教育系大学院とは

教育系大学院担当者からみなさまへ

近年、教員採用状況の好転に伴い、教育系の大学院に進学される方が増えているように思います。日々、教育学を学びたい方、教育系の大学院に進学されたい方と接していると、皆さん、様々な目的をもって教育系の大学院に進学されようとしていることを実感します。

ここでは、皆さんの目的意識にふさわしい大学院、大学院入試で求められる能力について書いていきたいと思います。

教育系大学院の種類とその目的

教育学の研究者になりたい方

以前からあった教育系大学院の進学目的としては、まずなんといっても、「教育学の勉強をしたい」「教育学の研究者になりたい」というものでしょう。かくいう私も、将来の職業選択なんてこれっぽっちも考えずに(汗)、ただ、もう少し教育学を勉強したいというそれだけの理由で大学院進学を決めました。

このタイプの大学院に進学するためには、語学、専門、研究計画、場合によっては卒業論文を含めて、すべての領域をバランスよく、かつ、かなりの水準でこなしておく必要があります。

専修免許を取得したい方

今日の日本では、教員免許の基礎資格が大学院にはなっていません。現状では、短大卒業の第二種免許でも教壇に立てるわけです。しかし、世界的には教員養成は修士課程レベルで、となりつつあるようです。また、現在でも、特に私立学校では、採用の段階で専修免許を必修としているケースも少なくないようです。将来、管理職になるためには、専修免許状が必要になってきます。このような状態から判断すると、教師として仕事をしていくのであれば、専修免許を取得するという判断は、合理的なものではないでしょうか。

専修免許状を取得するためには、大学院の修士課程に進学するということになります。この大学院ですが、従来型の大学院と2008年4月開設予定の教職大学院とがあります。従来型の大学院は、研究者養成大学院と重なるところがあるので、ここでは、教職大学院についてご紹介しておきましょう。

まず、教職大学院の目的ですが、①学部段階での資質能力を修得した者の中から、さらにより実践的な指導力・展開力を備え、新しい学校づくりの有力な一員となり得る新人教員の養成、②現職教員を対象に、地域や学校における指導的役割を果たし得る教員等として不可欠な確かな指導理論と優れた実践力・応用力を備えたスクールリーダーの養成、とされています。大学を卒業したばかりの学生さんだけでなく、現職の教員の方も広く対象とした大学院になっています。現職の教員の方々向けに、長期履修制度をとっている大学院や、仕事を続けながら通学できる大学院もあります。

入試では、語学、専門、研究計画、場合によっては卒業論文の提出や要旨が求められますが、語学がない場合、専門論文が小論文になっているといったケースもあります。また、現職の方には別の問題が課されている場合も少なくありません。

教員免許を取得したい方

最近多いご相談が、大学院で教員免許を取得したい、という方々です。大学は卒業しているのだけれど、教員免許を取得してこなかった、けれど、今からでも先生になれるのならなりたい、というご希望をお持ちの方々です。

お気持ち、よくわかるんですよね。

このようなご相談の多くは、20代後半から30代の方々です。この世代の方々が大学を卒業した頃の教員採用試験の倍率は、非常に高いものでした。何年も臨時採用の教師をやって、当時の採用年齢制限ぎりぎりの年齢で合格できるか…そんな時代だったのです。ですので、先生になるという夢をあきらめてしまった方も少なくないのです。

でも今なら。

首都圏の特に小学校の採用試験の倍率は大幅に下がっています。今なら、その夢を実現することも、かなわないことではないのです。

ではまず、どうやって教員免許を取得するのか。

教員免許を取得する方法は様々ですが、すでに大学を卒業した方にお勧めしたいのが、教員免許取得プログラムを設置している大学院に進学することです。大学院で専修免許を取得することはできますが、それは既に、教員免許を取得している方に限られるというのが原則です。しかし、教員免許取得プログラムを設置している大学院は、長期履修制度をとり、まったく教育学を学んだことのない方でも教員免許を取得できるのです。

もちろん、大学に編入して教員免許を取得するという方法があります。けれど、多くの方と話していて、今から20歳の学生さんと一緒に学ぶのにはちょっと抵抗がある、という方も少なくありません。もともと社会人の方を対象としている教員免許プログラムが設置されている大学院であれば、その心配もなく学べるのではないでしょうか。

このタイプの大学院は、専門論文だけで受験できるところが主流となっています。加えて、教員免許プログラム独自の小論文が課されています。

入試対策の概要

では次に、教育系大学院の入試で求められる学力とその対策について述べていきましょう。

語学

研究者養成や従来型の専修免許の取得できる大学院入試でまず求められるのが語学力です。近年は、外国語1科目で受験できるところがほとんどです。

この語学の試験ですが、これは実質、足切りに使われている大学が多いようです。どんなに専門論文がきちんと書けていても、語学が一定の水準に達していなければ、合格は望めません。ですので、しっかりとした語学力をつけておく必要があります。

大学院入試の語学試験の多くは、長文和訳です。これは実は、英語力だけで高得点を得られるわけではありません。出題される長文の多くは英文の専門論文ですから、英語力はもちろん、専門に関する知識・理解力が問われるわけです。ですので、専門の力量をあげていくことが大切です。

ところで、こうして学習した英語の日本語訳ですが、自分の訳が正しいのかどうかは、なかなか自分ではわからないものです。ですので、専門の先生に訳を検討してもらうことが大切になってきます。中ゼミでは、教育系の添削英語の授業が開講されていますので、専門的な内容の英文を読み、書かれた答案に講師が赤ペンを入れていきます。ですので、専門にふさわしい日本語訳の学習ができますので、まさに入試に直結した対策ができます。

文学部等の教育学部で、教育学に直結しない英文が出題される場合には、「大学院英語<人文系>」という大学院入試専用の講座があります。こちらでは、より広範なテーマを扱いますので、狭義の教育学以外の内容が出題される場合にも十分対策をすることができます。

専門論文

もちろん大学院入試で鍵になってくるのは、専門論文です。先にも述べましたように、語学試験も単なる語学の試験ではなく、出題される文章は専門論文が多いわけですから、実は専門知識の水準を問うものになっています。そもそも日本語で書かれた専門的な内容が理解できていなければ、当然、英文で読んでも理解できるはずはありませんよね?

ですので、英語の勉強だけでなく、専門の勉強をしっかりと進めていないと、英語の得点が伸びるということにはなりません。

では、専門論文の対策はどのようにすすめていったらいいでしょうか。

専門論文の出題の内容は、大きくは、3つに分けられます。①幅広く教育学の素養を問うもの、②その専門領域の素養を問うもの、③教官の専門分野を中心とした出題を行うもの、です。志望校がどのような内容の出題が多いのか、過去問を収集して、傾向の対策をしておいた方がよいと思います。ただし、出題傾向は変わることがありますから、ご注意を。今年の大学院入試でも、例年、時事問題のテーマ型だった出題が、課題文型の出題に変更されていました。このような場合も少なくありません。

学習方法ですが、①、②については、まずは、教科書的な本を使って、学習を始めてみてください。全般的な状況を理解したら、出題頻度が高い領域を中心とした学習をしていきましょう。③の場合は、教官が最近書かれた本、論文を集めて、読んでいく必要があります。ある程度論文を収集すれば、出題されそうなテーマが見えてくるものですよ。

専門論文のための学習は、皆さんが進学された後の学習にまさに直結するものです。適切に学習をしていけば、本当に楽しいものです。

小論文・教員プログラムの試験

教員免許を取得するための教員プログラムでは、小論文の試験が課されるケースが多くあります。出題の傾向は、専門論文とは異なっているように思われます。専門論文では当然、専門的な知識の有無が問われますが、教員プログラムの小論文では、教師としての資質が問われるような出題がされています。また、具体的な教育の場面を想定したものもあります。

このような問題に対して、何を問われているのかわからない、どのような対策をしていったらいいのかわからない、というご相談をよく受けます。具体的な教育実践のイメージを広げていくために、現場の先生が書かれた実践記録を読んでいくことが一つの方法だと思います。実践記録には、生きた現実の子どもの姿と、そこで格闘している教師の姿が描かれています。

研究計画書

教育系の大学院、いずれのタイプでも、当然、研究計画書の提出が求められます。

ただ、研究計画書で求められているもの、ボリューム等は、大学によって異なってきます。これまで述べてきましたように、教育系大学院は多様化しています。ですので、大学院の設置目的や専攻の性格を理解して、研究計画書を作成することが求められます。

また、研究計画書の他に、「これまで関心を持って取り組んできたテーマ」についての記述が求められるケースも少なくありません。まだ卒業論文を書かれていない方、学部で教育学を専攻されていなかった方はとまどうかもしれませんが、この部分も軽視しないで書いてほしいと思います。特に、他専攻から教育系の大学院を志望される場合、修士課程での研究との連続性について、口頭試問で問われたということをよく耳にします。教育学は実に多彩な学問です。他専攻からでも、十分連続性のある研究計画書を作成することが可能です。早目にご相談いただければと思います。