文章編:第四章「実際に編入してみよう」

まるわかり大学編入第4章

さあ、それでは具体的な対策に入りましょう。筆記試験、面接、書類提出、情報収集、まだまだたくさんの知識が必要です。

編入試験の英語って?

編入試験の英語について「英語なんだから、一般入試と同じ勉強をすればいい」と思う人が多いのではないでしょうか。それが落とし穴です。

編入試験は、大学教養レベルの学力を問う試験です。大学の英語は、一般的に外書講読で内容のあるテキストを読んでいくことになります。したがって、編入試験の英語は長文和訳が中心で、大学院入試のように受験学科に関連した専門英文の全訳を課すところも珍しくありません。

たとえば、経済学部であれば、経済学や経営学に関する英語の論文、テキスト、雑誌や新聞記事などから出題されることになります。そのため、専門単語の修得も必要になります。

中央ゼミナールでは、編入試験の英語を次の3種類に分類しています。

大学院型

専門英文を全訳させる大学院タイプ

出題としては、全訳、要約、下線部訳、記述式説明問題

長文総合型

大問が一般入試英語問題の長文総合問題タイプ

出題としては下線部訳、説明問題、適語補充、内容把握、大学によって独立した文法問題や英作文をあわせて出題

一般入試型

センター試験や中堅私立大学の一般入試タイプ

出題としては、長文問題と書き換え、整序など独立した文法問題の組み合わせ。発音やアクセントが出ることもある

それでは、上記3種類の割合はどうなっているでしょうか。

どの型で出題されているかは、学部系統や試験の種類、方法で特徴がみられます。

最初に大学院型です。この型は法学部、経済学部など社会科学系学部では、国立・私立を問わず主流です。国立の自然科学系学部にも大学院型が多いのですが、英作文をプラスすることもあります。人文科学系については、特に各学科単位で試験問題を作成する場合によくみられます。英語・英文系学科では、あわせて英作文が必須です。

次に長文総合型です。特に国立・私立ともに、文学部の共通問題で多くみられます。また、私立大学の社会科学系・自然科学系でも割とこの型で出題されます。ただし、レベルは様々です。最近の傾向では英作文、時には自由英作文をあわせて課す大学が増えています。

一般入試型です。3種類の中では最も出題率が低い型です。特にどの学部で出題が多いということはありませんが、中堅レベルの私立大学でみられます。

中堅レベル(日東駒専)の私立大学の中では大学院型中心なのは駒澤大学のみで、日本大学が一部学部のみ大学院型で他の学部は一般入試型(商学部はTOEIC、法・経はTOEIC等提出で英語筆記試験免除)、専修は一般入試型です。この型の場合は、難易度の高い問題を出して落とすと言うよりは、基礎学力の確認になることが多く、難易度も一般入試に比べて低いことがあります。東洋大学は平成30年度よりTOEIC等のスコア提出となり英語の筆記試験はなくなりました。

英語の勉強にあたってはどこに注意すればよい?

大学院型は言うまでもなく長文読解、長文総合型も和訳や記述式の説明問題の比重が高く、この二つの型で編入試験全体の大多数を占めます。

一般入試型も文法は基礎的ですから、長文を読めるかどうかが勝負です。編入試験の英語で合格点をとれるかどうかは、長文読解力次第であることに留意して、勉強しましょう。

特に大学院型の場合は、専門的な英文を出題することが多くなります。一般的な単語だけでは不足で、専門単語の習得も必要になります。

また、とりあえず訳して点になるというのは大きな誤解です。残念ながら一般入試のような部分点はあまり期待できません。特にキーワードの訳し方を間違えると、大半の単語の意味を正しく訳していても0点になることがあります。

ポイントは英文の意味をきちんと理解して正確な日本語に置き換えできているか、日本語として意味の通った文章になっているか、ということにあります。勉強にあたってもその点に注意して、長文を精読することを心掛けてください。

なお、出題される型によっては、一般入試のような文法問題の対策もあわせて必要になりますから、勉強方法も受験大学の傾向で少々異なります。自分の受験大学がどの型に該当するのか、大学別の特徴をしっかり把握して、適した勉強をすることも大切ですね。そのためには過去問題を入手して、出題傾向をチェックすることです。できれば同じ傾向の大学を併願した方が、勉強に取り組みやすくなります。

第二外国語で受験できる?

文学部を中心に、語学を選択できる大学があります。また、ごく少数ですが、語学を2科目課す大学もありますから、要注意です。英語以外の語学としては、ドイツ語・フランス語、ついで中国語で受験可能な大学が多くなります。また、当然ですが、フランス文学科ならフランス語、ドイツ語学科ならドイツ語が課せられます。出題傾向としては、英語に準ずると考えてください。

大学院型が中心ですが、長文総合型に作文や文法のプラスされたタイプもよく見受けられます。英語同様に過去問題のチェックは欠かせません。

中国語学科では漢文まで出題されることがあります。

なお、2年次編入試験の場合は初級レベル、3年次編入試験の場合は中級レベルの出題が一般的です。英語が苦手のため、その他の語学での受験を希望する方もいますが、英語指定の大学学部学科も多いので、選択幅が狭まります。事前によく検討してください。

英語の勉強方法って?

最初に注意しておきたいのは、特に編入試験用の英語参考書や問題集が揃っているわけではないということです。

中央ゼミナールでも編入英語に関する書籍を過去に何冊か出版していますが、おもに試験の傾向と対策、過去問題集でした。したがって、勉強するにあたっては、一般入試で利用したものを使用することになります。

ただし、精読が基本ですから、あれこれいろいろな問題集に手をつけるのではなく、同じものを繰り返し勉強して、自分がどこをどうして間違えたのか、きちんと確認し、理解していく必要があります。

さて、勉強の大きな目標は長文読解力を身につけることです。そのためには何をすればよいでしょうか。

英語の勉強は、皆さんすでに中学から高校まで最低でも6年は続けています。ですから、今さら教えてもらわなくてもと思う方がいる一方、6年やっていても長文は苦手だと思う方も多いのではないでしょうか。ここでは逆から考えてみましょう。なぜ、長文読解が苦手かということです。原因にはおもに次の4つが考えられます。

  • A 英単語・英熟語を覚えていない
  • B 長文を読むために必要な英語の文法知識が身についていない
  • C 正確な日本語に訳すための日本語の語彙力、文章力がない
  • D 長くて込み入った英文が読めない

自分がどのタイプにあたるのかよく考えて、しっかり対策を立ててください。

A 英単語・英熟語を覚えていない

英単語・英熟語を知らなければ、英文を読めるわけがありませんね。ところが編入試験では、一般入試以上に単語量を要求されます。まず、一般入試で一般的に利用されている単語集を繰り返し勉強して、しっかりと頭にたたきこんでください。次に志望大学の過去問題をチェックして、必要に応じてよりハイレベルな単語集や専門単語の習得を行いましょう。各専門分野の英単語集は、それだけを目的に出版しているものは、残念ながらありません。それぞれの専門分野の用語辞典などに記載された対訳、英字新聞の解説書、実際の過去問題などを活用して自分で単語集を作る必要があります。

中央ゼミナールでは専門分野ごとに専門単語集を作成して単語の小テストを行っていますが、上記の方法で作成したものです。

B 長文を読むために必要な英語の文法知識が身についていない

ここで勉強する英文法は、あくまで英語長文を読むためのものです。英語長文とは一文一文の英文が集まったものです。その一文を構成しているのが英語の決まり事、つまり英文法です。ここでは、英文の構造を読み取るために必要な文法事項を勉強してください。特に下記の項目が重要です。

文型・句・節・不定詞・動名詞・分詞・関係代名詞

これらの文法事項は、主語は何か、述語は何か、文中のある固まりはどこがどのようにかかっているか、ということを理解する手がかりとなるものです。正確な構文把握と言い換えることもできます。

C 正確な日本語に訳すための日本語の語彙力、文章力がない

これはそう簡単に身につくものではありません。新聞や本をしっかり読んで、知らない語句があったら国語辞典などで調べて覚える、小論文や専門論文の勉強で論述を重ねることなどが、力をつける手段です。英語だけに力をいれるのではなく、並行してこれらの作業も行いましょう。新聞をしっかり読むだけでも、力はつきます。

D 長くて込み入った英文が読めない

ある程度学力のある方です。このタイプも含め、編入試験に必要な長文読解力を付けるために大切なことは、一に精読する、二に分量を多く読む、これにつきます。

実際の勉強としては、

  • ① 英文を辞書なしで全訳する
  • ② 次に辞書を引きながら①で訳したものを見直す
  • ③ 答え・解説や英語の文法書を参照しながら、自分の訳したものについて、どこがどういう理由で間違ったのか、しっかりと確認する。
  • ④ 上記の作業を1冊の問題集について最低でも2回繰り返す。
  • ⑤ 上記作業の中で知らない単語があれば、書き出して覚える。

編入英語の対策として、中央ゼミナールで長年勧めてきたのは、旺文社の『基礎英文問題精講』です。基礎とはありますが、やや難易度の高い英文が集められており、編入試験で出題される長文の標準レベル問題集として、最適です。基礎学力に自信がない方は、最終的にこの問題集を仕上げることを目的としてください。ある程度英語の学力に自信がある人はこの問題集から始めて上のレベルに進んでください。

もちろん、解説がしっかりと書かれていて、なぜ間違えたのかを確認できる、英文の内容が濃いものであれば結構です。分量を考えると2冊は仕上げたいものです。

編入試験の専門科目って?

専門科目といっても、学問分野によってさまざまです。例えば、日本文学科の編入試験で出題される現代文や古文は、記述式が多くなることを除くと一般入試の延長です。また、数学では大学教養レベルの範囲から出題されますが、計算問題であるということは一般入試と変わりありません。このように、出題レベルは大学教養レベルででも出題形式そのものは一般入試と変わらないタイプもありますが、全体から見ると少数派です。多くの場合は、各学問分野の専門に関して、論述形式での解答を求められると考えてよいでしょう。それでは、その場合の専門とは何を指すのでしょうか。

編入試験の試験科目で、専門あるいは論文として出題されるのは、一般的にその学科の大学教養レベルの専門基礎、いわゆる概論の範囲です。概論とは、その学問について今まで研究されてきてわかっていること、その学問の研究の歴史、著名な学者の学説などで、ここでは理論分野と呼びます。

それから、現代社会と密接に結びついた学問については、理論の応用である時事分野も忘れてはなりません。たとえば、社会学、法学、政治学、経済学、教育学、社会福祉学など、さまざまな学問で時事分野が論文で出題されます。学問領域にもよりますが、専門には理論分野と時事分野があることを押さえておいてください。 

理論分野・時事分野それぞれの出題形式は?

簡単にまとめると次のようになります。

  • 理論分野
  • ① 理論に関する論述
  • 「○○について論ぜよ。○○について述べよ。」「△△について知るところを記せ。」600字~1200字程度
  • ② 理論に関する語句説明
  • 「○○について簡潔に説明せよ」2~3行。100字~200字
  • 時事分野
  • ① 時事に関する論述
  • (1)理論分野①と同じ(2)新聞記事などの課題文を提示して、「説明せよ。自分の意見を記せ。」(3)グラフや図を提示して「説明せよ。自分の意見を記せ。」 
  • ② 時事に関する語句説明
  • 理論分野②と同じ。
  • ただし、ごくまれに適語補充、選択式で出題されることがありますので、過去問題には事前に目を通しておきましょう。

専門科目の勉強方法って?

学問分野によって異なりますので、学科別の詳細は中央ゼミナ-ル編集『合格論文の書き方』をご覧ください。ここでは一般的な勉強法をお話しします。

最初に理論分野です。

市販の概論書を2冊、専門用語の辞書、ノートを2冊準備してください。

まず、概論書を複数回読んで、内容の理解に努めます。次に、テーマごとにノートを作成していきますが、その際、2冊の概論書を自分でまとめながら、論述練習をすることをお勧めします。

ただ書き写しているだけでは、力はつきません。論述の分量としては、一つのテ-マについてノ-トの見開き程度、字数に換算すると、実際の試験にあわせて600~1200字程度になります。

もう1冊のノートは語句説明用に使います。論述練習の際に出てきた専門語句について、専門用語の辞書も利用して2~3行でまとめていきましょう。

次に時事分野です。

編入試験では、試験直前のトピックも出題されることがあります。もちろん、まだ、市販本などにはなっていませんから、新聞が何よりも重要な教材となります。

したがって、用意するものとしては、毎日の新聞、「日本の論点」など年度発行の時事問題解説書、あるいは就職用セミナーなどの時事問題解説書、ノート3冊です。ノートの使い方は、論述用、語句説明用、それに新聞の切り抜きなどをとっておくための題材用です。

ノートの使い方は理論分野と同じです。新聞記事、各種解説本などをまとめて、論述ノート、語句説明ノートを作成します。ただし、時事分野は、毎日のニュースに注意して、必要に応じて訂正を加えることになります。

もちろん、パソコンを活用してもかまいません。手直しするにはそのほうが楽です。ただし、試験当日は手で書かなければなりません。普段から書く練習は必要です。

さて、理論分野も時事分野も、試験本番の1か月前になったら、作成したノートの見直しを行います。志望大学の過去問題と照らし合わせて、抜けている分野がないか確認し、適宜補充を行います。あとは、勉強した内容を頭に叩き込むだけです。

論文の書き方って?

それでは、論述の際の一般的な注意事項を説明しておきましょう。

論述は、字数がかなり制限されている、具体的な指定があるなど、特殊なケースを除いて、序論、本論、結論の3段で構成するのが普通です。実際の段落数は本論を2つから3つに分けて、4段落か多くて5段落になります。

序論・本論・結論では次のようなことを明らかにします。

序論(⇒導入・問題提起)

~与えられたテーマの定義、問題の所在を明らかにする

例 ○○とは~である。ここでは、△△について検討する。

本論(⇒展開)

~提起した問題を具体的に分析し、論じて展開する

▼そのテーマに関する今までの研究結果、著名な学者の説など

▼テーマについて述べるにあたり必要な背景知識、専門知識など

▼テーマに関する現状、取り組みなど

以上は自分の意見ではなく、専門分野で通常いわれていること

結論(⇒評価・意義)~まとめ、将来の見通し

なお、論述の際のルールについては、基本的に一般的な小論文と同じですから、何か1冊入手して、勉強しておくといいでしょう。

専門の勉強で他にすることは?

必ず、過去問題を研究してください。一口に専門科目といっても、大学によってさまざまです。たとえば、理論分野と時事分野についても、理論のみ、時事のみ、あるいは両分野から出題と3つのケースが考えられます。それだけではありません。同じ理論分野でも大学によって出題範囲の異なる学部学科があるのです。

例えば、法律学科に関して言えば、主な出題分野として、法学概論・憲法・民法などの法学分野に加え、政治学、時事問題などまであげられますが、実際に出される範囲は大学によって異なります。すべての分野を勉強する必要のある大学もあれば、法学概論だけでよいところもあります。

経済学科なら、マクロ経済学・ミクロ経済学・時事経済学の中からいずれか1つ、あるいは複数が必須または選択で出題されることが考えられますし、場合によっては経営学、会計学、数学まで選択で出題されることがあります。

日本文学科の場合は、現代文・古文・文学史・漢文・国語学・小論文・変体仮名の読みなどから、さまざまな組み合わせで出題されています。

英文学科でも、専門として英語を課す大学、英米文学史・英語学などの専門が出題される大学、小論文が出題される大学、リスニング・英語面接などが課される大学と、バラエティに富んでいます。

試験本番で「こんな問題が出るなんて…」と驚いているようでは合格は望めません。あらかじめ、情報収集することが大切です。

大学による難易度の違いは?国立と私立では?

過去問題をチェックするときには、大学ごとの難易度にも考慮する必要があります。たとえば同じ法律学科受験でも、法学概論の基本的な論点のみ出題される大学もありますし、法律の発展問題・政治学・時事問題の3分野から出題される大学もあって、大学によってかなり難易度が異なります。

それでは国立と私立で何か違いがあるでしょうか。

基本的に語学+専門科目という出題傾向は変わりませんが、国立にはいくつか特徴があります。

まず、国立大学の文学部については、学部共通で語学と小論文を課すところが、名古屋大学をはじめかなりあります。この場合は専門が出題されないわけですから、筆記試験対策だけを考えるとむしろ楽になります。

国立大学の経済学部、法学部は、それぞれ経済学科・経営学科、法学科・政治学科共通の試験となるため、範囲が両専門分野に渡ることがあり、学科ごとに試験を実施することの多い私立大学よりも、負担が大きくなります。

国立大学については、専攻を希望する専門の基礎知識だけではなく、神戸大学法学部のように一般教養の力まで見ることがあります。

いずれにしても、まずは大学別に過去問題を調べて出題範囲をチェックすることから始めなければなりません。

編入試験の小論文って?

編入試験の小論文には、受験する学部・学科に関連したものと、ごく一般的なものの2種類があります。

しかし、最近では、専門性の全くない一般的な小論文が出題されることは少なくなりました。文学部の各学科専攻共通の小論文として出される程度です。基本的には、編入の小論文では志望学科への関心度の高さや理解度が試される場合があることを認識しておくべきでしょう。

具体的に見ていきましょう。まず、出題形式には次のタイプがあります。

課題文読解型

課題文が示され、それを読んで意見を述べる、あるいは、要約する、下線部について説明する。大きく次の二つのグループに分かれる。

60分で800字の小論文、あるいは要約+小論文400字~600字。

漢字の書取を含め複数の設問がある、一般入試国公立二次試験の記述式現代文タイプ

テーマ型

「~について論じなさい。」という形式。「~」には1つの言葉のみ入ることもあり、数行に渡って説明文のつくこともある。

資料分析型

表、グラフなどを参考にして与えられた設題について論述する。

また、内容については次のように分類できます。

一般教養タイプ

歴史・言語・文化・社会など、一般教養の範囲でさまざまな分野、問題に関する考え方を問う。多くの場合、課題文をともなっての出題。

トピックスタイプ

「少子高齢社会」など、時事的なテーマについて論じさせる。新聞記事や資料、課題文をつけることもある。

志望理由タイプ

受験学科志望の理由、あるいは入学後の研究テーマ、自分の人生との関わり。さまざまな学科・専攻で出題されている。心理学など人間科学系の学科では人生設計を含めて書かせることがある。

抽象的なテーマタイプ

「都会」「水」など、抽象的な課題について論述させる。オリジナリティや感性を見るが近年ではあまりみかけない。

学部・学科ごとの特徴は?

文学部の場合は、形式は課題文読解型で内容は一般教養タイプがもっとも多く出題されています。また、テーマ型では志望理由書タイプがよく見られます。教育学科や心理学科では、課題文読解型やテーマ型で教育学や心理学に関するトピックスの出題というのが最も多いタイプです。

社会科学系の学部、法学部や経済学部、社会学部などは、内容としては、トピックスタイプの出題がほとんどです。形式としては課題文読解型、資料分析型、テーマ型のいずれも見ることができます。

自然科学系の学部の場合は、形式としては課題文読解型、テーマ型、資料分析型のいずれも見られます。内容もトピックスから一般教養、志望理由まで様々です。注意したいのは、小論文とありながら、実は生物や物理の問題が出たり、時には専門知識を問われる出題もあることです。

小論文作成上、気をつけることは?

一番注意しなければならないことは、学部学科系統、つまり、人文科学系なのか、社会科学系か自然科学系かで、答案を評価するポイントが異なることです。実は、これは受験する学科別にも言えます。

文学系では受験生のオリジナリティや感性を見ますが、社会科学系ではそれぞれの学問の立場からいかに正確に問題を把握し、専門的な知識を持って論述しているかが大事で、新しい意見を求めているわけではありません。

自然科学系や教育などの場合は、現実的な課題に対する受験生の専門的な知識に加え、受験生がどう考えるか、問題解決能力を見ます。

学科ごとに評価の着眼点が異なる例として、「産業廃棄物」に関して出題された場合を考えてみましょう。法学では現行の法律問題として捉えますが、経営でしたら産業廃棄物を企業経営に関連させて議論する必要があります。一方理系の立場では産業廃棄物を有効活用できないかを検討することもあるでしょう。文学部でしたら、物質的な豊かさを追求するあまりに自然を破壊する現代社会の問題として捉えることも考えられます。同じテーマであってもそれぞれの学問的な立場によって、切り口や論点が異なってくるわけです。

まとめると、人文科学系の小論文の場合は、与えられたテーマに対し、しっかりとした根拠を示しつつも自分なりの考察をすることが求められます。ここでは独自性が重視されます。それに対し専門分野に関連した出題の多い社会科学系では、そのテーマを論ずるときに欠かせない論点をきちんと押さえているか、充分な背景知識を持っているかが、評価の際の大きなポイントです。自分がどのような考えを持っているかはその後です。一方自然科学系では知識と独創性の双方を要求されるといえるでしょう。

小論文の勉強方法って?

基本的に専門科目と同じです。語彙や知識がなければ、よい小論文を書くことはできません。まず、論文を書くルールを身につけます。それから過去問題のチエックをして、対策を立てて、小論文を書くために必要な題材や情報を本や新聞で集めます。もちろん並行して論述練習が必要です。

ただし、専門のように項目ごとにまとめることができませんから、過去問を使ったり、過去問題から予想問題を立てて練習するとよいでしょう。

なお、小論文の一番良い勉強方法は、添削指導を受けることです。自分では良いものを書いているつもりでも、人からみると主観的だったり、根拠がなかったり、同じことを繰り返していたり、言いたいことがわからなかったり、ということがありがちです。

小論文の目的は、自分の主張を説得力を持って読み手に伝えることにあります。人の目を通してみることで、多くのことを学べるはずです。

過去問題は簡単に入手できるの?

過去問題のチェックは試験対策には欠かせませんが、それではどの程度公表されているのでしょうか。

中央ゼミナールの令和2年秋の調査では、私立大学481大学からの回答で、郵送可及び閲覧のみ可、一部公表も含め、過去問題を公表している大学は、49.7%でした。

近年、著作権の関係で、過去問題の公表率は下がりつつあります。もちろん、一般入試のような赤本はありませんから、大学に対して何らかの働きかけをしなければ入手はできません。最近では大学ホームページ上での公開も増えてはいますが、著作権の関係で問題文が非公開、英文が非公表といった場合も多くなっています。

過去問題が入手できず、問題傾向がわからないまま受験するのは不安ですが、この場合には、出題が予想される範囲を全般的に勉強するしかありません。条件は受験者に共通ですから。

逆に言えば、過去問題の情報を入手し、うまく活用できれば、他の受験生に比べて合格に近づくことになります。もちろん、中央ゼミナールを利用して頂くことで、有利になることはまちがいありません。問題の入手が困難なケースでも、校内生からの受験情報で、試験内容を確認することは可能です。

志望理由書ってどんなもの?

編入試験では出願にあたって、多くの大学が志望理由書の提出を義務づけています。また、事前の提出はなくても、筆記試験で志望理由を問われることがあります。

編入試験でなぜ志望理由を問われるのかは、すでに説明しました。

ここでは具体的に何を書けばよいのか説明します。

基本的には次の4点で、内容に一貫性を持たせることが大切です。

  • ① その学科への編入を志望する動機、きっかけ
  • ② 編入後に学びたいこと、研究テーマ
  • ③ その大学を志望した理由
  • ④ 卒業後の抱負

自分のその学科に対する関心が具体的にどのようなものか、それを勉強するにあたって、なぜその大学を選んだのか、自分の学習意欲が伝わるように書きましょう。用紙は大学指定の場合がほとんどで、A4かB5サイズで1枚が一般的ですが、2000字指定のこともありますし、逆に願書に小さな枠があるだけということもあります。字数指定が多いときは①・②の部分をより具体的に書きます。100字程度しか書けないときは①と③を簡潔にまとめましょう。

面接では何を聞かれるの?

編入試験の面接では、8割方の大学で志望理由を聞かれます。ポイントは志望理由書であげた4点ですから、志望理由書を提出する場合は必ずコピーを取っておきましょう。

また、志望理由書が必要ない場合でも、一度は文章にしておくと良いですね。思っていることを言葉にするのは意外に難しいものです。また、答えたことに関して突っ込みの入ることも多いので、自分が学びたいと考えていることについては、事前に関連の本などを読んで勉強しておきましょう。

その他としては、今までの学習状況、社会人なら社会人経験、どんなテキストで勉強したか、併願校、試験の出来などが挙げられます。

気をつけたいのは、特に理系で試験が面接のみとか小論文と面接だけという場合です。その場で英文を読んで訳させたり、計算問題を解かせたりすることがあります。

口頭試問と面接の違いは?

口頭試問といっても多くの場合、質問内容は面接とあまり変わりません。ただ、勉強したいことについてより詳しく聞かれたり、いきなり専門的な質問をすることがないわけではありません。面接以上にしっかり事前準備をしておく必要があるでしょう。

面接はどのくらい合否に関係あるの?

大学によって異なります。参考程度の場合もあれば面接で最終的な合否が決まることもあります。参考であれば、会話のキャッチボールができるかどうかをみると考えればよいでしょう。面接重視の場合は、自分が研究したいと考えていることについて、どの程度深い関心を持っているのかを確認すると考えてください。この場合、その大学のカリキュラムやスタッフの陣容が受験者の研究テーマとあわないと判断されたら、落とされることもあります。志望大学で勉強できる内容については、事前にしっかりと調べておく必要があります。

面接の時の服装は?

特に決まりはありませんし、学生らしい格好であればよいとする大学もあります。しかし、高等専門学校生が多く受験する国立理系、女子大などでは、以前からスーツで行く人がほとんどでした。また、いざ行ってみて、自分だけがスーツではないという状況になると落ち着きません。そのためか、中ゼミ生の受験情報では、近年では受験生の9割方がスーツだったという報告がほとんどです。特にスーツで行くことを大学側が求めているわけではありませんが、スーツであれば無難であるとは言えるでしょう。むしろ、どういう格好が学生らしいと言えるのか、それを判断するほうが難しく思えます。

以上、『まるわかり!大学編入』文章編:第四章でした。