哲学・芸術系の編入試験について

こんにちは、人文系指導スタッフで哲学・芸術系を担当しています、おかわりと申します。今日は編入試験で哲学系および芸術系に興味を持っている方向けに、試験の傾向や対策についてお話したいと思います。

①哲学系の編入試験について

 哲学では、人間の存在や認識のあり方から世界の成り立ちや神の存在まで、さまざまな問題をその根源から突き詰めて考えていくことが求められます。とはいえ、ただやみくもに難しそうなことを考えるだけでは哲学になりません。大学での哲学の勉強は、様々な哲学者の書いた書物を緻密に読み解いていくことが中心になります。日頃から本を読む習慣を身につけておくことが受験対策の大前提です。

 哲学系の学科で編入試験を実施しているのは、東京およびその周辺では、千葉大学、埼玉大学、上智大学、法政大学、明治大学、國學院大學などであり、決して数は多くありません。専門試験で求められる能力は主に、西洋哲学史上の様々な理論についての一通りの基礎知識と、論理的な思考力と文章力になります。知識については西洋哲学史についての概説的な本で学び、重要語句をノートにまとめていくことが効果的でしょう。論理的な思考力、文章力に関しては、考えていることを文章にまとめていくトレーニングが必要です。また面接では卒業論文につながる特定の哲学者についての自分の関心を述べることが必要になります。筆記試験向けに概説書を読むのと並行し、志望理由書や面接対策として、特定の哲学者の本を何冊か読んでおく必要があります。

 語学試験は長文和訳が中心となります。大学によっては哲学科が独自に問題を作成する場合もありますので(埼玉大学、同志社大学など)、哲学の基本用語を英語で覚えておくことも大切です。またいくつかの大学では第二外国語の試験もあるので、志望校選択の際には注意しましょう(東洋大学、広島大学、およびここ2年は募集がない学習院大学など)。

 

②芸術系の編入試験について

 「芸術系」の編入というと、美大や音大などの実技系が思い浮かぶかもしれませんが、いくつかの大学では、実技ではなく、芸術の研究を学ぶことができます。芸術には美術、音楽、演劇、映画、バレエなどさまざまなジャンルがあり、どのジャンルについて学べるのかは大学によって異なります。「美術史学科」なら美術史のみ、「演劇学科」ならば演劇、オペラ、ミュージカル、バレエなどの舞台芸術のみになりますが、「芸術学科」ならば美術、演劇、映画、音楽など幅広く学べる可能性があります。また近年は、西洋美術や日本美術、クラシック音楽やオペラ、バレエなどの、少々敷居の高い、いわゆるハイカルチャーだけではなく、商業デザインやマンガ、アニメ、J-POP、ミュージカルといった、大衆的なエンターテイメントも含めて学べる大学が徐々に増えています。

 芸術系の編入試験で求められるのは、特定の芸術ジャンルについての基礎知識と、芸術の意義を論じたり、作品を分析したりする能力です。近年の傾向として、幅広い知識を問う大学が減少傾向にあり、専門試験はテーマ型長文論述が増えてきています。対策としては、特定のジャンルの作家や作品について、いくつか詳しく語れるものを持っておくといいでしょう。美術史であれば、西洋、日本および古典、近代以降で詳しく語れる画家が4、5人(たとえばダ・ヴィンチ、フェルメール、ピカソ、狩野派、北斎など)、演劇学であれば、西洋、日本それぞれの古典的な作品と近代以降の作品で詳しく語れるものが4つ、5つ(シェイクスピア、歌舞伎、チェーホフ、寺山修司など)は必要です。長文論述では、観たり聴いたりする中で感じたことを、いかにして論理的な言葉に置き換えられるかが重要になります。「きれい」、「すごい」、「感動した」、「泣けた」ではなく、美術ならば構図や色彩、演劇ならば人物造形のあり方や舞台装置の特徴について、具体的に記述しながら論じることが求められます。

 語学試験は長文和訳が中心になります。対策としては一般的な英語対策で大丈夫です。芸術関連の英文が出題される大学もありますが、特別な専門用語を覚えることは特に必要ありません。背景知識を持っているかが大切なので、専門試験対策をしっかり行えば、英語試験の対策にもなるかと思います。

 芸術系を志望する際に大切なのは、興味があるだけではなく、場数を踏んでいることです。美術史志望ならば多くの展覧会を観ていること、演劇学志望ならばいろいろな舞台を観ていることが重要です。試験対策が忙しいのでなかなか足を運ぶことが叶わないかもしれませんが、面接の際に「最近観た展覧会は?」、「最近観た舞台は?」ということを聞かれることがありますので、できる範囲内で観に行ってください。