同情するなら金をくれ

同情するなら金をくれ

私は経済方面にはとんと疎いのですが、ものの値段には大変興味があります。
皆さんは街に出てずらりと並べられた目が回るほどの大量の商品を見て何を思いますか。ちょっとボードリヤールを髣髴とさせますね。あ、ボードリヤールといったら消費社会、『消費社会の神話と構造』ですよ~消費社会の消費は記号としての商品の消費。
というおさらいはさておき、私は何よりも値段を見ます。そしてこれがこの値段であるのはどうしてだろうかと考えます。そうすると大体この程度の商品であれば大体この値段、という相場、がわかってきます。この値段は市場(マーケット)の中の需要だの供給だのや、他の競合企業との関係性から決まってくるらしいですが(多分。素人なのでこの辺が限界です)、不思議なことに商品をずっと見ているとその商品から値段の推測ができるようになるのです。
しかし、まったくわからない場合もあります。最近引っ越し業者と話す機会が多いのですが、こういう業者の値段もあって無きがごとし。実際にかかる費用ももちろん存在するのですが、ひたすらに価格競争。わりとどの業者もほかの業者が提示した価格を知りたがって、それよりも安くできますよ!というのをアピールしてきます。そうなると値段なんてよくわからなくなってきますよね。
それにお店でセール品を見ると、最初はわりといい価格で売られていただろうに、10パーセントオフ、20パーセントオフ、とうとう70パーセントオフの領域にまで入り込み、しまいには1000円均一という値段にまでなってしまうわけです。同じ商品であるはずなのに、買う人がいないというだけで価値がどんどん下がっていくのです。じゃあ最初の値段はなんだったのか!という話ですよ。
売られているだけではだめで、買う人がいて初めて値段という価値が決定されるんですねーあるいは価値というものは交換という行為によってのみ成立しうるわけです
ちなみにモノの価値を「使用価値」と「交換価値」に分けたのはかの有名なマルクスです。そして価格とはまさにこの「交換価値」になります。服とその値段のお金が等価で交換される、服の価値はその値段のお金であらわされるわけです
値段のなぞはまだまだあります。ネットオークションやフリーマーケットなんかをのぞいてみると、普通に買ったら何倍もするようなものが500円とか300円とか、はては1円などで売られたりしていることすらあります(その場合、売り手はもうけるということよりもそれを処分することに主眼がありそうですが)。ここでは市場価値とはまったく別に売り手と買い手の合意のみによって値段が成立しているかのように思いきや、これは○○のブランドだから××円のよういに、市場の価値が入り込んできちゃうのです。それにしたって、普通の店で買ったら万単位のものが、一回人が買ったり袖を通したというだけで、その十分の1くらいになってしまう。使用価値という観点から見たら何の変化もないはずなのに!
そうなると、もう普通の値段で買い物をするのが馬鹿馬鹿しくなってきますよね。おそらく私のような人間はたくさんいるのではないかと思います。
それにもかかわらず普通の値段で買う人がいるのは、やっぱりボードリヤールの言うとおり記号を消費しているということなのかもしれません。高い服を買うこと自体が何らかの意味をあらわしたりもするわけですし
という具合に何の考えもないままだらだらと見切り発車して書いていった結果、結局何がポイントなのかわからない文章になってしまいました。多分言いたかったことは、高い服買えない症候群に陥った自分の状況だったのではないかとも思うのですが、まあ小論文を書くときの悪い一例にしてください。小論文を書くときにはしっかり入り口と出口とクライマックスを作ってから書いていってくださいね。
さて、そんなわけで、ここでだらだら書いた値段の話ですが、これだって立派な社会学的な研究になりえます。経済じゃないの?と思われるかもしれませんが、経済活動だって人間の行為です。人間の行為はすべて社会学(あるいは人類学)の対象となります。
こうやって眺めてみると売買という行為もなかなか不思議に面白くないですか。しかも売買にはなぜか倫理も絡んできたりします。臓器売買とか愛とか友情とか、「買えるもの」「売れるもの」、むしろ「買ってはいけない・売ってはいけないもの」は社会が倫理や道徳を盾に明確に規定しているわけです。
だから「金があれば何でも買える」という発言はバッシングされたりするわけですね。
「同情するなら金をくれ!」は同情をするくらいならお金をよこせという発言なわけですが、しかし、「お金を上げるから同情をくれ」のように、お金を払って同情してもらおうとしたら、多分本気で同情されます。お金で同情を買おうとする姿勢がすでに同情を買うような人間性を表している。奥が深い。お金をあげるから同情してくれ
そんなわけで、もともと経済学部にいて社会学系に編入したいという方、売買や消費、消費社会といったテーマを選んでみてもいいかもしれません。

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