどフェアなものではない、という特性に私がマッチしたからである、という答が正しいように思います。つまり、編入試験は、出される問題が単に学力の幅広さを競うものではなく、かつ、試験「外」で問われることも多いという特色を持っているのです。
これは、試験の傾向が毎年、大幅に変わることからも予想できます。例えば、2009年度の名古屋大学経済学部では小論文のテーマが時事問題から経済の本質ともいえるようなものに変わり、神戸大学経営学部ではWEBマーケティングについての小論文が初出し、京都大学経済学部では例年出題されていた英語のエッセイが廃止されました。
つまり、広く経済・経営学の体系的な知識を得る勉強を行うと同時に、このような、予備校もが予想できないような(もちろん中央ゼミナールはそうした変化に対して敏感に授業内容を変化させていますが、それでも、)大きな変化にも耐えられるような力を、独自に蓄える必要があります。「ヤマをはる」という言葉がありますが、「昨年の問題がこうだったから今年も同じだ」という推量は少し危険で、どのようなテーマにも対応できるような幅広い対応力が重要なのです。私が合格を得たのは、こうした努力によるものが大きいと思います。
念のために付記しますが、これらの知識の必要性は、決して、上述の「経済・経営学の体系的な知識」の重要性を否定するものではありません。当然、中央ゼミナールの先生方が推奨する勉強を日々こなし、オーソドックスな問題に対応できる力を蓄えることが王道です。私が皆さんに紹介したいのは、あくまでも、それらに加え、各個人が試験問題の変化など、予想できないリスクに対応するために身につけるべきこととしてです。
3.メッセージ
では、編入試験では、いわゆる「経済・経営系の体系的な知識」以外に、どのような知識が必要とされ、それへの対処法にはどのようなものがあるのでしょうか。私は、4月にこの問いについて考え、「理論・事実に裏づけされた文脈」がその答になるという結論に至りました。
編入試験では、小論文のみならず、経済・経営学の問題の中にも、ある理論・概念・経済主体について、その実社会への影響を問うものが多くあります。その際必要なのは、実社会におけるある理論・概念・経済主体(大きな政府vs小さな政府、貨幣の成り立ち、古典派vsケインズ派、インターネット、NPOの勃興、環境問題、行き過ぎた資本主義など)の位置づけと、それにまつわる文脈(どのようなストーリーがそれに関して語られうるか)を、理論もしくは事実ベースで説明できる力だと思います。そのためには、ある問題の歴史的経緯や最先端の流れを、理論的枠組みと共に知り、それについてストーリーを組み立てて文章を書けるようになるための努力が必要になる。私はそう考えました。
では、どのような方法で、「理論・事実に裏づけされた文脈」を身につけることができるのでしょうか。
まず、中央ゼミナールの授業を用いて行ったことは、以下でした。
①時事経済・経営学の授業
授業で扱われるテーマについて、授業で教わる文脈を更に発展させて考える、ということをしていました。例えば、授業で扱うテーマを「ある一つの文脈から語る」というものでした。例えば、テイラーやフォードに代表される科学的管理法について、先生は「これら人間を労働市場における商品と扱い生産性の向上のみを考える労務管理方法は現代では見直しが進んでいる」という方向性を示されていました。これを覚えることは大切ですし、必須ですが、更に発展させ「なぜこれらが見直されているかと言えば、そもそも科学的管理法は現代の労務管理の基本中の基本であるからである。つまり、人間が共同体で効率的にモノを生産するには、効率化を目指した管理が大前提である」という逆の発想をしたり、「インターネットの発展がこの概念にどのように影響するか」といった応用的な問いを自分に課したりしてみるのも一つの方法だと思います。要は複数のテーマについて、過去・現在・将来の時間に、肯定・否定側の両面から「流れ」を捉えられるか、が勝負だったと思います。
②ミクロ・マクロ経済学の授業
ミクロ・マクロ経済学の授業では、基本的に経済理論を扱うのですが、たまに経済事象について扱うページが出てきます。それらのページは、とても大事だと思います。例えば、貨幣の成り立ちや、古典派とケインズ派の流れについての記述ページなど、理論に加えてなぜそのような解説ページを先生が設けたか。それは、「出る」からです。これらのページについては、特に文脈に落として理解し、復習すると良いと思います。
③添削英語の授業
私は中原先生の添削英語の授業と鈴木先生のエッセイ・ライティングの授業をとっていましたが、特に前者において、文章の背景になるような知識を先生が説明して下さるのがとても役に立ちました。特に、編入試験の英語の問題では海外の文章が用いられるため、海外でオーソドックスな歴史や経済の問題について扱う設問が多く、これらの知識なしでは和訳や解説といった問に対応できません。添削英語の授業では、特に自分が(あるいは普通の日本人学生が)あまり詳しくない話題(経済学と政府支出の関係、第一次世界大戦、軍備と戦争の関係、戦時中のEU構想、戦後の国連、各地の紛争など)について、特に注意を払ってノートを作ることが大事だと思います。
次に、私が授業外で習慣化し、受験準備期間から試験前日まで欠かさず続けていたのは、以下です。(笑えるでしょ?)
①ワールドビジネスサテライト
関東では平日夜にテレビ東京で放映されているニュース番組です。経済・経営系ニュースの紹介はもちろん、発生している事象についての理論的背景をエコノミストが解説したり、経済・経営学上の問題を取り上げる特集(市場対国家など)、最先端の企業の取組みを伝えたりしています。私は経営系の学部を志していたので、この番組を見て、企業の取組みの背景にある経営戦略をできるだけ理論化し、メモに書き留めていました。(そういうことをしなくても、ただ一日の終わりに眺めるだけでも十分効果があると思います)この種の番組は、そのまま見ると時間がかかってしまうので(一日一時間弱)、私はDVDプレイヤーに録画し、1.5倍速で聞き流していました。(もちろん最初は付いていけないので途中停止して考えたりもしましたが)
②新聞・サイト
新聞や新聞社のWEBサイトを通じて、最新の話題について情報収集していました。特に行なっていたのは、CNNの日本語サイト(http://www.cnn.co.jp/)や日本経済新聞の経済教室(平日の朝刊に掲載されており、主に経済の問題について専門家が解説しています)の閲覧、そしてTwitter(http://twitter.com/)の利用でした。最後のTwitterは驚かれるかも知れませんが、これは140字限定のウェブログで、無料で利用できます。普通は日記に利用する人が多いのですが、私は経済ニュースについて自分なりのコメントを書き込むのに利用していました。字数限定なので文章の編集力を身につけられますし、何より得た情報のエッセンスを解明するのに役立ちました。ただ情報をインプットするのではなく、自分の言葉でそれを記すというアウトプットを組み合わせることで、格段に吸収率が上がっていたように思います。(中央ゼミナールの添削制度と同じ方法です)ただ、受験期のウェブログは、個人的なことを書き始めると暗い内容になってハマってしまう人も多いので、注意が必要です。
③島耕作
ご存知、講談社「モーニング」に連載されているサラリーマン漫画です。主人公は松下電器(現パナソニック)をモデルにした「初芝」という企業に勤めており、課長から始まり、現在は社長に出世しました。この作品は情報提供メディアとしての傾向が強く、作者が膨大なリサーチの下に、経済界の問題をわかりやすくストーリーに組み込んでいることで知られています。私はこの作品の中でも、主人公が取締役となった時からの作品(「取締役島耕作」、「常務島耕作」、「専務島耕作」、「社長島耕作」)を繰り返し読み、環境問題・レアメタル・東南アジアでの労働力(国内工場の海外移転)・BRICsの台頭などの問題について理解を深めました。「漫画なんて(笑)」という人も多いかも知れませんが、漫画だからこそ、気軽に情報収集でき、かつ文脈を手に入れることができました。この作品で得た知識は、神戸大学経営学部の試験に利用しました。(事業統合の効果を問う問題に対して)
これらのツールは全て砕けたもので、馬鹿馬鹿しいと感じられた方には、日本経済新聞本体、Newsweek、JMM(村上龍主宰の無料経済メールマガジン)もオススメです。
さて、こうした授業外の情報収集を行う際に気をつけなくてはならないのが、これらに時間をとられ、「経済・経営学の体系的な知識」を得る勉強がおろそかになってしまっては決していけないという点だと思います。あくまでも、自分にあったツールを用いて、「理論・事実に裏づけされた文脈」を身につけるということが大事です。その際、インプットだけを重視するのではなく、中央ゼミナールの他の授業と同様に、アウトプットを用いて脳と手に定着させることが鍵になります。それはノート作りでも良いですし、私のようにウェブログに書き散らすという方法でも良いと思います。
4.まとめ
以上つらつらと書いてきましたが、結論は、「周りの噂レベルの話に流されずに、先生方の情報を参考に自分で考え、必要な方法を取り入れるべきだ」ということになります。自立した学習スタイルを持っている人こそが編入先の大学に求められ、編入試験というとても幅広く興味深いステージで成功を収めることができる。私はそう信じて、努力を続けてきました。
最後になりますが、これらの方法は、私という特殊なバックグラウンドの人間が採用したもので、決して中央ゼミナールの先生が認めるものではありません。ただ、私がいくら特殊に見えたとしても、この方法で、一定の効果があったということも事実です。皆さんも、目指す学校のハードルの高さや勉強量にひるむことなく、日々のこつこつとした積み重ねを行うことで、必ず高みに至ることができると思います。
