国内MBAでも話題になる「働き方改革」

2018年4月6日に,働き方改革関連法案が閣議決定しました。
(毎日新聞の記事はこちらのリンク

2012年に「ブラック企業大賞」なるものができて,様々な企業の過酷な労働環境が話題になりました。特に居酒屋チェーンの”和民”は騒がれましたね。

ちなみに,2012年のブラック企業大賞は東京電力,2013年はワタミフードサービス,2014年はヤマダ電機,2015年はセブンイレブン,2016年は電通,2017年は引越社(アリさんマーク)となっています。

東京電力は震災の影響が大きいのでしょうが,他は激しい競争環境にさらされている企業ばかりですね。

働き方改革は企業にとって非常に大きな影響を与えます。大学院MBAでも議論になることが多いテーマです。

従業員を酷使することって利益主義の経営者にとってはいいことずくめなんです。(くれぐれも筆者は従業員酷使賛成派ではありません。誤解なきよう。)

だって,
①非正規(外注)を使えば,人件費は課税8%の損金にできる。
②非正規(外注)を使えば,社会保険の負担がない。
③非正規(外注)を使えば,人件費を変動費にできる。
④サービス残業を常識にしてしまえば人件費が削減できる。
⑤有給をとらせない方が効率的。
⑥1人の人の負担を増やせば新たな雇用をしないで済む。
その他,色々です。

日本が長いこと不況下にいた間に,上のようなことがなんとなく常識になってしまっていたんですよね。そこにメスが入ったのが今回の働き方改革です。

非正規は正規へ,社会保険完備,労働時間の上限設定,休日・休憩は必ずとらせる,従業員の健康管理など労働環境の改善がたくさん盛り込まれています。

大学院等の研究機関でも働き方改革の研究が進められています。普通に考えれば従業員に対して企業の負担が増えるわけですから,企業の先行きが心配になってしまいますよね。でも,研究の結果,労働環境を改善したところ,①生産性が向上し,②離職率が減少した,③求職者が増え,④求人コストが激減したというデータが多くの企業から出ているんです。なんとなく,大昔に行われたホーソン実験を思い出してしまいます(笑)。

厚生労働省も企業に労働環境を改善することのメリットを啓蒙しようと一生懸命です。事例を紹介するこんなサイトもあります。(厚生労働省のサイトリンク

余談ですが,外食企業の労働環境は厳しいことで有名です。数年前,すき家(ゼンショー)が問題になっていましたね。その中でもカレーのココイチは頑張っているんですね(リンクはこちら)。ワタミも最近はかなり労働環境がよくなっているみたいです。

一方,この改革の難しいところは,労働者側も無条件に賛成しているわけではないということです。たとえば,
①社会保険を整備されると手取が減る。
②残業が認められなくなると月収が減ってしまう。
③仕事が複数の人に分散してしまうので顧客とのつながりが薄れる。
④仕事中毒で働きたいのに働かせてくれない。生きがいの減少。
他,たくさんの意見が出ています。

特に,働きたくても働けないというのは一体誰の得なんでしょうか(一部のプロフェッショナルは法案の例外になるようですが,かなり不明確です)。

働き方改革は,まだまだ考えなければいけない論点がたくさんあります。ちょっと話が飛んでしまうかもしれませんが,労働環境の良い企業が増えると環境を整える体力がない企業は深刻な人不足になってしまい,外国人労働者を酷使するという何ともいえない社会現象も引き起こしてしまいます。(ビジネスジャーナルのリンク

外国人労働者を含めた従業員に高い福利を与えつつ,生産性を向上させなければいけないという大きな命題が,現代の企業につきつけられています。

早稲田大学MBA 2017年度一般入試(冬募集)で以下のような問題が出題されました。(入試問題へのリンクはこちら

問題1
一般論として,副業と週休三日制それぞれのメリットとデメリットを整理して,論じてください。

問題2
特定の業界の企業を示した上で,あなたがその企業の経営者なら,副業・週休三日制を進めますか(両方進める,どちらかだけ進める,どちらも進めない,などを明記してください)。その上で,なぜそう判断するかを選んだ企業の現状・将来像に即して,具体的かつ論理的に説明してください。

みなさんはどう解答しますか?
解答を中央ゼミナールまでFAXかメールでいただけましたら,添削をしてお返しいたします。
FAX 03-3314-7587      mail  sus05@chuo-seminar.ac.jp

最後に,H先生がブログ「中ゼミ経済・経営系裏日報」で公開授業について書いてくださったので(リンク),こちらのブログでもご案内いたします。

2018年4月8日(日)14時から,中央ゼミナールでMBAコースの体験授業が行われます。慶應義塾大学や早稲田大学の過去問題を用いながら,MBAの世界にちょっとだけ触れていてだければと思います。お時間がございましたらぜひご参加ください。

中央ゼミナール国内MBA受験コース

カテゴリー: MBA思考で時事ネタを考える パーマリンク