編入試験って何?②

前回、編入試験は、実施の有無や受験資格について個別性の強い試験であるということを書きました。今回は、受験資格を満たした上で、いざ編入試験を受けるにあたって、どのような試験が課されるのかということについてまとめたいと思います。

編入試験と通常の大学受験を比べたとき、特徴的なことは、個別性が強いという点とともに、専門性があるということです。専門性があるとは、課される試験が専門的であるということです。大学受験であれば、試験科目が大学によって異なるとしても、その内容は高校で勉強した内容です。理系と文系の違いはあれ、高校で勉強する事項は進学する学部に関係なく概ね同じです。実際、大学受験では、同一大学の異なる学部を複数受験することも行われています。行きたい大学の行ける学部に進学することは珍しくはないでしょう。

しかし、編入試験は専門性があるので、行きたい大学の行ける学部ではなく、行きたい学部のいける大学に進学するのが基本です。なぜなら、編入試験は、2年次編入であれば大学1年生までに、3年次編入であれば大学2年生までに学習する内容から出題されるからです。大学の中途年次に入学するわけですから、その年次までに学習している内容が理解できていないと、編入後の学習に支障をきたすので当然のことと言えます。したがって、法学部編入であれば、法学部1年生ないし2年生までに学習する内容から、経済学部編入であれば、経済学部で同様の内容から出題されます。

法学部で学ぶ専門科目と経済学部で学ぶ専門科目は当然違います。したがって、両者を合格レベルまで同時に勉強することは困難です。また、限られた労力を割くというのも戦略的に賢くありません。二兎を追う者は一兎をも得られないでしょう。ここから、編入試験では、まず編入したい学部(専門)を選択することが必要となります。今の大学と同じ学部(専門)を選択するのもよし、全く異なる学部(専門)を選択するのもよいでしょう。

同系統の学部の方が合格しやすいとは限りません。もちろん、同系統で編入を考えた方が、大学での専門授業を編入対策に生かすこともできるでしょう。他方で、志望理由書で編入する必要性を伝えることには難儀するかもしれません。「今の大学で勉強すればいいんじゃないの?」と聞かれたとき、「法律を学びたい」という思いは理由とはならないでしょうから返答に窮するかもしれません。むしろ、自分が勉強したいことで学部(専門)を決めた方が健全です。合格しやすい学部(専門)などないのですから。

半年とは言え、集中して編入対策をする際に、興味のないことを勉強するのはかなりの苦痛です。勉強を継続すること自体に困難を抱えることになるので、継続的に勉強できることを専門とする方がよいのではないでしょうか。とはいえ、自分の勉強したいことを限定しすぎるのも、可能性を自ら閉じることになります。「法学部」と呼ばれていなくても、法学や政治学を学べる学部は多々あります。例えば、小樽商科大学は商学部で、埼玉大学は経済学部で、筑波大学は社会学類で法学を勉強することができます。

なので、何学部に編入するかというよりも、どのような専門を勉強したいのかをはっきりさせるとよいでしょう。編入でまずはっきりすべきは、行きたい大学だけでなく、勉強したい専門です。長くなったので、次回に具体的な試験科目について書きたいと思います。


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