しつこさ

 平成27年3月7日、僕は筑波大学の入学試験に落とされてしまった。それは広島大学をはじめとして、筑波大学や東北大学といった上位国公立大学には結局入学することはできなかったことを意味する。思えば僕には、「プレ学期から勉強しているのだから大丈夫だろう」というような、最初から無理だとはわかっていながらも、ある種の欺瞞心のようなものがあった。そして、上述の大学に落とされてしまった僕の心に最後に残ったものは2年前と同様、やはり高いプライドだけであった。

 それでも、僕にとって、中央大学と小樽商科大学を合格させていただいたことはとてつもなく嬉しいことであった。特に嬉しかったのは、小樽商科大学を合格させていただいたときである。高校生当時の僕は理系であったにもかかわらず、2次試験で国語と英語に、数学を必須とした3科目での入試を行っていた文系の小樽商科大学には素晴らしいイメージを抱いていた。高校生のころからこうして憧れであった小樽商科大学の専門科目は、計算・記述ともに標準的なレベルの問題であり、勉強をしっかりした人でないと合格はできない。また、専門科目外では英語ではなく数学を選んだことが勝負の決め手であったのだと思い。一番好きな科目である数学に最後の最後で助けられた。ゆえに、小樽商科大学を合格させていただけたときの方が喜びは大きかったのだ。

 さて、これからは経済系学部への編入学を目指して勉強していたときの生活について述べていく。僕はプレ学期から中ゼミに通い始めた。今思うと、物事の飲み込みが遅い僕は、この時期から始めていたことによって、最終的に上記の2校に合格させていただけたのだと思う(それでも上位国立大学にはいけなかったが…)。自分の貯金を切り崩してまで入学したので、プレ学期では相当やる気があり、小論文は特に時間をかけて答案を練っていた。やがて本学期に入ると、専門科目が一気に増えて心身ともにかなりしんどかった。もともと先生に相談しに行くタイプではなかった僕でさえ、幾重にも理解しなければならない科目を前にすると、先生を頼らざるを得なかった。マクロ・ミクロ経済学はこの先の僕の進路で必要となり、また一番面白く好きな科目であったので、理解できない部分を作りたくなかった。B先生は、授業以外では女の子と仲良くしているイメージしかなかったが、授業になるとたちまち発言に説得力があったので、とても信頼できる存在であった。そんな先生には、小さなことでさえ質問をしに行った。しょっちゅう質問をする僕に、毎回嫌そうに「しつこい」と言わんばかりの顔をしながら、なお律儀に質問に答えて下さったことを僕は知っている。いや、実際に、「お前みたいなやつは会社じゃ嫌われるタイプの人間だからな」と先生はおっしゃった。それでも、僕が上記の2校に合格した際には、「あのしつこさがお前を救ったんだよ」ともおっしゃってくださった。

 こうして、大学編入成功という実績よりも大事な「しつこさ」が僕の身についたことは、大学編入を目指したことの一番の戦利品であった。

 最後に、なぜ僕が中央大学に入学することに決めたのか、その理由を述べたい。たしかに、僕は中央大学に合格させていただいたときよりも、小樽商科大学に合格させていただいた時の方が嬉しかった。そして、小樽商科大学のように小規模でありながら昔から伝統がある大学で学びたかったのも事実である。しかし、バブル期を経験せず、生まれながらにして「日本の世は不景気である」と叫ばれてきた時代にしか生きていない僕は、安定を第一に得たく、将来は公務員(特に都庁)になりたいと考えたため、一人暮らしを避けて勉学に集中することが望ましいと考えた。それゆえ、資格実績・公務員実績に定評のある質実剛健な中央大学への入学が僕の目指す職業への最短経路であると思ったのだ。期限ギリギリまで悩み、実を言えばいまだに進学先が中央大学で良いのであろうか、と悩んでいる。それだけ、小樽商科大学は僕にとって魅力がある大学である。

 年齢が重なるにつれ、気にしなくてはいけない事柄が増加し、ますます自分のヴィジョンは霧で埋め尽くされる。進路なんてとっぱらって、やりたいことだけを考えるという思考にためらいが生じてきた今日この頃、優柔不断な僕の性格があだとなり、このように自分の進路が決めきれないでいる。しかし、僕が

中央大学を選んだとしても後悔はない。英語をもっと勉強していれば、僕は落とされた大学にはきっと合格させていただけていたであろう。それでも、この1年間自分の好きなように勉強してこの結果が得られたということは、結果の善し悪しに関わらず、これが運命であるとも思える。現に、中央大学に合格させていただけたことは公務員志望の僕にとっては、まさに運命的な出来事だったからだ。経済経営系指導スタッフ全員から「小樽商科大学のほうが良いね」と言われ、僕自身も樽商のほうが僕の性分にも合っている気はするが、上述の僕の考えから進路は中央大学にしたいと考えている。

 「ですます体」を変更してでも、最後にこれだけは言わせていただきたい。中央ゼミナールの経済経営系指導スタッフの方々、英語系指導スタッフの方々、事務員の方々、この1年間ありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました