独学でも合格できる!?

このブログをご覧の方には、独学で編入対策をしていらっしゃる人もいるかと思います。独学で対策するか、当校のような予備校を利用するのか、オンラインサービスを利用するか、それぞれ一長一短ありますし、ご自身の学習環境や事情によって変わってくるでしょう。編入情報の収集の一環であっても、このブログに立ち寄って役立ててもらえるのならうれしい限りです。

独学での編入対策を選択した場合、最も弱点になるのは、アウトプットの機会が少ないということです。今日は、大きなお世話かもしれませんが、独学でいかに成功するか、勝手なアドバイスを書きたいと思います。

編入に必要とされる知識をインプットすること自体は、ひとりでひたすら進める作業といえるでしょう。もちろん、予備校などの力を借りれば、必要とされる知識の範囲と程度を伝えてくれるし、難しい内容は嚙み砕いて教えてもらえます。しかし、理解して記憶するのは、自分であることに変わりはありません

しかし、アウトプットは違います。法政治系の編入試験では、論述試験が課される場合が圧倒的に多いことから、英語ならば、和訳、内容把握や要約などで、論文ならば、知識の説明や自説の展開などで、アウトプットの練習が必要となります。マークシート方式のような形式で学力が測定されるのではなく、「論述」によって学力が評価されるのです。

そのためには、答案作成練習がどうしても必要になります。これは、ただ答案を作成するだけでは不十分で、それを「他人の目」で評価してもらうことが不可欠です。文章表現の適不適、理解の正確性や自説の妥当性などについて、自分で自分を評価することは大変難しい。だからこそ、そこにはどうしても「他人の目」が必要になります。しかも、文章表現にとどまらず、内容に関することは、それについて知識のある人でないと評価できません。

では、独学でそれをどうするか?

残念ながら、アウトプットの練習に関しては「他人の目」を調達するしかありません(独学の範囲から外れてしまいますが)。身近に法学、政治学の知識のある人がいるのなら、その人に書いたものを評価してもらいましょう。オンラインサービスなどで解答例が手に入るのなら、解答例の分析を通して、自分とは異なる観点から、自分の答案を見つめ直すことができます。法学書院の「演習ノート」シリーズも有用でしょう(入手困難ですが)。

さらに、スポットで予備校の利用を考えてみてはどうでしょうか時期を絞ったり、科目を絞ったりして、スポットで「他人の目」を調達することができます。自分の答案を実際に添削・評価してもらうことで、自分の「課題」が見えてくるはずです。継続的に添削・評価してもらうことが望ましいのは確かですが、「他人の目」とはどういうものか知るだけでも、以降の勉強に役立つはずです

「他人の目(評価される機会)」をいかに調達するかが、独学で成功するポイントとなるでしょう。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

2年次編入と3年次編入、どっちがいい?

大学編入に2年次編入と3年次編入があることはご存じのことと思います。編入を考えたとき、2年次編入の方がいいのか、3年次編入の方がいいのか、迷ったことはないでしょうか?「いいのでしょうか?」というのは漠然とした問いかけですよね。でも、「いいのかどうか」は何に基準をおくのかで大きく変わってきます。

最近、入学相談をしていると2年次編入を志望する方は増加傾向にあるように思います。そこで、今回はあえて2年次編入の落とし穴について書きたいと思います。

みなさんの中には2年次編入にデメリットがあるのか不思議に思われる方もいるかもしれません。たしかに、編入後の時間的余裕ということであれば、2年次で編入した方が卒業までに3年間の時間的余裕があります。それにともなって、学業以外のことにも時間を割きやすくなるでしょう。しかも、大学入学後すぐに大学を変えることができます。現状をすぐにでも変えたい人には、これは大きなメリットです。

ただ、2年次編入を実施している大学は多くはないので、受験できる学校は限定的です。それにともない、志望者が集中し、倍率が上がる傾向があります。北海道大学法学部、信州大学経法学部、法政大学法学部の各2年次編入試験は多くの方が受験します。

また、3年次に比べて、試験の専門性が高くない分、対策しやすいようにも思われますが、対策の焦点を絞りにくく、目標を定めにくいということもあります。例えば、3年次編入対策として、憲法の知識が必要ならば憲法の入門書を読めばいいですが、2年次編入対策として、課題文を踏まえた自説展開力を高めようと思っても、何をしたらいいのかはっきりしないでしょう。

さらに、2年次編入の場合、在籍校でほとんど専門的な勉強をしないまま受験となるので、志望理由書は書きづらくなるかもしれません。法学部1年生であれば、「2年生になれば専門科目も多く履修できるから、今の大学でもいいんじゃない?」問われたら、また、他学部の1年生であれば、「法学を勉強したかったら、なんで最初から法学部を受験しなかったの?」と問われたら、どのように答えますか?大学に入学して、わずか半年後に編入試験を受けるわけですから、今の大学に入学した理由は問われることになるでしょう。

「不本意な結果だったので、編入したいです」は、よくよく考えれば編入先にも失礼な話です。なぜなら、編入先の大学に魅かれたからではなく、在籍校が嫌いだから選択したと言っているともとれるからです。「あいつ嫌いだから、あなたに乗り換える」と言われて嬉しいですか?

話が脱線してしまいました。ざっくり言ってしまえば、編入後の生活、編入先の大学に重きをおくなら2年次編入の方が、準備期間や編入対策を考えるのなら3年次編入の方がいいのかもしれません。ただ、以上の話は一般論です。みなさんに当てはまるとは限りません。さらに個別的な話はご相談ください。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

 

大学の履修登録をどうしよう?

4月に入り、新年度とともに編入対策も本格始動です。周りもせわしくなってきましたね。みなさんはどうでしょうか?今年度から大学生になった方も、進級された方も、そろそろ大学の履修登録の時期ではないでしょうか。ということで、今回は履修登録について書きたいと思います(以下は、例年の話なので、正確な情報は最新の募集要項で確認してください)。

ご存じの方がほとんどだとは思いますが、編入試験に出願する際の要件となるのが、取得単位数です。募集要項に定められた単位数を取得している、あるいは取得見込みであることが必要となります。もちろん、大学によっては、取得単位数に加えて、TOEIC、TOEFLといった民間英語試験の一定のスコアが求められる場合もあります。出願に際して必要とされる単位数は大学によって異なります。例えば、北海道大学法学部の3年次編入であれば42単位、2年次編入であれば32単位が必要です。あるいは、名古屋大学法学部であれば52単位、法政大学3年次であれば60単位が求められます。

ほとんどの大学は、出願時に必要単位数を揃えている必要はなく、「取得見込み」で出願できます。したがって、多くの方が大学2年生で3年次編入試験を受験できるのです。もちろん、めでたく合格しても、「見込み」が外れて出願単位数を取得できなかった場合には、合格は取り消されます。だから、在籍校での単位取得も疎かにはできません。また、上智大学法学部は、出願時に60単位以上を修得済みであることが必要です。したがって、9月下旬の同校の出願締め切りまでに単位を取得していなければ受験できません。つまり、出願までの単位取得状況が大きく影響します。この点で、同校を受験する場合、先を見据えて単位を取得することが重要だと言えるでしょう。

出願資格として必要とされる単位数が揃っていれば、基本的には問題ありません。つまり、成績はあまり関係ないということです。編入試験の出来具合が決定的です。ただし、成績が悪い場合、面接で聞かれるかもしれません。「法学を専門的に勉強したい」と言っておきながら、法学系科目の成績があまりにも酷い場合、志望動機の説得力はなくなります。

とはいえ、取得単位の成績にこだわりすぎるのも、履修する科目にこだわりすぎるのも考え物です。もちろん、在籍校で勉強したいことを履修し、よい成績を収めることも立派なことです。しかし、編集試験を考えた場合、その対策に時間を割かなければ結果は覚束ないというのも事実です。周りの友人たちが行わない、単位取得以外の目的で勉強する必要があるのです。在籍校での授業負担が重くなればなるほど、編入対策は疎かになりがちです。そうであれば、履修登録をするにあたっては、編入試験や対策のスケジュールも視野に入れておいた方がよいでしょう

受験に有利な科目、不利な科目というのは特にないと思います。法学系科目を履修すれば、たしかに法学に慣れることはあるかもしれません。しかし、それは受験に有利ということではありません。編入のための勉強をすることの方が重要です。また、編入後の単位認定を見据えた履修登録ということはありますが、それが編入後の単位取得に大きく影響することはあまりないというが正直なところです。編入先で履修しなければいけない単位が大きく減ることはないでしょう。

履修登録にあたって、取得単位数、取得時期、成績、負担、履修科目など考えることはあります。ただ、編入にもっとも重要なのは、在籍校できちんと単位を取得して、編入試験でよい成績をとることです。履修登録で迷った際にはお気軽にお問い合わせください。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

法学は暗記も必要。でもそれだけではありません。

今回は編入に向けての勉強法です。われわれ講師目線の対策については、過去記事を見ていただければと思います。ただ、受験生・学生目線で対策について知ることも、それが自らの体験に基づくものであることから有用でしょう。今後も合格者に体験談を語っていただく機会には、こちらでアナウンスたします。

さて、法学は勉強すればするほど、暗記では済まないことに気づきます。法学の勉強と言えば、ともすれば、条文はもとより、法概念について暗記するものと誤解されがちです。法学の対策と言って、これらを記憶することと勘違いしている方もいるかもしれません。確かに、法学の勉強で記憶する作業は必要です。ただし、これは英単語を覚えるとか、数学の公式を覚えるとかと同じで、問題に答えるためには必要なことです。

しかし、英単語を暗記しておけば、英文を訳し内容が理解できるわけではないこと、公式を覚えておけば、計算の答えが出せるわけではないこともまた真なりです。問題と知識(記憶したこと)を適切に関連づけられない限り、問題に答えを与えることはできません。論述試験は、クイズではないからです。記憶したことを想起(思い出すこと)すれば答えられるわけではないのです

問題文を解釈した上で、そこでは何が求められているか理解し、それに応えるためには何についてどのように考えて論じなければいけないのか整理できなくてはいけません。そこには、記憶と想起だけではなく、理解、解釈、想起、再現などの要素も必要になります。要は、記憶することは問題に答えるための必要条件ですが、十分条件ではないということです

では、記憶と想起以外の要素はどのように鍛えることができるでしょうか?記憶と想起は自分一人でできますが、理解、解釈は、他人からの評価が必要になります。なぜなら、理解、解釈の正しさ(妥当性)が重要だからです。つまり、知識の運用能力です。編入試験が論述形式なのも、また、編入対策として答案練習をするもの、知識の運用能力が評価対象となるからです。この能力が高ければ高いほど、未知の問題に対しても答えを出すことができるでしょう。

事実に条文をそのままあてはめれば答えが出てくるほど、世の中は「単純」ではありません。事実を解釈し、法学的理解の下で法を解釈し、法的帰結を導き出すのです。それは記憶と想起では済まない作業です。このように、法学の学習においても暗記だけでは済まない要素があるのです。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

編入を考えるのなら、今から勉強しましょう。

編入試験は短期勝負ということを繰り返し書いています。では、いつから勉強を始めるのがいいでしょうか?受験対策は、「現時点での自分の学力」と「志望校が求める学力」との差を埋める作業だと言えます。そうであるなら、現時点の学力次第で、合格までに必要な期間は変わってくるでしょう。他方で、志望校の難易度によっても、必要な期間は変わります。

要は、自分の学力と志望校が求める学力との「差」が大きければ大きいほど、それを埋めるためには多くの時間が必要となるのです。しかし、編入試験は人生の通過点に過ぎません。生涯をかけて行なうライフワークではないのですから、「差」の大きさに関わらず、あと7~8か月後には受験に臨みます。つまり、「差」を埋めるために費やせる時間には限りがあるということです。

編入試験を受験するということは、程度の差はあれ、現在の学校よりも上位の大学(難しい大学)に入学しようとすることでしょう。そこで「合格」という結果を残すためには、自分の学力を上げることと、妥当な志望校を設定することが必要です。今の自分を過大評価しすぎるのも、過小評価しすぎるのも、また、志望校で夢を見すぎるのも、見なさすぎるのも、「望む結果」ではないでしょう。

まずは、これから埋めなければいけない「差」がどの程度か見積もってみてはどうでしょうか?おそらく、今日からでも勉強を始めた方がよいことに気づくはずです。「思い立ったが吉日」、次は学習計画を考えましょう。

「志望校が求める学力」や「埋めなければいけない差」について、個別の情報を知りたい方は、是非ともご相談ください(無料)。その後の学習計画についてもアドバイスを差し上げられると思いますよ。お気軽にお問い合わせください。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

編入対策の要は優先順位をつけることです

編入に向けて対策をする上で、何に最も注意しなければいけないでしょうか?

—―私は優先順位と答えています。

編入対策は短期勝負です。多くの受験生は、この時期から対策を始めて、早ければ9月に受験します(もっと早く実施されるところもあります。例えば群馬大学情報学部です。法学も勉強できる大学ですよ)。この点で、準備を始めてから本番までの期間がとても短いと言えるでしょう。

そうであるからこそ、「無駄」は省くべきなのです。たしかに、勉強する上で徒労はつきものだし、「無駄」だと思ったことが役に立つことは多々あります。むしろ人生を豊かにする「教養」とは、そのようなものかもしれません。

しかし、編入試験の「対策」を考えるのであれば、「何のための勉強なのか」自覚的になるべきです。英単語を覚えるのも、文法を勉強するのも、編入試験のためということです。法学や政治学の用語の定義を覚えるのも、答案構成を練習するのも、編入試験のためです。英語でコミュニケーションをとるためでも、『ハリーポッター』を原文で読むためでもありません。司法試験を受験するためでも、公務員になるためでもありません。編入試験のためです。

勉強の仕方も内容も、目的によって大きく異なります。なので、目的に合った勉強が必要なのです。しかも、短期勝負の編入試験です。目的を実現するために必要なことすべてを実行する時間的余裕はありません。そうであるなら、これまでに勉強してきたこと、これから勉強することの「優先順位」を考えて、優先度の高いことから実行していくことが必要でしょう。優先順位を考えずに、勉強すること自体が自己目的化すると、労多くして功少なしとなります。

何が必要で何を優先させなければいけないのか、自己目的化することのない編入対策をお考えの方は、お気軽にご相談ください。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

※過去の投稿を整理しました。あわせてご覧ください。

編入試験って何?③

前回は編入試験には専門性があるという話をしました。専門性があるものを受験するわけですから、まずは何を専門とするか、どの学部に編入したいかを定めた方がよいということも言いました。今回は、法学部ないしは法学・政治学を学べる学部への編入を考えた際に、どのような試験を受けるのかということについて書きたいと思います。

何が試験科目となるかは、大学によって異なります。英語の試験の有無、専門試験の傾向、志望理由書の提出の必要性と面接が課されるか否かなど、大学ごとに募集要項で示されます。まずは、英語試験についてですが、①英語試験が課されない、②英語試験に代わりに民間英語試験のスコア提出、③英語試験の受験というパターンに分かれます。法政治系編入の大学数では、ざっくりまとめると、①<②<③なので、英語試験を受けるつもりであれば受験できる大学も増えます。また、民間英語試験を受験してスコアを揃えておくと、さらに受験できる大学の幅は広がります。

専門試験については、傾向として、自説展開型知識吐出型に分かれること、そしてそれぞれの対策については以前に書きました。この二つに明確に分かれるわけではないので、両方の問題に対応できるようにすると受験大学の幅は広がるでしょう。対策なしに合格することは困難な試験です。対策をした大学を受験することで合格を目指します。また、試験傾向が変わることも多々あるので、どのような問題が出されても対応できるようにしておくのが基本でしょう

これらに加え面接が課される大学もあります。京都大学、大阪大学、北海道大学、神戸大学といった難関校は面接は課されませんが、他の多くの大学では面接があります。多くの場合、出願時に提出した志望理由書に基づいて面接が行われます。また、面接が課されなくても志望理由書の提出が必要な場合もあります。したがって、面接を意識した志望理由書の準備が必要となります。逆に、志望理由書の提出が求められることなく、面接試験が課される場合もあります。その場合であっても、志望理由をまとめたものを準備して、面接対策をしていきます。

このように編入試験では、英語試験と論文試験、志望理由書と面接などから合否が決まります。したがって、これらの準備をすることが編入試験対策となるのです。一般論ですが、様々なパターンに対応する準備をすればするほど、受験大学の幅も広がります。他方で、受験対策の負担は重くなるでしょう。編入試験では、初めは広く対策をしながら、志望校とともに、対策も徐々に絞っていくのが得策だと思います


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

編入試験って何?②

前回、編入試験は、実施の有無や受験資格について個別性の強い試験であるということを書きました。今回は、受験資格を満たした上で、いざ編入試験を受けるにあたって、どのような試験が課されるのかということについてまとめたいと思います。

編入試験と通常の大学受験を比べたとき、特徴的なことは、個別性が強いという点とともに、専門性があるということです。専門性があるとは、課される試験が専門的であるということです。大学受験であれば、試験科目が大学によって異なるとしても、その内容は高校で勉強した内容です。理系と文系の違いはあれ、高校で勉強する事項は進学する学部に関係なく概ね同じです。実際、大学受験では、同一大学の異なる学部を複数受験することも行われています。行きたい大学の行ける学部に進学することは珍しくはないでしょう。

しかし、編入試験は専門性があるので、行きたい大学の行ける学部ではなく、行きたい学部のいける大学に進学するのが基本です。なぜなら、編入試験は、2年次編入であれば大学1年生までに、3年次編入であれば大学2年生までに学習する内容から出題されるからです。大学の中途年次に入学するわけですから、その年次までに学習している内容が理解できていないと、編入後の学習に支障をきたすので当然のことと言えます。したがって、法学部編入であれば、法学部1年生ないし2年生までに学習する内容から、経済学部編入であれば、経済学部で同様の内容から出題されます。

法学部で学ぶ専門科目と経済学部で学ぶ専門科目は当然違います。したがって、両者を合格レベルまで同時に勉強することは困難です。また、限られた労力を割くというのも戦略的に賢くありません。二兎を追う者は一兎をも得られないでしょう。ここから、編入試験では、まず編入したい学部(専門)を選択することが必要となります。今の大学と同じ学部(専門)を選択するのもよし、全く異なる学部(専門)を選択するのもよいでしょう。

同系統の学部の方が合格しやすいとは限りません。もちろん、同系統で編入を考えた方が、大学での専門授業を編入対策に生かすこともできるでしょう。他方で、志望理由書で編入する必要性を伝えることには難儀するかもしれません。「今の大学で勉強すればいいんじゃないの?」と聞かれたとき、「法律を学びたい」という思いは理由とはならないでしょうから返答に窮するかもしれません。むしろ、自分が勉強したいことで学部(専門)を決めた方が健全です。合格しやすい学部(専門)などないのですから。

半年とは言え、集中して編入対策をする際に、興味のないことを勉強するのはかなりの苦痛です。勉強を継続すること自体に困難を抱えることになるので、継続的に勉強できることを専門とする方がよいのではないでしょうか。とはいえ、自分の勉強したいことを限定しすぎるのも、可能性を自ら閉じることになります。「法学部」と呼ばれていなくても、法学や政治学を学べる学部は多々あります。例えば、小樽商科大学は商学部で、埼玉大学は経済学部で、筑波大学は社会学類で法学を勉強することができます。

なので、何学部に編入するかというよりも、どのような専門を勉強したいのかをはっきりさせるとよいでしょう。編入でまずはっきりすべきは、行きたい大学だけでなく、勉強したい専門です。長くなったので、次回に具体的な試験科目について書きたいと思います。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

編入試験って何?①

今回から数回に分けて、そもそも編入とはどのような制度なのかまとめておきたいと思います。具体的な論文対策英語対策などは、過去記事を見てもらえばと思います。今回は、そもそも編入とはどのような制度なのか、基本情報について書きます。

編入とは、文字通り、大学に編入するための制度です。編入というのは、大学1年生からではなく、大学2年生ないし3年生に入学することです。2年生に編入することを「2年次編入」、3年生に編入することを「3年次編入」と呼んだりします。大学に入学することなのですが、すべての大学がこの「編入」という制度を認めているわけではありません。また、同じ大学でも学部によって編入を実施しているかどうかは異なります。例えば、北海道大学法学部は編入を実施していますが、文学部は実施していません。さらに、北海道大学は2年次編入、3年次編入の両方を実施していますが、名古屋大学法学部は3年次編入しか実施していません。

つまり、編入試験は、実施の有無、実施している学部、実施している年次について個別性が強いので、受験校を考える際にはこの点を考慮する必要があります。加えて、編入試験を受験するにあたっては、「受験資格」を満たしていなければいけません。大学を受験する際には、あまり受験資格を意識することはなかったもしれませんが、編入試験では受験資格が重要となります。例えば、東京大学法学部は編入試験を実施していますが、受験資格は「学士」をもっていることです。つまり、すでに大学を卒業している必要があるということです。このような制度は学士編入と呼ばれます。したがって、大学2年生の学生の方は、学士編入を受験できないことになります。

多くの場合、受験資格とされるのは在籍している大学の取得単位数です。その成績に関係なく取得単位数が重要です。どの程度の単位数が必要か、どのような科目の単位数が必要か、どの時点での単位数なのかは、大学によって異なります。例えば、北海道大学法学部3年次編入であれば、編入するまでに42単位以上の取得見込みで受験できます。他方で、上智大学法学部は、出願時に60単位以上必要となります。また、外国の大学などの場合は単位制度が異なるので、別の扱いがなされたりします。この点においても、個別性が強いと言えるでしょう。

ここまでの話でわかるように、編入はとても個別性の強い制度です大学によって、学部によって、年次によって、受験資格が異なります。正確な情報は、受験する年度の「募集要項」で確認する必要があります。現時点では、前年度の募集要項が参考となるでしょう。まずは、受験校を考えるにあたっては、そもそも編入を実施しているのか、自分は受験できるのか確認する必要があるでしょう。この点で、編入試験は情報戦です


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編入試験 英語対策③

前回は英語試験対策として、基本的な文法や単語の習得の重要性を書きました。今回は英語試験対策における専門性について書いてみたいと思います。

法政治系の編入試験で課される英語試験では、以前に書いたように長文和訳やその読解問題が多くの大学で出題されます。そして、その文章は新聞や雑誌、専門書からのものが多用されます。法政治系の編入試験なので、引用される文章は法学や政治学に関連した内容が多いと言えます。もちろん、社会科学全般に関するもの、全く分野違いの内容で純粋に英語力を測定するものなどもあります。

しかし、総じて難関校になればなるほど専門性もあがります。ただし、誤解してはいけないのが、専門性がある英文が必ずしも単語や文法が難解であるわけではないということです。つまり、基本的な文法や単語で専門的な内容が語られている場合が多いということです。この点でも、英語の基本が重要であることが分かります。

では、専門性のある英語長文はどのように対策すればよいでしょうか?まずは、繰り返しになりますが、英語の実力をあげていくことが必要です。これまでに使ってきた単語帳や文法書、問題集などを漏れなくマスターしている程度まで反復し、何周も行うことです。これは、予備校やオンライン指導を受けることなく、今からでも独習できることです。逆に言えば、この独習なしに英語力は向上しません。予備校やオンライン指導の受講で自然と向上するものではありません。日頃からの地道な復習が英語力の向上には必要です。この点で、「雑な勉強」しかできない人は受験向きではありません。

さらに、編入試験では専門性のある英語を訳し読解する必要があります。そのためには、専門用語(technical term)の知識や内容の背景的知識がある方が圧倒的に優利です。例えば”checks and balance”、”tyranny of the majority”、”the rule of law”などの専門用語には定訳があります。「抑制と均衡」、「多数の専制」、「法の支配」です。どれも法学や政治学では、一定の意味を持った術語として用いられています。したがって、術語として訳せるだけではなく、それがどのような文脈で用いられるものか、その語が含意している内容(背景的知識)を理解していることも必要です。権力分立の下、三権が相互に牽制しつつも権力的な均衡を保つことで、国家の暴走を抑止するという目的を指して「抑制と均衡」という言葉は使用されます。多数決原理の弊害を指す「多数の専制」は、民主主義と少数者保護との関係で使用されるし、「法の支配」と法治主義の相違点の理解は、違憲審査制の意義に大きく関係しています。

これらは、法学や政治学に関連する語彙を記憶するとともに、その概念や背景を理解することで身につけることができます。そのためには、法学や政治学に関連する単語を覚えること(編入向けの市販されている教材を探すのは難しいですが)、日本語で法学や政治学の重要概念を理解し、日常的に新聞などで社会の仕組みや実情を理解しておくとよいでしょう。日本語で理解できないものが、英語で理解できるようになるわけではありませんから。

このように、基本となる英語力の上に専門知識が加わることで、専門性のある英語長文に対応できるようになります。編入試験対策として予備校を利用するメリットのひとつが、これらのことをまとめて行えるということでしょう。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」