──その財政社会学について簡単に説明してください。

財政学は、政府が国民から税金を徴収してその使い方を決定する際の原則に焦点を当てた学問です。政府の政策が問われるわけですが、政策を論じるにあたっては、受益者となる国民の論理がどのように施策に反映されていくか、また、その政策によって社会にどのような変化が起きたかなどの分析が欠かせません。このような政府と国民との間の双方向性や、相互作用、その結果として政策が社会の変化に及ぼした影響といった動態を歴史的に分析していくのが財政社会学です。世の中を成り立たせている政治、経済、社会のすべてをつかまえようとする学問であり、財政現象の変化を読み解くことで社会の変化の胎動を捉えることができる点が大きな魅力といえます。

──財政を考えることは政治、経済、社会をトータルに把握すること、という先生のスタンスがうかがえますね。

経済活動を行うのも、社会を構成しているのも人間です。社会をどんな観点から見るのかは、人間をどう見るかということ。財政社会学は人間を理解し、その人間が作る社会の行く末を見守ろうとする学問でもあると言えるでしょう。

https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9916292/www.keio.ac.jp/ja/contents/research/2011/11.html