編入試験 論述対策(まとめ)

論述試験対策として、問題を自説展開型知識吐出型とに分けて説明しました。では、どのような大学が、どのような形で編入試験を実施しているでしょうか?

自説展開型の出題が多いのが、難関校では大阪大学名古屋大学(一次試験)北海道大学(2年次)など、広島大学などの中堅国公立大学です。このような大学では、課題文を読んだ後に、その内容の理解を測る問題とともに、それ関する自説(あなたの考え方)を展開させる問題が出題されます。したがって、課題文を読解する力、テーマに関して自説を展開する力が問われます。この点で、直接、知識をまとめて論述するというものではありません。ただし、課題文には法学、政治学に関するもの、広く社会科学全般に関するものが用いられるので、法学や政治学に関する知識があった方が正しく深く課題文を読解することができます。

他方で、知識吐出型の出題が多いのが、難関校では北海道大学(3年次)神戸大学(法学概論)筑波大学など、法政大学同志社大学などの私立大学です。このような大学では、法学や政治学の特定の事項について、その意義や定義、背景や内容の説明やそこから導き出されることの論述が求められます。したがって、法学や政治学の知識、その知識に基づいて導き出されることを正確に再現し、論述する力が問われます。この点で、知識がなければ合格はおぼつかないことになります。

以前も書きましたが、もちろん、このような分類は絶対的なものではありません。自説を展開するには知識が必要ですし、知識を再現してまとめるにしても、問題文を理解し、解釈し、解答として構成する力が必要となります。したがって、志望校によって程度の差はありますが、自説展開型と知識吐出型の両方の対策が必要でしょう

これまで3回にわたって編入試験における論述試験対策について書いてきました。読まれた方の中には、「とてもじゃないが書いてあることの全部は勉強できない」と思う人もいるでしょう。たしかにその通りです。特に編入試験は短期決戦です。また、編入試験の合否は、論述試験だけではなく、志望理由書や面接などの書類、外国語(英語)などと合わせて決まることはご存じのことと思います。もちろん、大学によってこれらのうちのどれが課されるのか、どの程度のウエイトで評価されるのかは異なります。そうであるからこそ、必要な対策のうちの何を優先して勉強するのかが大切になります

論述試験対策に限らず、編入試験では優先順位が大切です。時間や能力などが限られた下で、いかに合格に必要な学力に到達するか、常に優先順位を考えながら勉強していく必要があります。すべてを完全に勉強することが難しいのであれば、何をどの程度まで勉強すればよいのかを考えながら、学習計画を立てましょう。それに加えて、どんなに対策を知っていても、より重要なのはそれを実行することです。方法論はあくまで方法に過ぎず、目的を達成するためには、それを実行する必要があります。泳げるようになりたければ、泳ぎ方を知っているだけでは不十分です。むしろ、実際に繰り返し泳いでみることが必要です。


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