文章編:第三章「大学編入前のチェック点」
編入制度もわかった、イメージもつかめた、よし、あとは、チャレンジあるのみ!といいたいところだけど、本当に他に知っておかなければいけないことってないのだろうか、何だかまだ不安という方。
その通りですね。次の段階に入る前に、まだまだ知っておかなければいけないことがあります。
第三章「大学編入前のチェック点」<目次>
3年次編入で卒業に3年かかることがあるってホント?
3年次に入学していても卒業までに3年かかるケースがある、これは本当です。学費も時間も余分にかかりますから、本当に要注意ですね。
どうしてかというと…。出身大学や短大で取得した単位は、編入先の大学で、そのまますべてが認められるわけではありません。編入生一人ひとりについて単位認定が行われます。そして、その結果によって、学生生活の忙しさが全く違ってきますし、うっかりすると卒業に3年かかってしまうことがあるわけです。
困ったことに単位認定の方法は大学によって異なり、認められる単位数もかなり幅があります。例えば、短大の英文科出身者が経営学部に編入した場合、同じ短大の出身者でもAさんは○○大学で60単位認められたのに、Bさんは△△大学で30単位しか認められなかった、ということがありえるのです。
卒業までに3年かかって困るという方は、大学別に、しっかりと情報収集する必要があります。
単位認定の具体的な方法って?
単位認定の方法には、いくつかのパターンがあります。
A.一括認定・包括認定=出身学科に関わらず60単位前後を認定する。
最近では、このパターンが主流です。出身校の学部学科系統、取得した単位の内容に関係なく、一括で一定数の単位認定を行うのが一括認定です。定員設置大学を始め編入生の受け入れに積極的な大学でよくみられる、卒業に必要な単位の半分程度にあたる60単位前後を認めるケースと、国立大学でみられる教養課程分(40単位前後)のみ一括認定して専門科目は一から履修とするケースがあります。包括認定も卒業に必要な単位の半分程度を認定しますが、こちらは出身校で取得した単位を柔軟に編入先の大学での単位に読み替える方法です。
B.読み替え認定=編入生一人ひとりについて、出身校で履修した科目を1つずつ検討して認定するかどうか決定する。
この場合、具体的な認定方法は大学によって様々です。例えば次のようなケースがあります。
- a 学問分野が共通であれば認める
- b 講義名が同じであれば認める
- c 出身校のシラバスなどを提出させて授業内容も共通と判断した場合、認める
- d 専門科目の認定にあたっては口述試験を課す
- e 出身校で成績が可の場合は認めない
したがって、認定される単位も、30~70単位と大きく幅があります。そのため、単位認定が厳格な大学では、3年次に編入しても卒業に3年かかるケースが出てくるわけです。ただし、c以下、特にdやeはごくレアケースであると考えて頂いて結構です。
C.その他のケース
上記A.B.以外に、単位認定に関連して、大学によっては次のような基準や留意点があります。
- ●講義名・内容まで同じでも、3年次以上の配当科目は認めない。
- ●学年ごとに履修上限があって、単位を多く履修できない。
- ●学部共通の教養教育と学部別教育のキャンパスが別の場所にあり、二つのキャンパスを行き来する必要がある。
- ●教養課程該当分を一括認定し、専門科目はすべて一から履修させるケースがある。
中央ゼミナールでは、毎年卒業生を対象に単位認定に関するアンケート調査を行っています。30単位程度しか認められなかった学生から、70単位以上認められた学生まで様々ですが、平均すると大体60単位になります。
30単位認定で2年間で卒業できるの?
30単位しか認定されないと、残り100単位前後を3、4年で履修しなければ2年間で卒業できないことになります。これは大変ですが、努力すれば可能な数字です。ただし、難しいケースもあります。
- ① 編入先の大学に3年次、4年次で履修の上限がある
- ② 編入先の大学の進級条件が厳しい
- ③ 卒業に必要な単位以外に教職などの資格科目を履修する
②は中でも理系などで多く見られます。例えば、実験の単位を取得後でなければ履修できない必修科目がある、などです。したがって、文系から理系に編入する場合には、卒業までに3年かかると考えておいたほうがよいでしょう。逆に理系から文系の場合は、条件次第ではありますが、2年間でも卒業が可能です。
認定されやすい単位って? 認定されにくい単位は?
認定されやすいのは教養科目の単位です。大学によっては、総合科目、自由科目、学部共通科目などと呼ぶことがあります。具体的には、語学、保健体育、一般教育科目です。一般教育は、最近学生の興味を考慮して「女性学」、「環境」など、さまざまな講座が置かれていますが、文学・哲学・法学・経済など、どの大学でも設置しているような基本科目のほうが、多くの大学で認定の対象となりやすいです。
なお、第二外国語は最近必修としない大学が増えてきたため、卒業に必要な単位としては認められないことがあります。専門科目の単位認定については、同系統の場合でも様々です。経済学部のマクロ経済、ミクロ経済など、専門基礎科目は認定されやすいのですが、発展科目については配当年次が大学によって異なるため、取扱いも各大学によって違ってきます。
異系統からの場合は、単位認定の緩やかな大学では、出身学科の専門科目を一般教育や自由科目に読み替えて認定することがありますが、基本的には認めないのが普通です。たとえば家政から日本文学に行った場合、どう考えても家政学科の専門科目を日本文学科では認定しにくいわけです。
在籍大学・短大でどのように単位を取ったら良いの?
受験資格だけで考えれば、大学在学者については、2年次編入で35単位、3年次編入で65単位取得していれば、まずほとんどの大学を受験できますし、短大生は、卒業(見込)で受験できる場合が多いです。ただし、大学によっては取得単位の内容に、たとえば語学4単位以上などの要件をつけることがありますし、教職などの資格科目は除くこともありますから、志望大学についてはあらかじめ具体的に調べておかなければなりません。
それでは、認定される単位を多くするにはどうすればよいでしょうか。
もし、編入を大学・短大入学時から考えているなら、できれば1年のときは、一般に四年制大学で認められそうな単位、語学や一般教養、受験したい学科の概論科目などを多めにとっておき、2年の時は、受験勉強に時間を割けるように負担を減らすのがベストです。出身学科や修得単位数に関係なく一括あるいは、包括認定する大学が多いために、助かっている学生がいる一方で、「短大で無理して90単位も取ったのに、無駄になった。」とぼやく学生もいます。出身校での科目履修は多ければよいということではありません。ほどほどに。
大学在学者は受験にあたって退学届けが必要?
誤解している人が多いので、要注意。大学在学者は、2年次修了見込み、あるいは2年以上在学見込みで受験する人がほとんどです。この資格を満たさずに退学してしまっては、もちろん編入はできません。従って編入試験合格後の3月に退学するのが普通です。それでは、なぜ退学届けか、というと、実は大学には、他大への編入試験受験を学則で禁止しているところがまれにあるのです。こういう大学の窓口に学生が相談にいくと、「どうしても受験するなら退学届けを出しなさい」と言われることがあります。
編入試験に出願する際には、在籍大学での成績や、単位取得見込みなどに関する大学発行の証明書を提出する必要があります。しかし、編入試験受験を禁止している大学では、編入を理由にこれらの書類を入手することはできません。これは、編入を志望する四大生にとっては、大きなネックですね。
大学卒業(見込)以外の資格で受験する大学生は、まず、自分の在籍する大学が他大への編入試験受験を認めているのか、確認する必要があります。
令和2年6月に中央ゼミナールが全国の私立大学へ「学生が他大の編入試験を受験することを認めるか」について、アンケートをお願いしたところ、387大学から回答がありました。結果は次の通りです。(複数回答含む)
他大学の編入試験の受験を認める | 151大学 | 39.0% |
個々のケースで判断する | 16大学 | 4.1% |
(学長・その他の)許可が必要 | 43大学 | 11.1% |
出願にあたって退学届けの提出が必要 | 11大学 | 2.8% |
学則で禁止、認めない | 1大学 | 0.3% |
特に規定はない、関与しない | 142大学 | 36.7% |
その他・無回答 | 43大学 | 11.1% |
これをみると、問題なく書類を入手できる大学は7割強で、残りの大学の学生は、かなり苦労して編入試験を受験することになります。
編入禁止大学の学生は受験できない?
必ずしも、諦める必要はありません。
編入を志望する大学のほうで、書類の提出に関して考慮してくれることもあります。実際は、他大学への編入試験に何らかのかたちで関与する大学の学生の多くが受験しています。
問題になるのは、数が少ないのですが、出願書類に在学大学の受験許可を必要とする大学があることです。このケースについては在籍大学の許可が得られないため、受験が難しいと考えたほうがよいでしょう。
また、メンタル面での負担が大きいですね。大学の先生や友人にも編入について相談しにくくなります。さらに、編入に合格して最終的に退学届けを出す際に、受理まで時間がかかることがあります。
勉強以外の面でも多大のエネルギーが必要になりますから、強い目的意識とかなりの根気がないと厳しいといえます。ただし、それらを乗り切った場合は、もともと四年制大学へ合格する力があるわけですから、編入試験合格の可能性は十分にあるといってよいでしょう。
外国語検定試験の資格が必要な大学があると聞いたけれど?
編入試験の出願要件に各種外国語検定試験(英語ではTOEIC、TOEFL、英検など)の基準を設けたり、出願時にスコアや証明書を提出させるところは増えつつあります。
平成30年度からは青山学院大学文学部英米文学科、東京女子大学、東洋大学(全学部に)などで、出願資格・要件に語学検定の基準が設けられ、令和元年度からは名古屋大学情報学部、神戸大学国際人間科学部、東京都立大学など、令和2年度からは石川県立大学生物資源環境学部、岐阜大学工学部、法政大学文学部(日本文・史・心理学科)・経営学部、同志社大学経済学部など、令和3年度からは大阪大学人間科学部、九州大学芸術工学部、令和4年度からは大阪大学医学部(医学科)などでスコアレポートを提出となっています。
ただし、令和3年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、TOEIC試験が夏まで中止になりました。そのため、スコア提出なし、提出に代えて英語試験、面接で英語試問、古いスコア可等、直前の変更がありました。試験要項には掲載されていても、今後の推移をしっかり見守る必要があります。
ここでは、ほぼ全学部学科で出願にあたって外国語検定試験に関する要件を規定している上智大学を例にあげて説明しましょう。
上智大学では、学部学科によって条件は異なります。例えば令和3年度編入試験については、TOEICを例にあげると、下表の通りに基準が設置されています。また、この数字は平成26年度に比べるとかなり厳しく改定されています。
上智大学のTOEIC基準(令和3年度試験要項より)
L&R945 S&W360 | 外国語学部英語学科 |
L&R785 S&W310 | 文学部英文学科、総合人間科学部教育学科・社会学科、法学部法律学科・国際関係法学科・地球環境法学科、経済学部経済学科・経営学科、外国語学部イスパニア語学科、総合グローバル学部総合グローバル学科 |
L&R650 S&W250 | 文学部新聞学科 |
L&R550 S&W240 | 文学部哲学科・国文学科、総合人間科学部心理学科・社会福祉学科、外国語学部ロシア語学科・ポルトガル語学科、理工学部 |
その他の語学検定を利用する大学については、中央ゼミナール作成のデータ「大学編入ーTOEIC/TOEFL/英検」をご覧ください。
なお、語学検定を利用した場合も筆記で英語を課す大学がありますので、ご注意ください。
大学のホームページで編入試験の情報入手は完璧?
最近は、インターネットで様々な情報を入手でき、本当に便利になりました。編入試験についても試験要項や過去問題を公開する大学が増えています。でも、ちょっと待ってください。編入試験についてはインターネット万能とはいえないのです。
実は欠員募集を実施している大学・学部・学科の中には、編入試験は正規の試験ではないという考えからか、ホームページに情報を載せないところが少数ですがあります。
大学のホームページにないから編入試験を実施していない、とは限らないのです。また、教育関係のサイトには編入に関する情報をアップするところもありますが、ごく一部の大学のものに限られているのが現状です。インターネットで得られる情報がすべてではないと考えてください。
それでは、確実に情報を入手するには、どうすればよいでしょうか。実は、大学の担当者でも編入について詳しくないことがあります。情報の事前入手は欠かせません。『まるわかり!大学編入データブック』には令和2年度(データ2は令和3年度)の情報は網羅されていますから、それを参考にして、新年度の情報は大学に電話して確認すること、これが一番です。
編入試験では、入学辞退はできるの?
一般入試の場合と同様に、多くの大学が所定の日時までに入学辞退をした場合は、入学金を除く納付金を返還する制度を設けています。
また、大学によって入学手続き時は入学金のみで、後日、授業料等の納入の場合もあります。中には入学金を高めに設定している大学もありますから、滑り止めなどの併願校を選択する場合には注意する必要があります。
国立大学については、合格発表が11月でも、入学手続き期間を3月とする大学がほとんどでしたが、独立行政法人化に伴い、手続き期間を前倒しするところが増えてきました。
どのくらいの数の大学を併願する?
中央ゼミナール学生の出願校の平均は、約2.6校。最も多いのは、2校から4校を併願するケースで、5校以上を受験する学生は少なくなります。内部編入しか受験しない短大生、第一志望大学のみ受験する学生もいる上に、1校に合格が決まった段階で、学費を納入し受験を終了する学生がいること、自分で受験料を負担する学生が多いこと、とにかく早いうちに合格してしまうことが、結果的に併願数の少ない理由です。
傾向としては、早めに受験を始めて合格を決め、その後は、第一志望校のみ受験する、または、合格したら入学してもよい大学を選んで受験し、合格した段階で受験を終了する、というケースが多いようです。
編入試験は、実施期間が人文系なら9月から年明け3月までと長いだけに、納付金を考えると併願がしにくいのですが、逆に、10月に志望校に失敗しても、まだまだ対策が立てられます。
一言でいえば「自分が納得できる大学に受かるまで受ける」が、答えになるかもしれません。
社会人編入の実施状況は?
中央ゼミナールでは、学部1年入学の社会人入試受験者数が減少しているのに対して、社会人で編入試験を受験する人は毎年、一定数存在します。
しかし、残念なことに、社会人入試・社会人大学院入試に比較すると、特別枠での社会人編入の実施大学は多いとはいえません。令和2年度に特別枠で社会人編入を実施した全国国公私立大学は127校で、編入を実施している大学の約20.7%に過ぎません。しかも、一般編入を実施している全学部・学科ではなく、法学部や経営学部、工学部などの一部学部・学科のみ、あるいは夜間部や夜間主コースのみで実施するケースが目立ちます。
社会人編入のメリットは、語学科目が免除されるなど、試験内容を配慮する大学が多いことですから、受験資格があれば当然、社会人編入で受験したいところですが、志望学科によっては、しっかりと情報収集をした上で、一般編入の受験も考える必要があります。
また、短大を卒業してからかなりの年数が経っている、出身学科と異なる学科へ入学を希望する、学力的に自信がないなど、状況によっては学部1年からの社会人入試を受験することを考えたほうがよいケースもあることを念頭に置いておきましょう。今後、編入試験において社会人の特別枠が増えることに期待したいところです。
専門学校卒業でも編入できるって本当?
専門士の資格があれば、受験できます。
専門士とは、専修学校で総授業時間1700時間、修業年数2年の専門課程を修了した人に与えられる称号です。法改正で専門士の編入が正式に認められたのは平成10年6月でしたが、専門士の有資格者は、専門士制度が発足した平成7年から10年までで約70万人にのぼるといわれ、遡って資格を認定されたケースを含むと、この時点ですでにかなり多くの方が、編入試験の受験資格を得たことになります。
平成11年度編入試験では、専門士を受け入れる大学は約90校に過ぎませんでしたが、令和2年度は、全国の国公私立大学のうち546大学、編入試験実施大学の約88.9%が専門士を受け入れています。予想以上に受け入れ大学が多くなったことは、大学進学を希望する多くの専門士にとって朗報ですね。ただし、全学部・学科とは限りませんし出身系統を限定するケースもあります。
実際、中央ゼミナールでは毎年のように、専門士の方が、国立大学も含め編入に成功しています。試験さえクリアできれば合格できます。とは言え、国公立大学や関西の私立大学に比べて、東京の私立大学、特に六大学レベルのところでは、なかなか受け入れが進まないなどの問題もあります。また、編入後の単位認定にも注意が必要です。専門学校は、もともと実社会で役立つ実務的な知識・技術を身につけることが目的ですから、大学や短大とは授業の質が異なります。そのため、単位認定が難しく、卒業までに3年かかる大学もあります。
編入する専門士の数があまり伸びないことも意外です。平成14年度はマイナスに転じ、平成16年度は微増、平成17年度以降は減少がずっと続きました。平成27年度には、やや増加しましたが、平成28年度からは再び減少、平成30年度は微増、令和元年度は約6%減少となっています。専門学校は資格取得などのためにカリキュラムが非常にタイトであること、今まで受験の中心だった、看護専門学校から看護系大学への編入志望者が看護系大学の増加などから減っていることなどが理由と思われます。
専門学校と大学では、教育目的も、学べる内容も異なります。編入について、もっと多くの専門士の方に知って頂きたいものです。