臨床心理士指定大学院入試の傾向と対策

~ はじめに ~

資格としての「臨床心理士」の人気は、相変わらず高いものとなっています。また、臨床心理士資格認定の大学院の数も増加しており、受験生も選択肢が増えている状況です。こういった中、大学院受験生は自分に合った大学院を見極める必要が生じてきています。そのためには正確な情報収集が大切となってきています。

そこで、大学院受験を考えている皆さんに参考になればと思い、当中央ゼミナールの心理学担当講師の先生方に大学院入試の対策や、英語の勉強法、臨床心理士の現状等について伺いました。この内容については今後、随時更新していきます。

1 臨床心理士の現状と展望

このホームページはこれから臨床心理士を目指す多くの方も閲覧されているようなので、いま一度、先生のほうから資格としての臨床心理士について説明していただきますでしょうか。

まず、臨床心理士資格はあくまでも「資格名」なので、資格をとれば、すぐに「臨床心理士」として仕事ができるということではありません。臨床心理士はもともと文部科学省が中心となって、学校領域における心理士の養成を目的として資格化が進められてきた資格です。あくまで文部科学省認定団体である(財)日本臨床心理士資格認定協会が認定する「認定資格」です。

資格を得るための臨床心理士指定大学院は二種類あるとのことですが、その違いはどういうものですか。

(財)日本臨床心理士資格認定協会によって指定された指定大学院は大きく第一種指定校と第二種指定校の二つに分かれます。第一種指定校は修了後の心理臨床経験を問われずに、修了することで受験資格が得られる大学院を指します。一方、第二種指定校は、受験資格を得るために修了後1年以上の臨床経験が必要な大学院を指します。この臨床経験については1日8時間、週3日以上の有給の仕事という条件があり、内容についても申請、審査が必要です。

今後は、臨床心理士を目指すなら、指定校大学院に入学することが必須条件と言えるのですね。では、臨床心理士の資格試験はどういったものでしょうか。

一次試験、二次試験とに分かれます。一次試験は筆記試験で100題の択一方式と1200字の論文試験です。論文試験は1題論じるというものです。難易度としては大学院入試レベルから大学院修了レベルで、心理学全般の知識から臨床に関する幅広い問題が出されるため、近年では大学院入試で中ゼミを利用した院生や修了生が改めて臨床心理士認定試験のために予備校に来るケースも出てきました。二次試験は口述面接試験です。自身の臨床経験や大学院での学習・実習等実践に関することを中心に問われます。一次試験(筆記)は例年10月におこなわれています。

臨床心理士試験の対策は大学院で行っているのでしょうか。

臨床心理士試験は臨床心理士になるためには必要な試験です。臨床心理士試験の対策として大学院では基本的にノータッチです。院生自身で勉強会などを行うことで対策を練っているところはあると聞きますが、それほど多くはないでしょう。一般的には、大学院合格までにしっかりと学習を積んできた人にとってはそれほど大変な試験ではありません。加えて、試験の出題領域が臨床のみではなく、基礎心理学も出題されています。しかし、臨床心理学専攻の研究科では基礎心理学は学べません。となると、基礎心理学は自分で勉強するということが重要となってきます。そして、この試験は学力が大きく反映されるため礎心理の勉強も含めて大学院合格前にしっかりと学習してきた方が有利となりやすいのです。

大学院入試の基本的な勉強と臨床心理士試験は必ずしも乖離したものではありません。大学院入試対策をしっかりと行うことは、臨床心理士への第一歩といえるでしょう。入試前に、しっかりと実力をつけ、希望が叶うようがんばっていきましょう。

では、合格率はどのくらいですか。

年によっても変動がありますが、最終合格率はおおむね6割程度でしょう。

臨床心理士という資格を得ることで、活躍の場としてどういったところが挙げられるでしょうか。

現状として、医療、福祉、教育の3つの現場が挙げられます。また、資格の有無に関わらず、仕事内容として近いもので、少年院などといった矯正施設が挙げられます。矯正施設勤務は公務員という身分なので、特殊なケースといえるでしょう。

臨床心理士の活躍の場は今後、どうなるでしょうか。拡大すると考えますか。

将来、医療現場に関しては縮小の可能性も捨てきれません。社会的需要は大きいのですが、社会の要求に臨床心理士がどれだけ応えられるかが、今後の課題であるといえるでしょう。また、そのことが活躍の場を増やす大きなポイントとなるでしょう。

では、今挙げてもらった現場において、具体的な仕事としてどういったものが挙げられるでしょうか。

まず、医療分野についてですが、病院での心理検査の実施が挙げられるでしょう。この検査は診療報酬が生じることからも、医療分野における臨床心理士の中心的な業務といえます。その他の業務内容は職場によって相当の幅があるようです。

福祉分野においては、高齢者を対象にしたデイケア、あるいは施設職員として活躍している場合が多いです。また、虐待例の増加から養護施設での需要が増加傾向にありますが、公的な施設では正式な職員としてこれも公務員として福祉職に採用されなければなりません。もちろん、民間・福祉施設では、心理職として別途採用されて同様の仕事をしています。また、児童相談所での活躍も考えられます。

教育分野では教育相談所での相談員、学校におけるスクールカウンセラーとして活躍しています。また、スクール・サポート・ネットワークの構築に取り組んでいる自治体などでは、さらに教育相談員の増加が見込まれています。採用等条件については自治体によって異なるので、ホームページ等で確認する必要があるでしょう。

臨床心理士が様々な分野で活躍できると分かりました。では、どのような形で採用されるのでしょうか。採用の流れについてお聞かせください。

まず、ほとんどの場合、非常勤という形での採用になります。昨今の就職活動状況をみると、大きく二つに分かれます。①実習先、ボランティア先に非常勤として採用されるケース ②修士論文執筆後、公募に応募するケースです。①の場合は大学院生時代での活動に大きく左右されます。しかし、これを期待しての関わりでは適切な(目的にかなった)実習になりそうにはありません。日常生活が評価させると心がけてください。また、②の場合は条件に臨床心理士の資格を挙げる場合が多いので、修了後、即採用というパターンは難しいことがあります。むしろ、大学院修了後、①のケースによって非常勤職員として採用され、資格を修得し、その後②のように公募にエントリーし、採用を待つという形が一般的です。いずれにしても、臨床心理士としての就職はそう容易ではないと思います。医療現場でも「研修生」(無給ですが、大学院修了という基礎資格の下、心理臨床実践の場に関わらせていただいて学びつづけることが許されている立場です。)をしながら仕事のチャンスを待つということが一般的になりつつあります。

就職が厳しいということですが、その背景としてどういったことが考えられるでしょうか。

まずは臨床心理士の有資格者の増加が挙げられるでしょう。認定校の増加に伴って、有資格者が増加したという現状があります。また有資格者の数が主要都市部に偏って増加していることも就職を厳しいものとしている一つの要因と言えるでしょう。

臨床心理士を巡る状況は、厳しいものがありますが、仕事としての「やりがい」というものはどこにみられますか。

難しい質問ですね。臨床心理士の仕事内容は上記のように多種多様であり、また、人によって状況は様々です。「やりがいはコレだ」という形で明確に答えられる仕事内容ではないように思えます。むしろ、時間が経つにつれ、自分の経験を重ねるにつれ、じわりじわりと感じてくるようなものかもしれません

職業として臨床心理士の今後の可能性はどのように考えていますか。

臨床心理士に対する社会的要請は少なくありません。しかし、鑑みると、臨床心理士がその要請に応えていける力があるかどうかが大きな問題として存在します。個々の臨床心理士の能力向上が重要事項として言えるでしょう。加えて、臨床心理士をめぐる制度上、社会環境上の改善を要する点もまだまだ少なくありません。今後の臨床心理士に対する需要、要請、期待に対し、臨床心理士がいかに応えられるものになっていくか、それを支える制度がどのように作られていくのかが、臨床心理士の今後の活躍の場を広げる意味でも大きなポイントになるといえるでしょう。

臨床心理士に向いている人、適性はどういったことが挙げられますか。

学生からも良くきかれる質問ですが、「迷う人」が向いているのではないでしょうか。「迷う」というのは臨床心理士という仕事に対して、自分に合っているかどうかを自省し、悩むことを指します。その姿勢は常に自分自身を見つめていく姿勢に通じます。

逆に「頑ななパーソナリティーの持ち主」はなかなか難しいのではないでしょうか。さまざまな考え方、手法が受け入れづらい人と見なされ、仕事を始める上でも苦労する傾向があります。心理に関わる人には考え方の柔軟さが必要と思われます。

臨床心理士として働くために大学院時代にやっておくべきこととは何でしょうか。

まずは、自分の目標を明確にする必要があります。将来携わりたいと考える対象を年齢、臨床像などの側面からはっきりさせることが必要です。それに対して準備しておくべきことは変わってしまうからです。また、実際、大学院の内容によって学べる内容、設備などに格差があります。むろん、こういったことは受験校を選ぶ時点において確認する必要があります。しかし、進学後に初めて分かることもあります。その場合、他大学に進学した友人などを通じて情報交換する必要性もあるでしょう。情報交換を通じて、外部の研修、ボランティアに参加するきっかけも得られるでしょう。情報交換ができるためには友人のネットワークが必要です。学部時代に同じ目標をもった友人を持つことも必要でしょう。また中ゼミなど予備校時代の友人関係はネットワークとして、後々まで関われるという意味でも利用価値は非常に高いです。予備校には、様々な大学から通学してくること、様々な大学院に進学することから、他大学の友人を得る機会になります。こういった意味で、大学院入学前でも友人のつながりを作っておくことが重要でしょう。

では、大学院での教育状況について教えて下さい。

大学院での教育の方法は本当に大学院によってまちまちといえます。カリキュラムのガイドラインがありますが現状は大学院の裁量が大きいといえましょう。したがって、研究方法、指導方法については大学院の特色が反映されているといえましょう。受験生にとって、大学院を選択するに当たって大学院の授業内容などの評判を確認したいところもあるでしょう。その場合、現役の院生に聞くことが最も確実な方法です。また、指導教授選びでも、実績、指導方法などと加えて、相性の良い悪いということがあります。こういった情報収集も、実は重要な試験対策といえるのです。

臨床心理系の大学院の生活は非常に大変だとききましたが、どのような状況ですか。

確かにとらなければならない単位数は一般の大学院(30単位が基本)比べて多いことは確かです(50~60単位)。また、実習も多くあり、忙しいことは確かです。だからといって、単位修得、実習以外は余計なことをしないという発想は得策ではないでしょう。この時期は臨床心理士として自分の可能性を向上させる非常に大切な時期です。実習にはしっかりと積極的に参加することはもちろん、実習の少ない大学院ではボランティアなどを通じて人的交流に努めていく必要があります。場合によっては実習先がそのまま就職先となる可能性もあるのですから、実習等には積極的に関わっていく必要があります。

社会人でも臨床心理系の大学院進学を希望する方が増えてきていますが、大学院進学、臨床心理士として、年齢上の有利・不利はあるのでしょうか。

年齢に関して大学院進学では有利不利がないわけではありません。年齢については若い方が、大学院への順応性、臨床心理士としての可能性の観点から有利であることは否めません。とはいえ、大学院の目的、考え方によって入学許可される人の年齢層は幅広くなってきているのが現状です。ちなみに過去の中ゼミ生では59歳の方が合格されたケースもあります。実力が年齢のハンディを越えるということもあります。また、一部の大学院では社会人入試の制度もありますが、この制度の意図は関連職種に携わっている現職者の再教育です。したがって、一般の社会人の方が合格することは難しくなります。社会人入試実施校が少ないこと等からもどのような方でも一般入試を受けることをお勧めすることが多いです。また、社会人の方々は往々にして時間がありません。しかし、合格のためには多くの勉強時間が必要です。また、入学後は忙しいことも明らかです。集中した学習時間がどれくらいとれるかを考えて、受験の準備に入る方がよいでしょう。社会人の方は学費の面、生活費の面などもしっかり考える必要があるといえます。

2 臨床心理士指定大学院入試の現状と対策

最近、臨床心理士の指定大学院のコース新設が多くなり、それに伴って認定大学院が増加していますが、どういった背景がありますか。

背景には大きく2点上げられます。まず、有名校の大学院では、認定を得ることで付加価値を加えられることを狙っているようです。また、あまり有名ではない新設校では、認定によって学生を呼び込むという狙いが大きいようです。しかし、主要な大学院はすでに認可済となっているため、今後認定校が大きく増加することは考えにくいと思います。どの大学が認定されているのかは臨床心理士資格認定協会のHPなどで確認することをお勧めします。また、未確認な「内輪」の情報や大学のパンフレットだけで設置の有無を判断しないようにしてください。

では、最近の臨床心理系の大学院入試についてお聞かせください。まずは、競争率はどういう傾向がみられるでしょうか。

一時期の異常な高倍率の状況と比べて、最近は落ち着いているようです。最近の傾向として「大学入試と同様である」といえるでしょう。つまり、伝統校、有名校は常に高倍率で、新設校は比較的低倍率という傾向です。また、志願者数が定員を割り込むということは、一部の地方校を除きまずありません。そのことからもまだまだ人気のある分野であることは明らかです。

一般的に大学院は内部受験者が有利である傾向がありますが、臨床心理士指定大学院大学院でもそういった傾向はありますか。

必ずしもそうとはいえません。大学院によっては、以前まであった内部枠を撤廃したということも聞いています。それだけ実力主義という色彩が強くなったといえましょう。中ゼミ生の中でも内部受験希望者は多いのですが、例え内部受験でも外部受験生のつもりで対策をして欲しいと授業の中で伝えています。

では、試験問題の内容についてはどうでしょうか。まずは専門試験の難易度についてお聞かせください。

指定校が急激に増加した頃に比べて現在は大学院の数がほぼ一定数で安定してきています。それに伴って専門試験の難易度も近年は安定傾向にあるのではないでしょうか。すなわち、劇的に難化しているということはありません。むしろ、いわゆる筆記試験では、基本的な内容の理解をしっかりと問うような出題が多くなってきているように思います。ここでいう基本的な内容とは、大学院入試に共通して出題しやすいテーマや偏った専門的な内容ではないものを指します。しかしながら、その勉強は、いわゆる教科書とされるような一般的な臨床心理学の概論書だけの受験対策ではまず難しい無理といえるでしょう。概論書はあくまである内容の一端を幅広く提示しているだけであり、それだけで基本的な内容の十分な理解へは到達しにくいものです。

全体傾向としてはこのような形ですが、もちろん年度によって難易度が変動することはありますし、出題形式が変更されることもあります。

また、専門試験の難易度よりも試験に他の工夫を入れることで合格者の選別をより豊かなものにしようとする大学も出てきています。

各大学院によって、出題傾向に特徴はあるのでしょうか。

まず、首都圏の大学院に限定し、指定校大学院を分類すると大きく4つに分かれます。

  • ①臨床心理士養成中心の大学院
  • ②多くの国公立大学院や難関私立などの研究者養成の側面もある大学院
  • ③独自の専門的路線に集中して展開している大学院
  • ④専門職大学院

これらの大学院はそれぞれ出題傾向が違いますので、志望校がどの枠に入るのか見極めて、傾向にあった対策が必要です。

①は新設校に多く見られる大学院ですが、専門論文については基本的な臨床心理学の内容が中心です。出題レベルについては基本的レベルが中心です。出題は、語句説明と論述が基本ですので、勉強した知識をしっかりと答案に書くことができるレベルまで学習が必要となります。

②は主に、学部に心理学専攻があり、博士後期課程 (博士課程) も設置されている大学院です。例えば、広島、神戸、名古屋、筑波、上智などが挙げられます。こういった大学院は臨床心理学のみならず、基礎心理学の勉強もしっかりとしておく必要があります。加えて統計的な知識を深く求められることも少なくありません。

③の独自の路線を展開している大学院では、その大学院特有の専門的路線について理解を深めておくことが必須です。東大、お茶の水、早稲田、などが入ります。難易度も高いのでしっかりとした対策が必要でしょう。

④の専門職大学院は、論述もありますが、穴埋めや選択、マークシート形式の出題の割合が大きいことが特徴です。このタイプには、九州、鹿児島、関西などが含まれます。幅広い内容をしっかりとおさえておくことが鍵となるでしょう。

では、英語の試験傾向はどうでしょうか。やはり大学院によって違いがあるのでしょうか。

はい。英語についても大学院によって傾向が異なります。英語そのものの難易度の高い大学院として、早稲田、筑波などが挙げられるでしょう。これらの大学院ではこれまで英作文が出題される傾向にあります。英語ができないとまずは合格が難しい大学院といえるでしょう。また、分量の少ない全訳が出題される問題形式は多くの大学院で見られます。問題内容にもよっては中ゼミの添削英語レベル(心理学科編入レベル)で十分に対応できる大学院もあります。他に出題形式としては部分訳、全訳の組み合わせ、要約、英論文の解釈などが挙げられます。特に英文の要約については別に対策が必要です。また、立教、明治学院、白百合女子、日本女子、一部の国公立大学院(名古屋など)では英論文の解釈が出されたこともあります。この英論文の解釈は英語力とともに専門知識(専門用語の英訳)も必要となります。大学院入試全体にいえることですが、まずは志望校の過去問題を検討することが必要です。

合否判定について、英語の位置づけは大学院によって違いがあるのでしょうか。

大学院試験では英語ができることが前提となります。英語で失敗してしまうと挽回は難しいといえるでしょう。大学院によっては配点が提示されている場合があります。その場合は配点のバランスによって対応が必要でしょう。

では、研究計画書についてお聞かせ下さい。指定大学院での研究計画書の取り扱いはどのような傾向がありますか。大学院によって要求する量は違うのでしょうか。

はい、研究計画書の量は大学院によって異なります。大別すると、前記の①大学院で見られるパターンと②③の大学院で見られるパターンとの二つとなります。前者のパターンは1000字程度と少ない字数ですむ場合が多いようです。また、後者のパターンは研究内容の要求が高い大学院で見られるもので多くの大学院で字数にして2000字くらいを要求します。特に後者のパターンの大学院を受けるにあたっては準備が必要となりますので、願書をもらってから慌てることのないようにしっかりとした準備が必要でしょう。ただし、文字数だけでその大学院がどこまで研究に力を入れているのかの判断は難しいと言えます。

研究計画書の内容についてはどうでしょうか。やはり文字数によって大きな違いがありますか。

はい、確かに大きな違いが見られます。前者の場合には、問題をコンパクトにまとめ、目的と方法を中心に構成します。

一方、多い字数を要求する場合、特に2000字を越えるような字数を要求する大学院では、研究内容の要求が高いといえます。特に研究内容を大学院の専門領域に合わせた形でしっかりと表す必要があります。さらに、臨床と研究活動の両立は非常に大変なので、研究テーマも実現可能な実際的なものに絞る方がよいでしょう。もし、なかなか研究テーマが決まらない場合は講師、スタッフに相談する等、大いに中ゼミの制度を利用してみてください。

では、研究計画書が合否に直接、反映されるのでしょうか。

もちろん、大学院にもよりますが、合否判断は全体的に筆記試験重視であることはいえるでしょう。したがって、あくまでも筆記試験対策中心に勉強すすめていってもらいたいです。とはいえ、研究計画書もおろそかにできません。研究計画書の要件は最低限おさえておきましょう。つまり、先行研究の把握、研究方法の提示、研究の意義づけなどはおさえる必要があります。

さらに、研究計画書が直接的に合否判断に関わる場合として、研究テーマが特異な場合指導が可能かどうか判断するときや、筆記試験の成績が合否ボーダー上にある場合などが挙げられます。いずれにしても、大学院試験においては筆記試験の成績が重視されている傾向が見られます。

ただし、一部の大学においては研究計画書が合否を直接的に左右するものとなることがありますので、そういった大学院を受験する方は研究計画書を中心に受験計画をたてる必要があります。

次に、面接試験にお訪ねします。大学院においては面接試験も重視されていると思いますが、臨床心理系の大学院ではどういった位置づけでしょうか。

一般的には、面接試験単独で直接、合否の判定を決定するということは考えにくいと思います。そのため、筆記試験も重要であることは間違いないでしょう。面接試験では、多くの大学では人物確認の側面が強いようです。大学院側は臨床心理士という援助者になるための適性を確認する必要があると考えているからです。また、その一方で臨床心理士という資格が一般的になってきたことに伴って、どれだけの志望動機があるのか、問題意識があるのかを確認する意味で面接試験を重視する大学院も多くなってきています。

同系学部からと異系学部からとでは質問内容は異なるのでしょうか。

はい、心理学部からの受験者は志望動機よりむしろ研究内容について問われる場合が多いようです。ただし、臨床心理でない内容を卒論で提出し、大学院で臨床心理を志望する場合、なぜ臨床心理なのかを説明できるようにしておかなければなりません。また、異なる学部からの受験者は志望理由についてはしっかりと考えておく必要があります。さらに、隣接学部(例えば、教育、社会福祉など)からの志望者も、なぜ臨床心理なのか、現専攻との違いを含めてしっかりと説明する必要があります。

まとめますと、臨床心理系の大学院入試も他の大学院入試と同様で筆記試験が重視されているということです。また、研究計画をしっかりさせることは面接試験、志望校選びにも重要なポイントといえます。英語、専門といった筆記試験対策を軸に、早めの研究計画書の準備をすすめることが合格への近道といえるでしょう。

3 社会人受験生の現状と入試における留意点

最近、社会人の方も臨床心理系の大学院に多く志望するようになりました。中ゼミでも多くの社会人の方が合格を目指し、がんばっているのを拝見しています。社会人の方にとって、進学における重要ポイントとしてどういったことが挙げられるでしょうか。

社会人の方は時間、仕事、周囲の状況などを考えると、学生と比べて大変であるといわざるを得ません。まずは「時間の確保」、「周囲の理解」の2点が最低限必要なことです。仕事の両立で勉強時間の確保は難しいことは明らかです。どれだけ、時間を捻出するかが受験を成功させるポイントとなります。そうなると、仕事の両立を考える場合には、受験計画を1年と見るのではなく、2、3年のスパンで考えるということも必要になってくるでしょう。また、時間の捻出のため仕事、家事等に支障を来す場合もあります。その時に周囲の理解が大変重要となってきます。逆に周囲の理解がないと非常に受験勉強も困難となり、勉強を中断してしまった例もたくさんあります。職場、家族の理解をしっかりと得た上で受験対策に取り組むことが賢明です。

また、社会人の場合、学費の確保、生活設計など経済的な質問がされます。また、経済的問題点を解消することは大きな部分を占めています。経済的問題はしっかりと解消するといった人生設計が必要だと思います。

社会人の方の中では年齢について心配する人もいるようです。臨床心理士をする上で年齢は関係ありますか。

確かに40歳を超えると頭が固くなり、臨床心理士の仕事内容に向かないという意見もあるようですが、そうとは限りません。大事なことは、自分の経験のみにとらわれず、ゼロから学ぶという謙虚さがあるかどうかです。社会人経験が豊富な人に限って、とかく自分の経験に固執してしまうことがあります。そうではなく、あくまでも自分のプライド、自分のキャリアにこだわらずに、勉強に邁進できる人が臨床心理士に重要な適性なのです。たとえ、20歳代でも、自分の社会経験にこだわりがあるようでしたら、なかなか難しいといえるでしょう。ですので、特に社会人は年齢を気にすることより、謙虚さをしっかりと示すことができるかどうかが重要でしょう。

近年、放送大学や、通信制大学卒業の社会人の方が大学院を志望するというケースが目立っていますが、こういったケースで注意すべき点はどういったことでしょうか。

確かにこのケースは最近、増加傾向にありますね。注意点として論文の書き方を一から勉強してもらうことが重要です。通信大学では論文指導があまりなされません。そのため、論文の書き方が分からないまま卒業しているケースが目立ちます。論文の書き方が分からないことは、そのまま解答論文が書けないことにつながります。まずは論文の書き方を身につけることが大切です。ですから、該当する受講生には小論文の授業をお勧めする場合があります。

また、そういった方は体系的な勉強がなされていない場合が多いのです。どうしてもかたよった関心に沿った勉強となり、視野を狭めているような印象を受ける人がいます。非常にもったいないと思います。むしろ、大学院入試では体系的な勉強をしてきたかどうかが問われます。基礎分野も疎かにせず、広い視野でもって勉強をすすめてもらいたいです。

加えて、通信制大学を卒業するだけの勉強量では、大学院入試に向けての勉強量としては圧倒的に少ないということがあります。そういう意味でも一から勉強するつもりでかなりの勉強量が必要とされることの覚悟が要ります。

では、これから臨床心理系の大学院をめざす社会人の留意点として、他にどういったものが挙げられますか。

自分の状況を確認する必要があります。自分の経験に固執してしまうとそれだけ視野が狭まります。社会の中で様々な経験をしてこられたことが、学生にはない社会人の強みでもあります。いかに自分の経験を客観的に、学問的に展開できるかが重要です。どれだけ自分を客観視でき、学問的に分析できるかが臨床心理士指定大学院で求められる社会人受験生のポイントといえます。

臨床心理系の大学院でも「社会人入試」という制度がありますね。これは一般の社会人でも受験は可能なのでしょうか。

大学院の社会人入試の対象は心理系現場の経験者中心となっています。一般の社会人の方は難しいでしょう。現実的にみて一般入試をお勧めしています。

臨床心理士指定大学院入試における難易度はこれからどうなるでしょうか。展望をお聞かせ下さい。

現在でも大学院入試の難易度は二極分化が進んでいるといえましょう。また、社会人である期間が長ければ長いほどその社会人経験について説明が要求される傾向が強まります。また、これほどまで、認定校が増加したことで、今後は臨床心理士においても学歴が介入してくる可能性がでてくるでしょう。将来的には、どの大学院でも良いということではなくなるのではないでしょうか。現実に、院生の学力差や臨床心理士試験の合格率に大学院に差がでてきているようです。

4 臨床心理士指定大学院受験英語対策

最近の臨床心理士指定大学院入試全体の動向はいかがでしょうか。(難易度、試験形態、受験生層など)

全体の動向は大きくは変わってないといえるでしょう。ただ、英語の問題形式において全文訳はやや減る傾向にあり、反面、要旨把握、題名選択、英作文がやや増えているといえるでしょう。受験者層は依然として非心理学部出身者、社会人が多いという傾向は続いています。

特に臨床心理士指定大学院の試験の難易度はここ数年、変化したのでしょうか。

全体としての難易度はそれほど変わっていないと言えるでしょう。ただし、全体的な問題傾向は基本レベルの専門的問題の出題が増えています。そのため、基礎的な学習を、ポイントをおさえてしっかりと網羅的に学習した方であればどこかしらの大学院には合格しやすい傾向にあります。ただし、基礎レベルの領域は幅広く概論書を数冊読んだ程度ではなんとかなることはほとんどありません。また効率よく学習するのも、これまでの心理学の学習経験がない人には容易ではありません。よって、時間が少ない社会人や心理学の教育を受けた経験の少ない他分野からの受験者にとっては自学習だけではなかなか合格は難しい状況になってきていると思います。

また上位校では、より質の高い入学者を求めていますから、基本領域をベースにより専門に特化している問題を出題したり、英語の出題形式に一般とは違う形式を加えたりすることもあります。加えて、一部の上位の大学院では心理学専攻者を優遇することもあります。

少なくとも、臨床心理士の資格取得が希望ならば大学ブランドにはこだわらずに合格を目指していった方が現実的と言えるでしょう。

大学院試験全体に関して英語の比重は大きいのでしょうか。

英語の配点が大きいわけではないですが、英語ができないと合格は難しいということはほぼ間違いないといえます。特に何点必要ということではなく、本番で受験生全体の平均点を上回ることが最低条件といえるでしょう。

特に臨床心理士指定大学院についても上記と同じような傾向が見られますか。

全く同様であると言ってよいでしょう。

臨床心理士指定大学院の英語問題の出題形式について教えてください。

基本的に長文が出題されるのはどの大学でも同じです。その長文問題で、全文訳、部分訳、穴埋め等の形式で読解力をみているようです。また、大学院によっては英作文が加わることもあります。

大学院によって問題の形式は変わるのでしょうか(文法問題も出される大学院の有無)。

大学院によって出題形式は大きく異なります。穴埋め問題が出題されるところもありますが、それは文中の心理学的タームを埋めるものがほとんどです。大学受験のように純粋な文法問題が出題されることはほとんどないといってよいでしょう。

英文和訳の場合、どういった内容の文章が出題されますか。

大学院により、また年度により異なります。ただ、大きく心理学的な内容の文章が出題されるところと、心理学とは全く関係のない文章が出題されるところとに分けられるでしょう。いずれにせよ、研究者になるための必要な英語力の読解力を試す長文が中心となります。

英語の難易度が高い大学院、難易度がそれほどでもない大学院はどういったところが挙げられますか。

難易度の高いところとしては、先ほどあげたような大学院があります。それ以外の大学院については、そう大差はないように思えます。しかし、問題の難易度はあまり気にする必要はないでしょう。要は、受験生の平均点を上回ることが肝要なのですから。

難易度の高い大学院について、どのくらいの英語の学力が必要ですか(例えば英検○級、TOEFL○点など)。

大学院試験の英語で必要とされる学力は、英検やTOEFL等の点数で示すことはできません。英検等の英語資格は実用英語を中心としたもので、研究者を目指す大学院の試験とは異質なのです。とにかく大学院英語は読解力が中心です。あえて必要な英語レベルを挙げるとするならば、ヒルガードの原著(“Hilgard’s Introduction to Psychology”)を辞書を使って訳せる、という程度が基本だというぐらいです。

合否判定に英語の成績はどのくらい作用されるのでしょうか。

英語の点数を足切りとして使うところもありますが、全体の合計に使うところもあります。どちらにせよ、英語は平均点以上の成績が合格のためには不可欠といえるでしょう。

これから本格的に試験対策の英語の勉強を始めるにあたって、まず何をすべきでしょうか。

まず、薄い文法書(章末問題のついているもの)を一冊仕上げ、自分がどの章(文法事項)が弱いかを把握すること。それが出発点です。

英語の勉強でお勧めの辞書、参考書はありますか。

研究者を目指すには、研究社『リーダーズ英和辞典 第2版』が最も優れている辞書といえます。参考書としては旺文社『ロイヤル英文法』の第1章を10回くらい繰り返し読むことを勧めたいです。

文法、単語、専門知識など英語の勉強でどれを優先すべきでしょうか。

どれも並立的に勉強をしなければならないでしょう。それは、自転車の両輪のようなものであるからです。優劣をつけずに、上手な計画を立ててクリアすべきでしょう。

専門の英語論文、英語の専門書を読むことは受験対策として有効ですか。

特に英語力のある人にとっては有効でしょうが、一般的にはお勧めできないといえます。

中ゼミの授業を受けるにあたって留意する点は何がありますか。

とにかく出席すること、復習すること、です。したがって復習可能な範囲で授業をとることが重要です。

現在大学生の場合、何年生の頃から大学院の英語対策を始めるべきでしょうか。

早ければ、早いほど良いでしょう。大学生ならば、その大学で開講されている英語の授業を、院の受験勉強のつもりで受けるとよいでしょう。とにかく心理学の概論書を一冊仕上げることが必要なのですから、早いにこしたことはないでしょう。

現在社会人の場合、英語の対策において注意すべき点としてありますか。

英語から長く離れているので、まず薄い文法書を一冊仕上げることと、『ロイヤル英文法』(旺文社)の第1章を暗記するまで熟読することを勧めたいですね。

受験対策として過去問題の検討はどのくらい必要ですか。

ある程度勉強してから過去問を解いてみると良いでしょう。早すぎると自信をなくすので、解くのは急がなくて良いでしょう。ただし、大学院によって異なる出題傾向をみるために早めに出題形式をみておくことは勧めます。

専門の英語の単語はどの程度まで必要でしょうか。

専門は専門としての試験があるので、英語の対策としての専門用語は1000~1500語程度の用語集をマスターしておけば十分です。

最後に先生のほうからアドバイスをお願いします。

英語は3日やらないとカンが鈍るといわれています。とにかく毎日英語に触れない日はない、という学習計画を作ってください。健闘を祈ります。