編入試験 英語対策②

前回は英語試験対策として、スケジュール感の重要性を書きました。今回は英語試験対策の続きとして、「基本」の重要性について書いてみたいと思います。

編入試験に限らず、英語学習では「基本」が重要であることが強調されます。ここで言う「基本」とは、文法に従って英語を読解し、日本語に訳出できることです。そのため、文法や単語の知識が「基本」にとっては重要となります。英語の受験勉強と言えば、単語を記憶し、文法を理解し、問題演習を反復するのもそのためでしょう。しかし、ここで注意しなければいけないのは、英語でコミュニケーションをとることができるようになることでも、綺麗な日本語に翻訳できることでもないということです。

編入試験も同様です。つまり、英文を文法に従って日本語に訳出できることが重要です。いわゆる直訳、逐語訳ができるという状態です。編入試験の英語試験で測定されるのは、多くの場合、英語を読んで内容を理解する力です。この力を身につけることの意義、また、この力と英語によるコミュニケーションとの関連性は、ここでは置いておきましょう。良し悪しを抜きにして、英語試験対策は、英語で文章を読んで理解する力を伸ばすことです。

前回も触れましたが、法政治系の編入試験では、長文の全訳、部分訳、その読解を求める問題が主流です。題材としては、新聞や雑誌の記事、専門書の一節など、試験のために書かれたものではなく、その内容に関心のある読者に向けて書かれたものが多用されます。したがって、難解な単語や例外的な文法などの知識ではなく、大学までに勉強してきた知識で事足ります。

次の文章は名古屋大学の編入試験の一節です。

“A huge expanse of flat land that Napoleonic France, imperial Germany, and Nazi Germany all crossed to strike at Russia itself, Ukraine serves as a buffer state of enormous strategic importance to Russia. No Russian leader would tolerate a military alliance that was Moscow’s mortal enemy until recently moving into Ukraine.”

訳出できるでしょうか?今から7年以上前の問題ですが、現在のウクライナ情勢を暗示しているような文章です。話を戻すと、理解してもらいたいことは、難しい単語や難解な文法は使用されていないということです。たしかに、構文が取りづらいということはあるかもしれませんが、これまでの学習で身についているはずの単語や文法で訳出できるということです。

長文であっても、一文、一文の積み重ねによって構成されます。そして、その一文も「基本的な単語や文法」から作られています。したがって、編入試験を念頭に英語試験対策として行う必要があるは、中学校から大学受験までに勉強した単語や文法を完全にマスターすることです。つまり、これまでの英語学習を総復習するということです。

これまで学習してきた内容を、どの程度マスターできているかは人によって異なります。そうであれば、英語試験対策として、まずは自分がどの程度の力があるのか、手元にあるこれまでに使ってきた単語帳や文法書、問題集などを使って復習してみることをお勧めします。「基本」が無い状態で過去問を解いたところで得られるものは少ないでしょう。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

編入試験 英語対策①

今回は、編入試験における外国語試験の対策について書いてみます。外国語試験といってもほぼすべての方は英語で受験されるでしょうから、英語試験対策ということになります。

編入試験での英語試験対策を考える際に、まず意識しなければいけないのがタイムスケジュールです。どのような形式の試験が課されるにせよ、英語の力を上げていくのには時間がかかります。したがって、受験までどのぐらいの時間があって、その間にどのような状態にならなければいけないのかスケジュール感をもつことが大切です。

例えば、経済経営系の編入と比較するとまだ比較的少ないですが、法政治系でも、京都大学、神戸大学、金沢大学、上智大学、東洋大学のように、英語の試験の代わりにTOEICやTOEFLなどの英語民間試験のスコアを利用する大学が増えてきました。そのような大学を受験しようと思った場合、出願までに必要なスコアに達していなければいけません。大学によって異なりますが、出願に必要なスコアが設定されている場合もあります。高スコアに越したことはないですが、大切なのは出願までにスコアを準備しなければいけないということです。

英語民間試験を受験するためには、受験を申し込む必要があるし、受験してもすぐにスコアが手元に届くわけではありません。出願には正式なスコア書類が必要となりますが(詳細は各大学の募集要項で確認が必要です)、1か月程度の時間が必要となったりします。また、英語民間試験もコンスタントに開催されているわけでもありません。そうすると、志望校の受験日まではある程度の時間があるとしても、その出願準備はかなり早くから考えないといけなくなります

例えば9月の出願に間に合うようにスコアを揃えようと思ったとき、8月の試験を受験しても9月の出願に間に合わない可能性があります。そうだとすると、7月の受験が最後の受験となります。今は2月ですが、そうすると、あと数えるだけしか受験できないことになります。すでにスコアを持っている人はよいですが、これから取り掛かる人は、現時点でどの程度のスコアで、それをどのくらい上げていかないといけないのか、できるだけ早く把握する必要があります。労力をかけても必要なスコアに達することができなければ、それを編入試験に生かすことはできません(もちろん英語の勉強としては意味のあることですが)。

しかも、併願校がスコアを必要としない大学である場合、英語試験の対策に影響を及ぼしてしまうかもしれません。このような状態を避けるためにも、まずは今の自分の力を把握するために、直近の英語民間試験を受験することをお勧めします。もし、出願までに必要なスコアに到達できそうであれば、スコアアップの勉強を継続することは編入試験対策になります。しかし、それが難しそうなら、英語の試験が課される大学を受験するような方針にする方が良いでしょう。なぜなら、スコアアップのための勉強と英語試験対策は、英語を勉強するという点で共通していますが、全く同じではないからです。

幸い、法政治系ではスコアを利用しない大学は国公立大学、私立大学を問わず多くあります。また、スコアが振るわなくても、長文をしっかり訳出する訓練をすれば難関校を含め合格できます。実際、必ずしも難関校の合格者が高スコアをもっているわけではありません。

まずは、英語対策として、志望校は英語民間試験を利用するのか否か、いつまでに何を準備しなければいけないのか調べてみましょう。焦る必要はありません。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」です。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

編入試験 論述対策(まとめ)

論述試験対策として、問題を自説展開型知識吐出型とに分けて説明しました。では、どのような大学が、どのような形で編入試験を実施しているでしょうか?

自説展開型の出題が多いのが、難関校では大阪大学名古屋大学(一次試験)北海道大学(2年次)など、広島大学などの中堅国公立大学です。このような大学では、課題文を読んだ後に、その内容の理解を測る問題とともに、それ関する自説(あなたの考え方)を展開させる問題が出題されます。したがって、課題文を読解する力、テーマに関して自説を展開する力が問われます。この点で、直接、知識をまとめて論述するというものではありません。ただし、課題文には法学、政治学に関するもの、広く社会科学全般に関するものが用いられるので、法学や政治学に関する知識があった方が正しく深く課題文を読解することができます。

他方で、知識吐出型の出題が多いのが、難関校では北海道大学(3年次)神戸大学(法学概論)筑波大学など、法政大学同志社大学などの私立大学です。このような大学では、法学や政治学の特定の事項について、その意義や定義、背景や内容の説明やそこから導き出されることの論述が求められます。したがって、法学や政治学の知識、その知識に基づいて導き出されることを正確に再現し、論述する力が問われます。この点で、知識がなければ合格はおぼつかないことになります。

以前も書きましたが、もちろん、このような分類は絶対的なものではありません。自説を展開するには知識が必要ですし、知識を再現してまとめるにしても、問題文を理解し、解釈し、解答として構成する力が必要となります。したがって、志望校によって程度の差はありますが、自説展開型と知識吐出型の両方の対策が必要でしょう

これまで3回にわたって編入試験における論述試験対策について書いてきました。読まれた方の中には、「とてもじゃないが書いてあることの全部は勉強できない」と思う人もいるでしょう。たしかにその通りです。特に編入試験は短期決戦です。また、編入試験の合否は、論述試験だけではなく、志望理由書や面接などの書類、外国語(英語)などと合わせて決まることはご存じのことと思います。もちろん、大学によってこれらのうちのどれが課されるのか、どの程度のウエイトで評価されるのかは異なります。そうであるからこそ、必要な対策のうちの何を優先して勉強するのかが大切になります

論述試験対策に限らず、編入試験では優先順位が大切です。時間や能力などが限られた下で、いかに合格に必要な学力に到達するか、常に優先順位を考えながら勉強していく必要があります。すべてを完全に勉強することが難しいのであれば、何をどの程度まで勉強すればよいのかを考えながら、学習計画を立てましょう。それに加えて、どんなに対策を知っていても、より重要なのはそれを実行することです。方法論はあくまで方法に過ぎず、目的を達成するためには、それを実行する必要があります。泳げるようになりたければ、泳ぎ方を知っているだけでは不十分です。むしろ、実際に繰り返し泳いでみることが必要です。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

編入試験 論述対策(「知識吐出型」編)

今回は「知識吐出型」の論述試験対策について書いてみたいと思います。知識吐出型とは、自分の考えというよりも、問われていることに関する知識を正確に再現して説明していく問題です。したがって、法学や政治学に関する知識について、また、そこから導き出されることについて(学問的に)正確に説明する必要があります。

そのためには、当然のこととして、法学や政治学に関しての知識が必要となります。ただし、知識量や知識の正確さは、正しい答えを選択する多肢選択方式で計測されません。もちろん、神奈川大学の編入試験のような多肢選択方式の大学もありますし、金沢大学のように多肢選択方式の「法学検定」の合格が求められる大学もあります。しかし、ほとんどの大学では、論述方式で受験者の能力が計測されます。つまり、単に正確な知識があるだけでは不十分で、それを日本語の文章で伝達する力が必要となります。そこから、法学や政治学の正確な知識とそれを正確に伝達できる論述力が合格するカギになります

では、具体的にどのような知識が必要となるのでしょうか?編入試験の性格上、3年次編入であれば法学部2年生までに学習する知識が、2年次編入であれば法学部1年生で学習する知識が問われます。したがって、その範囲の知識をインプットすることが試験対策となります。

政治学では、政治権力や国家についての「政治思想や政治理論」、政党、圧力団体、マスメディアといった「政治主体や政治過程」、選挙制度、投票行動、政治意識といった「比較政治」などの知識をインプットできるとよいでしょう。他方、法学は基礎法学と法解釈学に大別されますが、法そのものを対象とする基礎法学全般、法解釈学では憲法、民法総則、刑法総論などが法学部2年次までに学習する内容になります。これらの全てを身に付けることは、短期間ではかなり困難なので、編入試験対策としては、これらのうち優先順位(出題頻度)の高いものを中心に勉強していくことになります。

さらに、これらの知識を理解して記憶するだけではなく、それらを再現し伝達できなければいけません。そのためには、これらの知識をつかって、一定のテーマで文章を書いてみる必要があります。この点が編入試験にとって特徴的な部分です。インプットだけでは論述対策は完結せず、実際に論述練習するというアウトプットが絶対的に必要になるのです。教科書を読んだり、講義を聴いたりしてインプットはできます。インプット自体も大変ですから、これで満足してしまいがちです。しかし、これだけでは試験対策にはなりません。インプットした知識を使って、一定のテーマで文章が論述できなければいけないのです。そのためには、とにかく論述練習することが大切です。この点は前回に説明した「自説展開型」にも当てはまります。

つまるところ、「知識吐出型」の論述試験対策としては、優先度の高い分野の知識のインプットとそれを使った論述練習が必要になるということです。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

編入試験 論述対策(「自説展開型」編)

多くの大学の編入試験で論述試験が課されることはご存じだと思います。では、論述試験のために何を準備すればよいのでしょうか?論述問題を求められる「答え」で分類すると、(呼び方は色々ありますが)自説展開型と知識吐出型に大きく分けられます。

自説展開型とは、最終的に自分の考えを展開することが求められる問題です。他方、知識吐出型とは、自分の考えというよりも、問われていることに関する知識を正確に再現して説明していく問題です。もちろん、両者は明確に線引きされるものではないし、両者が求められる場合もあります。だからこそ、はっきりしているのは、自説を展開し、知識を吐き出せるように準備すれば、受験校の幅が広がるということです。今回は自説展開型の論述試験対策について書いてみます。

自説展開型の論述試験で求められる「自説(自分の考え)」とは、法学、政治学分野に関連する「時事的な出来事」に対する、あるいは、法学、政治学分野に関する「課題文」に対する自らの見解です。このような問題に答えるためには、例えば、「成年年齢の引下げ」、「コロナ対策に伴う営業制限」など「時事的な出来事」について、それがどのような事象であるか、それに対して法学や政治学の観点からどのようなことが言えるのか、その是非、可否、適否などの見解を展開できるようになることが必要です。

時事的な出来事については、新聞などから日常的に情報収集するとよいでしょう。その際、紙媒体の新聞を読むことをお勧めします。情報収集ならばネット上のニュースサイトの方が手軽で情報量も多いのでよいかもしれません。しかし、どうしても自分の興味が向くニュースだけをクリックしがちです。法学、政治学的な重要性は、自分の興味と等価ではありません。この点で、紙媒体の新聞ぐらいの情報量が適当でしょう。興味の有無に関係なく、ニュースに触れ、それを知り、法学や政治学と関連づけながら自分の考えをまとめると、自説を展開する力になるはずです。可能であれば、それを友人や知人などの他者に批評してもらいましょう。

自説を展開する(自分の考えをまとめる)ポイントは、法学や政治学と関連付けることです。法学や政治学と関連付けられなければ、「感想」と変わらなくなるからです。編入試験で「感想」は求められていません。この点で、法学や政治学に関して一定の知識が必要となります(必要とされる知識の範囲と程度については次回に書きます)。

法学や政治学の著作や論文、新聞記事などの「課題文」に対しては、どのようにしたら自説展開できるようになるでしょうか?まずは、「課題文」の内容を正確に理解できなければいけません。そのためには、その「課題文」を理解するだけの読解力と知識が必要となります。読解力のためには、新書など比較的手軽に入手できる本を読むことをお勧めします。課題文は、法学や政治学に関する内容が、「硬い表現」で書かれています。そのような文章を理解するには、そのような文章に慣れることが必要です。内容を完全に理解するというよりも、まずは慣れることが大切です。難しく感じるでしょうが、丸山真男『日本の思想』、川島武宜『日本人の法意識』、渡辺洋三『法とは何か』、碧海純一『法と社会』などは、法学や政治学に関連し、硬い表現で書かれており、課題文として出題されたりもする本です。編入試験の直前期に、これらの本を読む時間的、精神的余裕はないでしょうから、今から手にとってみるとよいでしょう。

要は、新聞や新書などの活字に触れ、それらを読み、理解に努め、考えることが自説展開型の論述試験には有用であるということです。急がば回れ。(過去問を解く有用性は否定しませんが)過去問だけを解いていても必要な力はつかないでしょう。


新年度準備講座(2023年2月25日より全6回)「法学~入門編~」

まずは原理原則から始めよう!

こんにちは。

法学系への編入を考えたとき、まず何から手を付ければよいでしょうか?

法学の勉強というと条文とその解釈の仕方を覚えるものとイメージしがちです。これはある程度必要なことなのですが、これが法学学習の中心と考えてしまうと、ただ記憶するだけのつまらないものと思えるでしょう。

しかし、他の分野と同じように法学にも目的があります。それは「条文の記憶」ではなく、私たちが共に生きる(共生)ための仕組みを探求することです。人によって考え方は異なるし、生まれてきた境遇も違います。この点で私たちは多様なのですが、それにもかかわらず時代や場所にかかわりなく、私たちは社会の中で共に生きています。

法学は、この共生のための仕組みのうち「規範(ルール)」の役割に着目して、それを探求することを目的としています。先の条文やその解釈も、私たちが共生するために存在しています。つまり、私たちが個々人として尊重されつつも、共に生きていけるように規範を制定し、それらに矛盾が生じないように解釈するのです。

ただ、法学の学習を始めるにあたって、法律の条文やその解釈にいきなり飛びつくのは得策ではありません。その分量と際限のなさ(細かさ)に嫌になるのがオチで、法学学習が無味乾燥なものに思えるでしょう。では、何から勉強すればよいでしょうか。個々の条文や解釈といった「枝葉末節」ではなく、まずはそれらの要にある「原理原則の理解」から始めるのがおススメです。まずは全体像を理解して、その上で細かい事項を勉強していく方が、法学の迷宮に迷い込まずにすむということです。

「個人の尊重」「立憲主義」「契約自由の原則」「罪刑法定主義」など、法学には様々な原理原則があります。そして、この原理原則は、歴史の中で、私たちが共に生きていくために発展させてきた考え方です。法学学習の手始めとして、まずはこれら原理原則の背景や意義、具体的にどのように制度化されているかなどを理解してみるのはどうでしょうか。

しかも、これらは編入試験で説明を求められる事項でもあります。法学系の編入をお考えであれば、まずは「原理原則」から始めてみましょう!

ごあいさつ

みなさん、はじめまして。

中央ゼミナール(大学編入や大学院に特化した指導をしている専門予備校です)の法学系スタッフです。

このブログを通じて、法学という学問そのものや法学部への編入に興味を持ってもらいたいと考えています。

どうぞ、よろしくお願いします。