教育系大学院合格のコツ

教育系大学院担当講師の高橋幸絵先生に、合格の秘訣についてインタビューした内容を掲載しています。インタビュアーは、中ゼミの宍戸部長です。なかなか情報が出回らない大学院入試の現状や受験対策方法など、現場にいる先生ならではのお話をいただきました。教育系大学院進学を考えているみなさんに、是非お読みいただきたい内容です。

教育系大学院入試の現状

はじめに

今日は教育学の高橋先生に教育系の大学院についてお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

よろしくお願いいたします。

他大や他系統からの合格状況

今年度は教育系からたくさんの方が合格されていますね。東京大学には2人、東京学芸大学に5人、横浜国立大学に3人、千葉大学に3人、早稲田大学に2人、他にもいくつも大学に合格されていますね。

そうですね。本当に今年の学生さんは、よくがんばってくださったと思います。一般的な大学院受験だけでなく、教職大学院や社会人特別専攻、研究計画書と口頭試問だけの試験と、さまざまな試験が課される中、みなさんほんとに健闘しました。

合格された方は、卒業された大学とは異なる大学院へ進学されている方が多いのですか。

はい、出身の学部・ゼミから同じ教官の研究室に進まれた方は、今年は本当に少なかったと思います。同じ大学内で、教育系以外の学科から教育系の研究科に合格された方はいらっしゃいましたが、他の方はみなさん、出身の大学とは違う大学院に合格されています。

出身大学だけでなく、出身学部学科も異なる方も多いのですか。

はい、圧倒的に多くの皆さんが、他分野から受験されていますね。合格された方にお聞きすると、内部の受験者が不合格で、他分野出身の中ゼミ生が合格しているというケースも少なくないようですよ。

受験に必要な目標意識とは

中ゼミに入学する方は、はっきりとした目標意識を持って教育系大学院を受験されているのですか。

いえ、必ずしもそうではありません。中ゼミに入学された時点では、研究の方向性がはっきり決まっている方はむしろ少数派です。今回、研究者養成の難関大に合格された方も、修士論文のテーマはものすごく迷ってらっしゃっていました。その方は、心理学系の学部だったので、自分の興味分野が教育心理学だと考えていたようなのですが、面談でお話をお聞きしていると、むしろ教育思想研究に位置付くと思いました。研究計画書の指導を重ねていく中で、学生の研究内容に合っていると思われる文献を私の方から紹介しました。そうしたら、ご本人が、ものすごくそれに感銘を受けてくださったようです。以降、その方向性で研究していきたいということになりました。

先生の方のアドバイスで、研究内容を明確にした上で受験校を決定し、合格されたということなんですね。

そうですね。当初、彼女は合格された大学の受験をまったく考えていなかったようです。余談ですけれど、彼女の場合は受験の前日まで教育実習だったんですよね。ただ、そのスケジュールはあらかじめわかっていることでしたから、1学期中にしっかり勉強をしようと話をして、早め早めに取り組んでいました。無事に合格されて、受験スケジュールの面においても計画的な指導ができたかなとほっとしています。

それは大変でしたね。

でも、当日の試験に恵まれて(笑)。これまでの過去問傾向とは違う分野からの問題が出題されてしまったんですが、幸いにも中ゼミの授業では扱っている分野でした。おそらく、過去問傾向を信じてそれだけを対策された方は苦労されたと思います。彼女は、とりたてて学習していた分野ではなかったようですが、いつも授業で聞いている内容だったので問題なく解答することができたようです。

効率よく勉強=合格?

そうすると、やはり、幅広く勉強しておいた方が良いということですね。

そうですね。それは言えると思います。出題傾向は変わることがありますので、教育学全般の学習をしておくことは重要になると思います。

結局、その分野だけがわかっているだけではだめだということですよね。広い視野が必要だと、大学院の先生方もお考えだということですよね。

そうですね。特に上位校はそうですね。横浜国立の学校教育専攻の場合ですが、6分野の中から4分野を選択して解かせる形式なんです。4つというのは実はかなり広い領域なんですけれど、それを幅広く学習しておくことが必要だと思います。

どうしても自分の知っている専門の分野に偏ってしまいがちですからね。知識も不足しているでしょうし、取り組みにくいところもあって、手を抜きがちですよね。過去問だけ見て、出てないからいいやと多くの学生は考えがちですよね。本当はそれじゃいけないんでしょうけれども、学生からみるとそう思い込みたいものなのでしょうか。

そうですよね。効率的に受験勉強をしたいと思うものですからね。でも、今年、合格された学生さんをみていると、他の学生さんの研究テーマも含めて、一緒になって積極的に学んでいこうとされていた方が合格されていたと思いますよ。

バランスの良い勉強をした、トータル的なものが試験においても試されるということなんですね。

そういうことになりますね。

中ゼミ生の進学現状

それから、上越教育大には8人、合格されていますね。

そうですね。上越教育大は、教員免許プログラムがありますから、全く教員免許を取得していない方でもゼロから教員免許を取得することができます。ただ、今年度から、教員免許を取得する選択肢が他にも増えてきましたので、他の大学院を受験される方が多かったように思います。教員免許プログラムがある大学院は他にもいくつかありますが、現在制度が移行時期だということもあって、上越教育大の受験者が多くなっています。兵庫教育大は取得できる教員免許に制限がありましたから、今年は中ゼミからは受験されていないと思います。鳴門教育大には合格されている方がいますが、地理的に近い方が良いということで、学生さんは上越教育大を受験されるケースが多いですね。それから、千葉大学では、カリキュラム開発専攻とスクールマネジメント専攻にも合格された方がいらっしゃいます。この2つの専攻は、英語無し受験ができ、現職教員の方も多く出願される専攻です。ですから、学部を卒業してすぐに受験される方にとっては、相対的に不利な部分があるかと思います。特に、スクールマネジメント専攻は、ミドルマネジメントをする現職の教員層が受験してくる専攻です。今年は、千葉大の内部進学のストレートマスターの学生さんが不合格だったそうです。このような状況を考えると、合格された中ゼミ生は、本当によくがんばってくれたと思いますよ。もちろん彼らは、しっかり英語の勉強して、英語が必要な大学にも十分合格できたとは思いますが、やりたい研究の内容から、これらの専攻の方が良いと判断し受験されたんです。

社会人の受験について

本当にすばらしい実績が残っているということなんですけれど。社会人の方はどうでしょうか。

社会人の方も多いですね。お仕事を辞めた後、教師を志して中ゼミにいらした方もいらっしゃいますし、現職の教員の方でお仕事を続けながら大学院に通われる方もいらっしゃいます。

そうすると、中ゼミの教育系大学院コースには、大学4年生の方ばかりでなく、一度社会や出られた方が教員になりたいと考えていらっしゃることも多いのですね。

そうですね。

特にそういった社会人の方々は勉強からも随分離れていると思いますし、学部4年生の方の場合も内部の競争も厳しいでしょうし。そういった中でこれだけの合格を出されているということですが、どんなことが考えられますか。

社会人の方の場合ですが、確かに、勉強から離れていて大変なところもあるかと思うんですけれども、お仕事を辞めてまで先生になりたいという方ですから、最初のところの動機がしっかりしていますよね。ですので、積極的にあちこちの予備校を調べてから中ゼミにいらしている方が多いんですよ。その上で、中ゼミの内容を評価して、入学してくださっていると思います。それから、社会人の方の場合、ある意味で、絶対に合格しなくちゃいけないとければ焦っているところがある方もいらっしゃいます。そのため、あまりにも勉強効率を求めすぎてすごくピンポイントで勉強したいと思われる方も多いようです。今年の学生さんが、というわけではないんですけれども、そういう方が多いような傾向にあると感じます。ただ、そういう場合には、私の方で、最初の段階から考え方を変えていけるような指導を行っています。というのは、社会人の方の場合、教員免許の取得できる大学院を受験したいと思われる方が多いように思うんです。そういう大学の試験の場合、知識を問う学科試験だけでなく、幅広い実践力や人間性を問うような試験が課されます。狭い領域で解けるような問題ではないんですよね。なので、狭い領域で効率的に暗記して学習していくといった学習観をいったん崩して、教師の実践記録などを幅広く読み、先生としての適性を育てるような指導をしているつもりです。

やはり、社会人の方の場合、要領良く、マニュアル的に、これとこれとこれだけを覚えればいいんだというようなことを求める方が多いでしょうけれども、やはり、それだけでは教授に見透かされてしまうというか、本当の力があるわけではないと、捉えられてしまう可能性があるというわけですよね。

そうですね。教員養成系の場合、人間性のようなものが問われてきたり、答えの無いような問題が出題されてきますから。例えば、子どもの作文や手紙に赤ペンを入れるといったような。

そうすると、本当にマニュアルがきかないということなんですね。

そうなんです。ですので、暗記で乗り切れるという学習観を崩すようにします。でも、一緒に過去問をやっていく中で、確かに暗記だけではだめだと、もちろん、暗記も必要なんですが、それだけでは足りないということを納得してくださると、勉強はぐっと進んでいきます。最初のところをきちんと指導すれば、社会人の方はモチベーションが高い分、伸びてくださると思います。教員の採用状況なんですが、東京都の教員採用試験では、今年から、社会人経験者の年齢制限が実質、無くなったんですよ。59歳までOKなんです。ですので、大学院でしたら3年、編入でしたら2年で教員免許を取得することができますから、全く教員免許を持っていない方でも十分に間に合う、ということになります。

他はどうなんですか。

関東近県でも、実質年齢制限が無いところはあります。ただ、実技試験等が自治体によって異なっています。そういったことから判断すると、やはり、東京都がお勧めですね。

教員免許取得の現状

教員免許プログラムとは

教員を目指してという方が多いようですけれども、先ほど出された上越教育大の「教員プログラム」というのはどのようなものなんですか。

これは、全く教員免許を取得されていない方向けのプログラムなんですけれど、通常、大学院というのは2年で修了できますよね。そして、教員免許がない場合には、教員免許が新たに取得できないというのが通常なんです。けれども、上越教育大等では特別なプログラムがありまして、学部の授業を聴講することで、原則3年間の在籍で教員免許が取得できるというプログラムになっています。上越教育大の他にも、兵庫教育大、鳴門教育大、愛知教育大等、このようなプログラムを設置する大学院は増えてきています。

専修免許状も取得できるのでしょうか。

はい。大学院修士課程の履修で専修免許状を取得することができます。

学部聴講と大学院の履修を合わせて、3年間で修了するということになるんですね。

はい。それで、私の方で上越教育大をお勧めしているのは、小中高の教員免許をすべて取得することができるからなんです。他にも教員プログラムを組まれている大学院はありますが、小学校のみなど、校種が限定されているケースが多いです。教員の採用状況を考えると小学校の枠は大きいのですが、小中一貫校の増加といった動きもありますので、小中高、すべての教員免許を取得されていた方が良いのではないかと思います。ですので、中ゼミ生には、将来の選択肢が狭まってしまう大学院受験をお勧めしていません。もちろん、中高の教員免許をすでにお持ちの方は別ですけれど。

それで、上越教育大に合格されている方が多いんですね。

はい。

一種免許と二種免許

二種免許が短大卒で取得できる免許、一種が四大卒、専修が修士課程修了で取得できる免許ですよね。二種だと採用試験で不利だということはありますか。

それは、公立学校の採用試験の場合には、全く関係ありません。二種免許だから不利だということはないのです。しかし、私立学校の採用の場合ですと、専修免許状が求められるケースもあります。特に、高校の採用の場合ですと、出願資格に専修免許状の取得が明記されていることがあります。特に理系の科目の場合には、専修免許状を取得していることがスタンダードになっているのではないでしょうか。これは、今年のケースではないんですが、以前の中ゼミ生で、大学を卒業して一種免許は取得しているものの、何度も採用試験に落ちてしまっていた方がいらっしゃいました。どうしても中高の先生になりたい、と。そこで、専修免許状を取得しようと大学院進学を考え、中ゼミに来校されたんです。結果、横浜国立大学の大学院に合格されて、専修免許状を取得、今は、私立の高校で先生をされています。ですので、中高の就職も考えると、小中高、すべて専修免許状にされておかれた方がよいかと思います。

今は、親御さんの学歴が高くなってきていますから、短大卒で先生になっても、ちょっと辛いところがあるかもしれませんね。四大卒、できれば、大学院を出られておいた方がいいかもしれませんね。親御さんの学歴が高くなっているとは言っても、大学院に行かれる方は少ないですから。そういった面では、大学院まで行っておくと親御さんの信頼を得やすいという面があるかもしれませんよね。

そうですね。

免許取得における情報の重要性

他にもこのような教員免許が取得できる大学院はあるんですか。

教員免許取得に関する情報は錯綜している部分もあって、みなさんがお調べになっても把握しづらいと思います。例えば、東京学芸大に行っても、科目等履修で学部の講義を聴講すれば、教員免許を取得できないこともないんです。ただ、科目等履修の場合は、いろいろ条件が課されていることもあって、個別の大学院毎に確認していく必要があります。また、2年間の大学院在籍中に、通学されている大学院だけで教員免許をゼロから取得するのは、難しいケースが多いようです。私の学生さんでも、単位が若干足りなくて、大学院入学後に相談を受けるケースがあります。まぁ、まったく方法がないわけではないので、いくつかアドバイスをしましたが。そういった方法を熟知していれば、教員免許を取得できないわけでもありません。教員免許の取得にはいろいろな方法がありますし、その方の取得している免許や単位によって、望ましい方法は違ってきます。そのため、私の場合は、それぞれ皆さんの状況とご希望をお聞きして、お一人おひとりに合ったアドバイスをさせていただくようにしています。

そういった情報を、ましてや全国的な大学に関する情報を持っている方というのは、あまりいらっしゃらないのではないでしょうか。

そうでしょうかね。私にとっては、これが普通なんですけれども(笑)。先ほどお話しした大学院で教員免許が取得できるという情報ですが、他の大学院受験予備校では、あまり紹介されていないようです。確かに、流動的な部分もありますので、紹介しないというのも仕方がないかもしれませんが。学生さんから聞いた話なんですが、彼は、自分で調べて、大学院で教員免許が取得できることを知り、そういう大学院に進学したいと思って、あちこちの大学院受験予備校に行ったそうです。でも、そこで話すと、「そんなの無理に決まってるじゃない」と言われてしまったとか。

そんなことを言われてしまったんですか。

ええ。本人は自分で調べているわけですよね。だから、確実に受験できることは知っている。けれど、教育に力を入れている大学院受験予備校でないと、こういった情報はないわけですよね。そもそも、教育に力を入れている大学院受験予備校ってあまりないと思いますし。これは一昨年の学生さんなんですが、仕事を辞めて進学を決意した男性の方だったのですが、「男性なんだから、大学院に行くならMBAを取得したらいい」と言われたみたいです。自分は教師になりたいと言っているのに(笑)。情報が無かったんでしょうね。

そういうことって、確かにありますよね。予備校が結果を出すために、本人と意図と離れてしまうことってありがちですよね。それは、すごくその学生さんにとっては嫌なことですよね。予備校っていうのは、学生さんのやりたいことをサポートするのが仕事のはずなんですが。

そういう意味では、私の方では、その方の進みたい将来ビジョン、研究の方向性に合わせて大学・大学院を選ぶよう、サポートしています。将来ビジョンをお聞きしてからですので、ご本人が選択していらした大学・大学院とは違う進路になることもあります。「どうしても上智大学に行きたい」「将来は?」「小学校の先生になりたい」「上智じゃ小学校の教員免許は取得できないから、大学卒業後、大学院に行くか、他の何らかの手段で別に教員免許を取得する必要もあるけれど、それでも上智に行きたい?」「だったら、他の大学にする」といったように。でもそれは、ご本人の最終的な目標に沿わせた進路の変更です。情報が少ない上で選んだ具体的な進路だったわけですよね。そこにこだわる必要はないと思っています。私自身は、ただ、大学や大学院に合格していただくだけではなくて、ご本人の目標に合った、それに最も相応しいような選択のサポートができればと思っています。すべての人にとって理想的な進路はないわけで、お一人おひとりに最善の大学や大学院をご紹介できればと考えているんです。中高の教員免許を取得したいといらした方については、特に社会科ですと、採用試験の倍率が高いですから、プラスして小学校の教員免許を取得するとか、専修免許を取得するとか、教師になるという夢に一歩でも近づけるように、進路を広げるようなアドバイスをすることもあります。もちろん中高の社会科優先なので、変更というわけではなくて、プラスしていくという発想です。先ほどの学生さんですが、すぐに中ゼミで勉強しようと決断し、無事大学院に合格、専修免許状を小中高すべて取得予定で、今夏教員採用試験を受験されるそうです。今はまず、3名の大学推薦枠にトライしていて、学内選考に通ればほぼ確実に採用試験は合格できると思います。大学推薦枠が取れない場合でも、社会人特別選考で受験をしていくそうです。今の東京都の倍率と彼の実力、人柄から判断すると、そんなに心配することはないと私は思っています。社会人の経験を活かして、現場でユニークな力を発揮してくださるだろうと思っています。彼が現場の教師として戻ってきて、これから一緒に共同研究ができればと、今から楽しみにしています。

研究志向と現場志向

そうやって道を開いてらっしゃる方がいらっしゃるということなんですよね。ところで、一般的な教育学の研究科になりますと、専修免許状の取得が目的と考えてよろしいのでしょうか。

そうですね。

あるいは、教育学の研究をしたいという方がいらっしゃるということですよね。

そうですね。東京学芸大に進学された方々の多くは、すでに一種免許は取得されていますので、その上で専修免許を取得し、さらに、ご自分がなさりたい研究テーマを深めていくために進学を決意されています。

その方々の将来の目標は、やはり教員でしょうか。

はい、教師を目指されている方が多いと思います。もちろん、研究者志望の方もいらっしゃいますが、多くの方は、専修免許状を取得して、教師になることを目指されているようです。

大学院に進学されて、教員としての資質を高めてから、現場に出られたいということなんですね。

はい。そうですね。

教職大学院とは

最近は、教職大学院というのができたようですが、これはどういったものなのでしょうか。

専門職大学院ですので、実践力のある教員養成を目指している大学院です。大きくは、2つぐらいの層の先生方を想定していると思います。いわゆるストレートマスターで進学された場合は、実践的な力をつけることで即戦力として現場に出られる教員の育成を目指しています。もう一つはミドルリーダーの育成で、現場で一定の経験をされた現職教員を対象としたコースが設置されているようです。

やはり、専門職大学ということで、すでに教員免許を取得していることが前提となっているのでしょうか。

そうですね。おおかたのコースは教員免許の取得が出願の条件にはなっているのですが、一部の大学院では、教員免許を取得できる場合もあります。ただしその場合は、大学院の在籍年数が延長されたり、他校種の教員免許の取得が条件になっていたりします。在籍年限が4年の場合は、あまりお勧めできないかとも思うのですが、ただ、東京都の場合は、東京都の教育委員会と連携関係にある大学院があります。大学院の教育課程を作成する段階で東京都の教育委員会がある程度関与している部分がありますし、教育委員会から講師の派遣があったりするんですが、これらの大学院を修了した場合、採用の段階で特例選考をすることが検討されています。ですので、東京都の教員採用試験を受験される場合は、東京都教育委員会と連携している教職大学院に進学することにはメリットがあると思いますよ。それから、教職大学院と採用試験の両方に合格された場合は、連携している大学院であれば、合格者の名簿登載期間が延長されることになります。ですので、採用試験と大学院受験の併願も可能です。

そうなんですか。すべての大学院というわけではありませんよね。どういった大学があるのでしょうか。

創価大学・玉川大学・帝京大学・東京学芸大学・早稲田大学の4校の教職大学院が、現在、東京都と協定を締結しています。

教育系大学院試験対策

教員採用試験の現状

これらの大学院の場合、学部で教員免許を取得してから進学されれば、採用試験で有利になるということがあるわけですね。東京都の場合は。

そうですね。

それは、東京ということですから、小中高の公立校ということですか。

そうですね。東京都の教員採用試験の場合、小学校は倍率が3倍を切っていますので、中学・高校の先生を目指されている方にとってはかなり有利なるのではないかと思います。教科によっては10倍を超えていますから。

小学校の倍率がこんなに下がるとは、信じられないようにも思えますけれども。それだけ職場が大変ということでしょうか。

そうですね。それもあるかもしれませんが、東京の場合は、子どもが増えたときに同じ世代の教員を大量に採用してしまったので、このようなことになることは、実は前からわかっていたことでもあります。

団塊の世代が抜けたからということですか。

それもありますが、それだけではありません。教員の年齢分布を見ると50代に山がありますから、これから教員免許を取得しても、東京都・小学校の1000人規模の大量採用期には間に合います。

ここ数年は、小学校に関しては教員になりやすい時期が続くということですね。

はい。東京だけでなく、首都圏はじめ大都市圏ではそのような傾向にあります。それに加えて、実は、若い先生の離職率が高いということもあります。大量採用された世代の方々が、1年経たないで辞めてしまわれる方もいるようです。

倍率が下がっていて採用されやすくなっていても、続かないケースが増えてしまっているわけですね。

はい。もちろんこれは、教員に限ったことではありませんが。もちろんこれは好ましいことではないのですが、その分、採用者の枠は確保されることになりますよね。

そういった意味では、しっかり勉強をしてから教員になられた方がいいですよね。

そう思います。しっかり学んで、実力をつけてから現場に出られた方がよいと思いますよ。教師になるという自覚、責任を持って現場に出ていただかないと、子どもが困りますよね。年度の途中で担任が替わってしまったりしたら。

この前、電車に乗っていて、お母さん方のお話が聞こえてきて。1年間で担任が3回替わったとか。まあ、出産で替わったということもあるかもしれませんが、保護者の「突き上げ」で先生が来なくなってしまったりというようなことがあったみたいで。1年間で3回。びっくりしちゃったんですけれど。

ええ。そういったケースもありますよ。

子どもがかわいそうですよね。

ええ。ですから、しっかり力をつけて、先生になってほしいと思いますね。そういった意味では、教職大学院の活用を積極的に考えていただいてもいいかな、と思いますね。

しっかりとした揺るぎない自分をある程度作ってから、現場に出てほしいと思いますね。もちろん現場は、そんなに簡単ではないとは思いますけれどもね。

ご本人も、自分は大学・大学院でこれだけのことを学んできたんだ、というしっかりとした自信を持って、現場に出ていっていただきたいと思いますね。

教員になるにあたって、いろいろと準備が必要だということですよね。例えば、医療や薬学でも、大学は6年の課程になりましたよね。教員にも、本来6年ぐらいの教育期間が必要なのかもしれませんね。

教員養成を、修士課程レベルに引き上げるべきだと主張されている専門家もいらっしゃいますしね。ですので、積極的に大学院に進学されて、ご自分の専門領域を深めていってほしいなと思いますね。

大学院受験の選択肢

ということは、教員を目指されている方が大学院に進学される場合には、主に3つの選択肢があるということですね。教員免許を取得していない方が大学院でゼロから教員免許を取得する場合、もう一つは、すでに一種免許を取得されている方が2年間で専修免許状を取得しながら研究も深めていく場合、そしてもう一つは、すでに教員免許をお持ちの方が専門職大学院に進学されて実践的な力量を高めることを目指される場合、ですね。そして、専門職大学院は東京都の場合、採用時に特例選考があるということですね。それから、できれば、小中高のすべての教員免許を取得しておきたいということですね。社会人の場合は、ゼロから教員免許の取得を目指される方が多く、学部4年生の方は既存の教育学研究科への進学を希望される方が多いということですね。

ええ、そうですね。

まだ、教職大学院はそれほど多くはないということですね。

そうですね。これから、だと思いますね。まだ学生さんの方に浸透していないということもありますし。

現職の先生方が行かれるところ、というイメージがあるのかもしれませんね。

そういう意味では、私の方では学生さんの希望をお聞きしながら、適切な進路をアドバイスすることができればと思っています。研究テーマがはっきりしている方には既存の教育学研究科をお勧めしています。けれどもそうではなくて、まずは、何がなんでも先生になりたい、修士論文を書くことよりも教師としての実力をつけていきたいという方には、教職大学院の方をお勧めしています。

教職大学院は1年ですか。

現職の経験をお持ちの方の場合には1年制のコースもありますが、通常は2年制、教員免許を取得する場合には、3年、4年在籍することもあります。

修士論文はないということですか。

はい、そうです。

実践的な内容になっているということですか。

はい。学校における実習の時間が既存の大学院よりも多く設定されていたり、一定程度の実務家教員が指導することが義務づけられています。ですので、学生さんの関心を聞きながら、志望校についてはアドバイスをするようにしています。

もし、子どもとのコミュニケーションや親御さんとの関わり等、不安な部分があるようだったら専門職大学院に行かれた方がよいでしょうし、理論的に深めていきたいということであれば既存の教育学研究科に行かれた方がよいということですね。免許取得プログラムでは上越教育大、研究では東京学芸大が先生のお薦めですか。

そうですね。免許取得プラグラムについては、ゼロから免許を取得される場合には小学校だけの免許プログラムではなくて小中高のすべての教員免許が取得できるプログラムを実施しているところの方がよいと思います研究については、学生さんの研究テーマによりますね。研究テーマによっては東大や一橋、京都大学等ももちろんお勧めしています。テーマが深められるところをお勧めしていますので、学生さんによってお勧めする志望校は様々です。必ずしも東大が一番良いというわけではありません。

例えば、学部のときの大学がそれほど有名校ではない、偏差値がそれほど高くない大学だった場合、今まで名前があがってきた大学は、国立だったり、私立でも比較的有名校が多かったようで、自分には難しいのではないかと考えるケースも多いと思うんですが、そのあたりはいかがでしょうか。

中ゼミから国立大や私立の有名校に合格された方々の出身大学は、そういった大学ではない方も多いですね。

いわゆる日東駒専レベル・・・

そうですね。そういった大学のご出身の方もいらっしゃいます。もっと低いところの方もいらっしゃいますね。

そういうところから、国立大学の大学院に合格されているというわけですね。

はい。

逆に言えば、もっとレベルの高いところから受験されている方が落ちているのかもしれませんね。

そうですね。合格した方から聞いたのですが、国立の内部進学を目指していた4年生が不合格で、私学出身の中ゼミ生が合格していたというケースを聞いたことがあります。また、大学の同級生も同じ大学院を目指していたのですが不合格で、中ゼミに通っていた学生さんの方は合格されたというケースもあります。

それはどうしてでしょうねえ。

研究計画書

大学院に合格するためには、英語、専門、研究計画書の3つが主に必要になってきますよね。特に他分野から受験していく場合には、研究計画書を作成するのに苦労されているように思います。例えば、東大や東京学芸大といった上位校の場合には、学部での研究が問われています。これまでの研究成果について記入する箇所がありますから。これは、他学部出身でも問題はないんですが、修士論文との関係でいうと、研究に発展性や連続性がないと難しいところがあるんですよ。教育学部出身であったとしてもそれまでの研究と修士課程での研究が全く別のものであると「学部からやり直したら」と言われていた方もいたようです。中ゼミ生ではありませんが、試験のときに他の受験者から聞いた、と。逆に中ゼミの子たちには、出身が教育学部ではなくても、学部の卒論と修士論文の研究計画書が連続するように指導をしています。例えば政治学科出身でも、卒論では政治思想について扱い、修士課程ではその思想が具現化された教育行政の現場について研究する、といったように。こういうようにしていけば、連続していきますよね。

説得力のあるもの、研究の流れがあるものを、ということですよね。

ええ。ですから、学部がまったく違っても、研究の内容が連続するようなものにすれば、他分野出身でも大学院入試において不利なことはないと思っています。ですので、卒論も含めて、研究計画書や出願書類を準備していった方が良いと思っています。特に難関校を志望されている方は、学部4年生の4月からではちょっと遅いように思うことがあります。卒論のテーマを決める前に、是非、中ゼミに来てほしいと思っています。

3年生から来てほしいということですね。

はい、そうなんです。卒論が固まってからだと、連続性・発展性のある研究計画書を作っているのが難しい場合がありますから。

それは、卒論でやったことを研究に持っていけないということですか。

大学院の専攻や教官の研究領域につながっている方の場合はいいんですが、まったく他分野からの場合は、あとから修正するのが大変なことがあります。また、テーマ自体が修士論文では扱いづらいものもありますよね。ですので、今回、難関大に合格された学生さんも、卒論を一緒に考えていたところがありまして。まず、大きな研究の構想を作りますよね。そして、卒論ではここまでやって、修士論文ではここから、と。卒論までの仕事と修士論文での仕事を始めに設計した上で研究計画書を書くように指導しています。そうすれば、連続性がありますから。もちろん、実際に修士課程に入られてから、研究計画書は大きく変わっていくことにはなりますが、入学前にこのように設計して、研究というもののイメージをしっかり作っておくことは大切なのではないでしょうか。

なるほど。研究には連続性があるわけですから、修士で研究することを考えて学部の卒業論文のテーマを考えていく必要がありますよね。でも、学部ではそこまでの指導を受けられないんでしょうかね。

そうですね。大学の内部のことはよくわからない部分もあるんですが、中ゼミに来られる学生さんの場合は特に他分野の方が多いわけですから、出身の学科の卒論としてはいいのかもしれませんが、教育学研究科に出願するものとしては無理があることがありますよね。

なるほど。ということは、中ゼミに来て、研究がどういうものかということを改めて学んでいただくということになりますよね。

そうですね。特に難関大を志望されている方についてはそこが大事だと思いますね。

口頭試問

先生といろいろ話す中で、口頭試問の対策にもなっていきますよね。

そのあたりでは、よく学生をいじめます(笑)。

よく大学の先生方が、口頭試問で聞くと、研究計画書は立派なのに全然答えられない人がいる、誰かに書いてもらっているんじゃないか、予備校で書いてもらっているんではないかと言われたりすることがあるようですが。もちろん中ゼミでは書いてあげることはしませんけれど。結局、自分で勉強して積み上げて書いた研究計画書でないとだめだということですね。でもそこで、人の目が入るから、良いものに仕上がっていくということですね。

そうですね。

個人では、独学では難しいかもしれませんね。

そうですね。中ゼミでは「研究計画書作成ゼミ」という授業の中で集団で研究計画書の検討を行います。自分の研究計画書について指導を受けているときっていうのはパニくっていますから、何を言われているかよくわからないことってあるんですよね。でも、研究の方法を学ぶときには、他の人が言われていることはよくわかるっていうことがよくあるんですよ。それなので、授業の中で、オープンにして研究計画書の検討を行います。授業の中の議論でいろいろな質問に答えていますから、自然に口頭試問対策になっているということもありますよね。授業の中の他の学生さんからの質問の方が、試験当日の質問よりも厳しかったというのは、よく学生さんが言われていることですね。

英語

客観的に評価してもらうというのは大切なことですよね。

それから、英語の先生と私は、結構連絡を取り合っていました。当然ですけれど、英語の実力って重要ですから。教育系の大学院の英語の場合には、研究科共通の英語が出題される場合には、一般的な教育系の英語の学習だけでいいんですが、専攻毎に内容が違ってくる場合があるんです。音楽教育だったら英語の問題の中に楽譜が登場していたり。こういう専門用語についても英語の先生はフォローをしてくださっていたので、すごくありがたかったと思っています。それから、英語については、本人の自己評価と先生の評価が違ったりするので、先生からも直接お聞きしながら、全体の受験の対策をしていました。「大学院教育学論文」の授業の中でも英語で専門を学ぶような時間も取っています。英語で書かれた専門論文をどんどん読んでいく形です。私の授業の場合には、もちろん文法よりもその専門分野の理解に重点を置くことになりますが。昨年の場合ですと、英語の文献で教育心理学や教育社会学の基礎を学んだりしました。

専門論文

あとはやっぱり、論文ですね。

そうですね。専門の力がなければお話になりませんからね。日本語で理解できない専門論文を英語で理解できるわけがありませんから(笑)。専門の勉強は相当やってもらっています。とにかく、たくさんの文章・論文を読んでもらっています。たくさんの文献を読んでいないと、当日の試験でも何も書けませんし、研究計画書も書けません。私たちは、学生さんと5分話すと、本を読んでいる人かそうでない人かはすぐにわかります。話す内容はもちろんですが、話し方の文体というか、そういうスタイルが違いますから。普段読んでいない人に、ただ、「読みなさい」というだけでは読めないものです。ですので、授業の中で、必要なものはどんどん配布して、読むポイントを解説し、ひたすら読んでもらうようにします。そうするとそのうち、自分で読めるようになっていきます。受験の頃には、相当読めるようになっていたと思いますよ。こういうふうにして基本的な知識を身につけてもらった上で、論文も執筆していただきます。また、授業の中で、積極的に発言をしてもらうようにしています。全く最初は発言できない方でも私は全然気にしていません。順番に発言させるということはしません。けれども周りの人の発言を聞きながら、一人ひとりは内省していると思います。そして、だんだんに発言するようになっていきます。また、全く書けなかった方でも、発言をしながら考え、だんだんと書けるようになっていくものです。

ミニ大学のような感じですね。先生のやってらっしゃる内容をお聞きすると。

そうですね。「大学院教育学論文」は学生にレジュメを切って発表してもらうこともありますから、いわゆるゼミナールのスタイルで運営するときもありますし。私自身は、授業をいくつか持たせていただいておりますが、それぞれの授業の目的、方法、運営の仕方を完全に分けています。編入の方の授業では、ディスカッションはあまり取り入れていません。どちらかと知識を注入することに力を入れています。ですので、教育学部出身ではない方には編入の授業も取っていただいて、そこで基本的な知識を獲得してもらうようにしています。編入の試験自体、そういった知識の有無を問う出題が多いですし。編入の授業は、知識を入れるだけで精一杯ですので、論文の書き方、構成等に割く時間はあまり取れません。ですので、「小論文基礎演習」で課題文や資料の読み方、論文の構成の仕方といった「書き方」を教えるようにしています。こういった基本的な学習に対して、「大学院教育学論文」では、学生さんのアウトプットを重視した授業運営をしています。大学院受験では、当然ですが、発展的な問題、答えがない問題が出題され、研究計画書や口頭試問の対策が必要になってきます。自分の頭で考えて、それをアウトプットしていくことが求められています。ですので、ゼミのような学生さんの発言の場を作りながら授業を運営しています。

求められる試験に適した授業運営をされているわけですね。

そうですね。試験によって求められている学力は異なりますから、それに合わせた授業スタイルを取っていかないと、試験に合格するのは難しいと思いますから。

大学院志望者に向けて

他に、これから教育系大学院を目指そうと思ってらっしゃる方にアドバイスはありますか。

そうですね。私自身、中ゼミの学生さんを見ていると、学生さんの学力はこんなに伸びるんだな、ということを実感しています。全く教育学を学んだこともなく、教員免許も持っておらず、ただ漠然とした憧れだけで教師になろうと思われた方が、中ゼミで半年、1年学ぶ中で教育に対して自分の意見を持てるようになって、第一志望の大学院に合格されています。ですので、自分には無理だと最初から諦めないで、まずは相談にいらしてほしいと思います。教育学を学んだり、教員免許を取得するのには、本当にいろいろな方法があります。方法がありすぎて、私自身、どれが一番良いのか、一般的には決められません。それぐらいたくさんある方法の中から、それぞれの学生さんのご希望やバックボーンをお聞きした上で、お一人おひとりに適した方法をアドバイスできればと思っています。

たくさんの情報がありますからね。熱心な先生方もいらっしゃいますし。そこに本人のやる気があれば、結果は出せるということですね。実際に、多くの合格実績がそれを証明していますしね。確かに、考えているだけでは結果は得られませんからね。自分は学部の偏差値が低いから合格できないんじゃないか、と考えているだけではだめですものね。大事なのはやる気だということですよね。

そうですね。今回、東京学芸大に合格された学生さんも、「こんなにうれしいことはない」とおっしゃっていました。その方は、大学受験のときに、東京学芸大に行きたくて浪人までされたそうですが、残念ながら合格できず私大に進まれたそうです。でも、今回学芸大の大学院に合格され、ご両親も本当に喜んでくださったそうです。もちろんご本人も。また、中ゼミに相談に来るまでが大変だったと言ってらっしゃる学生さんもいらっしゃいました。ものすごく悩んでいて、相談に来るまでが長かったと。でも、中ゼミに相談に来て勉強を始めたら、その雰囲気の中でいつのまにか合格していた。相談に来るまでが大変だったと言われていました。ですので、一人で悩まないで、まずは相談に来てほしいと思います。

そうでしたか。こうして教師を目指す学生さん、教育学研究を志す学生さんが中ゼミにはいらしてらっしゃるんですね。こうした学生さんは、先生にとっては後輩になるわけですよね。これからも、ぜひ、そういった後輩の皆さんを育てていってくださいますようお願いいたします。本日はありがとうございました。